北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ミサイル艇の将来運用についての一考察1: 従来の限界論理を超える新運用体制

2015-04-14 22:55:12 | 防衛・安全保障
■ミサイル艇再検証
 ミサイル艇、艦対艦ミサイルを搭載し一撃離脱を以て大型水上戦闘艦に挑む沿岸防備の有力装備です。

 しかし、ミサイル艇については大型水上戦闘艦をも搭載するミサイルが命中すれば一発で無力化出来る、という謳い文句とは裏腹、命中すれば、という第一関門が非常に難易度が大きいことが実戦運用を経て指摘されました、まず高度なレーダーを搭載できませんしヘリコプターを搭載できませんので水平線以遠の索敵ができません、そして防空装備が艦砲と機関砲に携帯対空ミサイル程度ですので相手のミサイルが飛来したり対戦車ミサイル等を搭載する哨戒ヘリコプターに攻撃されたならば打つ手なしの逃げの一手です、最後にソナー等も基本的に搭載出来ない為潜水艦に対して何もできません。

 護衛艦など大型水上戦闘艦は敵水上戦闘艦艇を攻撃する際に射程100km以上を活かした目標情報を得る為に索敵を行い相手の位置を把握しなければなりません索敵は航空機を重視します、航空機は哨戒機や哨戒ヘリコプターで、現在新造される大型水上戦闘艦はほぼ航空機運用能力を持たないものはないほどです。防空能力や対潜能力も、水上戦闘艦には基本的に備えられるものですが、ミサイル艇には搭載する余裕と予算がありません、どうしても搭載すれば最低でも1500tを超えてしまい、それではミサイル艇ではなくコルベットかフリゲイトです。

 ミサイル艇の運用限界とは、外洋に出れない、基本的に沿岸部の海岸線に特に入江などに潜み敵航空攻撃に対しては秘匿か陸上の地対空ミサイルなどの防空の傘へ依存します、つまり敵の大型艦艇が接近した場合でも地形防御から離れることが出来ないのです。しかし、相手が沿岸に接近した場合や、相手が武装工作船や海賊船の場合は大きな威力を発揮できます。我が国は、ミサイル艇はやぶさ型を6隻建造して以降、これも当初は30隻程度整備される計画があったとされますが、上記運用の限界、更に陸上自衛隊が地対艦ミサイル連隊を6個整備したことから沿岸部での打撃力を整備する必要がなくなり、その建造は終了しました。

 一方で、今日の海上自衛隊艦艇運用を考えますと、ミサイル艇の活躍の場が再浮上しているように考えます。特にソマリア沖海賊対処任務へ、現在海上自衛隊は6000t前後の護衛艦を派遣していますが、海賊対処における任務は船団護衛と哨戒任務、これはかなりの部分でミサイル艇でも対応可能です。もちろん、ミサイル艇は通信能力が限られるため、ソマリア沖海賊対処任務は多国間任務となりデータリンクが重要となりますので過度に依存は出来ませんが、指揮中枢となる護衛艦を一隻として、この他の任務をミサイル艇に充てる事は出来、実現すれば現在護衛艦が2隻派遣されているところを1隻体制と半減させ対応させることができるでしょう。

 ミサイル艇は物資などの面で長期間の運用に限界があるのですがヘリコプターを用いてのバートレップ方式にて、水上戦闘艦より必要な物資を補給する事で一定程度の長期運用が可能となります。海賊対処に艦対艦ミサイルは不要、という指摘があるやもしれませんが、これを省いてしまいますと海賊以上の脅威への対処、島嶼部防衛等に支障が出てきますので、この点は慎重に見極める必要がありますが。

 ミサイル艇の防御力は、能力向上には限界があります、しかし、航空機運用能力については、無人機、手投げ式のものを感情から運用する場合や沿岸部を中心に運用する場合は陸上に簡易カタパルト投射式無人機を運用し情報収集に連携させることが出きるでしょう。防空能力については、近年OTOメララ社が76mm砲のレーダー誘導砲弾を開発していますので、多少改善の余地があるやもしれません、僚艦防空など夢のまた夢ですが、多少ミサイル艇が生き残りやすい状況は成立しつつあるところ。

 我が国のミサイル艇運用は、海賊対処任務の他に、例えば島嶼部防衛等に威力を発揮する余地があります。例えばレンジャー部隊の訓練輸送など、海上自衛隊では静粛性が高く小回りの利く掃海艇を多用していますがミサイル艇は速力とステルス性に優れています。また、揚陸艇等の直接掩護にも、特に陸上より火砲により反撃が想定される状況では大型護衛艦よりもミサイル艇の方が随伴しやすいでしょう、そして揚陸船団等の脅威に対しては、それこそ本来任務として沿岸部からの防御戦闘が可能となります。

北大路機関:はるな
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