北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

台風11号接近、大阪湾展示訓練参加部隊は台風避泊で大阪港・神戸港・和歌山港を緊急出航

2014-08-09 23:40:58 | 海上自衛隊 催事

◆台風と自衛艦、台風避泊とは

 大阪湾展示訓練は金曜日1500時頃、体験航海及び一般公開の中止が決定されました。

Img_4402i 威風堂々、せめて電燈艦飾だけでも、とポートターミナルへ向かうものの、護衛艦てるづき、は艦首を内陸に向け停泊していたためポートアイランドからの撮影が不可能、加えて早朝に台風避泊で出港してしまう、という事でしたので情報を総合した結果、朝の撮影も断念したところです。やはり、いせ、くらま、入港時のように外海に艦首が向いていないと夜間撮影は難しいですね。

Img_0987 台風避泊、多くの方には聞きなれない単語かもしれませんが、これは台風の波浪で艦艇が岸壁と接触し破損することを防ぐべく、沖留することを示します。このため、艦艇乗員は台風が基地に影響がある経路を以て接近すると台風避泊へ艦艇に戻らなければなりません。

Gimg_7893 台風くらいで逃げなくてはならないのか、と思われるかもしれませんが、津波や地震と同じように台風のエネルギーは馬鹿にできません、十数時間から二十時間以上、艦艇が岸壁に波浪で叩きつけられ突付けた場合、もちろん岸壁と艦艇の間にはクッションとなる防舷材が用意されるのですが、鑑定士のものの大きさが重さと共に規則正しく打たれるのですから、構造上疲労を溜め、船体寿命を短くしかねない。

G12img_1970 台風避泊のもう一つの目的は、台風で制御不能となった船舶が接近してきた場合、岸壁に固定していますとよけられませんが、台風避泊として沖合に停泊していれば錨を緊急放棄し機関始動と同時に回避することが可能です。こうしたことからも艦艇が台風避泊を行う理由が理解できるでしょう。

Img_4147 台風避泊の場所ですが、外洋には出ません。外洋は数mから十数mの波浪が襲い強風と暴風が吹きすさぶため、かえって艦艇に悪影響が及びますし、乗員が食事をしようにもポルターガイストとにた状況となり、酷い状況だと艦橋のガラス越しに大波とともに魚が泳いでいるのが見えたとか、艦内では天井の塗料が剥離して粉末が降ってくることも。

Img_5449a ですから台風避泊は湾内で各艦艇が数百mかた1km程度の間隔を置いて停泊します、湾内ですと暴風を遮蔽する地形がありますし、波浪も外洋ほど大きくはありません。基地の外では島影などを利用することがあります。もちろん、台風でも必要ならば外洋を航行することもあるのですが、ね。

Gimg_1335 台風避泊、沖合ではまず、走錨、つまり艦艇が風を受け錨が艦艇の停泊を維持できず動いてしまう、これを一番警戒しなければなりません。走錨しますと岸壁に衝突、浅海で座礁、僚艦と衝突、碌なことがありません、ですから艦艇は台風避泊中に走錨を確認しますと即座に錨を切り離し、機関を始動します。

Gimg_8736 走錨対処、重要なのは走錨が始まったと即座に感知することです。そんなもの背景が流れていれば見張り員は簡単にわかるだろう、と思われるかもしれませんが、夜間ではそうもいきません。近年はGPSにより分かりますが、密雲が電波を遮蔽する可能性もあります、暗視装置は波浪と豪雨で視界不良ですのでもちろん使えない。

Img_6933 走錨検知、GPSが普及する以前はレーダーを稼働させ、地形を把握することで夜間であっても走錨を検知できました、つまり台風避泊中機関停止状態で地形が動いていた場合、走錨している事を検知できたわけです。もちろん、ひとつの走錨検知方法に固まらず複数の方法で多角的に検証する必要はあるのですが、ね。

Miimg_7946 しかし、中には規格外の台風があります。具体的にはどんなものかと言いますと、風台風、突風が強力すぎますと、なんとレーダーを動かすモーターが風圧に負けてしまい、レーダーが作動しなくなる事もあるのだとか。この場合、潮流検知や動揺規則性で判断することも出来たというのですが、まあ、大自然の猛威は凄いの一言に尽きる。

Img_7462 なお、台風避泊中、ご飯は特別メニューになります、御馳走かというとそうではなく、まず汁物が消えます、続いてお椀が簡略化されます、最後にはボウルに手づかみで食べられるものが用意され、気力で食べます、その心は、といいますと、荒天航行中も同じなのですが、簡単に言うと揺れすぎて食事が出来なくなる、ということ。

Img_0297 台風11号の接近により大阪湾展示訓練は非常に残念なことではありますが二日とも中止になりました、が艦艇は0700時頃には台風避泊のための緊急出航を開始していたようで、艦艇乗員には艦を台風から守るという重要な任務が、同時に始まったわけです。なお、間違えても台風接近下、海の様子を見に行く、ということはおやめください。

北大路機関:はるな

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コメント (2)
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