◆護衛艦いせ、PSI訓練Fortune Guard 14参加
朝雲新聞によれば7月23日、パシフィックパートナーシップ2014参加の輸送艦くにさき、が呉基地へ帰港したとのこと、そしてヘリコプター搭載護衛艦いせ、はハワイでPSI訓練参加、呉基地の艦艇は大忙し。
パシフィックパートナーシップは“友愛ボート”として民主党鳩山内閣時代に鳩山総理主導の下で参加が決定したアメリカ太平洋艦隊主催の医療文化支援活動及び防災多国間訓練で、今日論争となる集団的自衛権行使に関する視点に、純粋な戦闘行動以外であれば多国間軍事演習に制限の無い参加が可能である、という実例を出したものです。
パシフィックパートナーシップ2014には第1輸送隊司令松井陽一1佐が指揮官となり、艦長笹野英夫2佐以下150名が参加、ヴェトナム、カンボジア、フィリピンの三ヶ国を廻り多国間訓練を行うと共に医療支援や施設補修支援を実施、医療活動だけで1700名を診療したとのことです。
今回のパシフィックパートナーシップ2014はこうした民生支援や防災及び文化交流などの面での多国間軍事協力への参加と共に、直接的では無く間接的な意味において、パシフィックパートナーシップ2014派遣開始時期に悪化していた中国のヴェトナム排他的経済水域内での係争地域、での中国国有企業による石油掘削リグ設置に伴う中越間の緊張へ、各国艦艇が付近を航行することで中国側を抑制した、という波及効果がありました。
西沙諸島周辺のヴェトナム排他的経済水域内での中国国営石油企業CNOOCによる石油掘削リグ不法設置はASEANなどでの討議の課題となり、百隻以上の巡視船同士が対峙し中国公船の衝突によりヴェトナム船が撃沈されるなど緊張が続く中、中国側は当初8月までの調査続行を公言していましたが、パシフィックパートナーシップ2014開始の時期に早期撤収を開始しています。
一方、リムパック環太平洋合同訓練へ参加中のヘリコプター搭載護衛艦いせ、は8月5日と6日にハワイで実施されたPSI大量破壊兵器拡散防止多国間イニシアチヴ実動訓練Fortune Guard 14へ参加しました。PSIの大量破壊兵器拡散防止イニシアチヴは、テロ組織や一部国家による不法な核兵器などの他国への供与を各国間で阻止する協同行動です。
ヘリコプター搭載護衛艦いせ、は広島県呉基地が母港であり、広島原爆慰霊の日である8月6日に、核兵器の不法な拡大を実力で阻止するための各国間の協同へ我が国も参加した、ということは祈念するだけの平和主義から行動する平和主義という政府の方針を期せずして示したように見えてくるところ。
PSI訓練は5日にホノルル市内において机上訓練が時資され、統合幕僚監部を中心として訓練に参加、6日の広島原爆慰霊の日には実動訓練として、実際に核物質や弾道ミサイル関連機材を不法輸出しようとする船舶への対処を想定し、ハワイ及び周辺海空域において、立入検査訓練を実施し、ヘリコプター搭載護衛艦いせ及び艦載機、要員300名が参加しました。
大阪湾展示訓練の話題とともに、ではありませんが、同じ呉基地の艦艇として、ヘリコプター搭載護衛艦いせ、は実訓練としてハワイ方面へ派遣、輸送艦くにさき、はパシフィックパートナーシップ2014より帰国したばかり、海上自衛隊の艦艇は任務増大と共に多忙を極めている、という話題が報道を含め様々な場面で為されますが、実際にこの訓練参加と広報展示訓練の両立、お盆の時期でもその多忙さは変わらないようですね。
北大路機関:はるな
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