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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

現代日本と巡洋艦(第一回):邦人保護への戦力投射艦の必要性と巡洋艦という選択肢

2015-04-23 23:19:37 | 防衛・安全保障
■巡洋艦の任務と戦後の巡洋艦
 今回から、海上自衛隊に必要な艦艇、従来の護衛艦では対応できない任務へ向かう戦力投射任務用の艦艇として、巡洋艦を考えてみたいと思います。

 我が国には国家の現状に併せた戦力投射能力が必要ではないか、邦人の活動地域拡大にあわせ、中東アフリカ地域を中心にポテンシャル発揮の手段を再検討しなければならないのではないか、相次ぐ在外邦人の危機や海賊対処任務の拡大に鑑み、海外での水上艦艇によるポテンシャルの発揮、この課題について少し考えてみようと思います。

 邦人保護任務について、自衛隊の活動領域の増大が周辺国へ影響を与える事への懸念という視点は皆無ではないでしょうが、今回の視点では考慮を必要としません、何故ならば邦人保護任務に当たる外国艦艇の防護などが自衛隊法の枠内にて認められる方向へ転換しつつある昨今、人命救助という国際公益の遂行を行う以上、周辺国とは協力する事はあっても、対立は考えにくいものでしょう。

 即ち、例えば先日イエメンで発生した邦人保護への中国海軍の協力等の事例がありましたが、今後はそうした事例が発生した際、自衛隊艦艇は邦人保護に当たる中国海軍の艦艇護衛を担う事となる訳です。他方、紛争地などで人命のっ気に曝された状況下での救援の手が及ばない絶望感は想像できるものでは無く、主権国家である以上、可能な範囲内で、友好国への協力を仰ぐというものも含めてですが、自国民の安全へ尽力せねばなりません。

 巡洋艦、とは一種の比喩的表現で、昨今は戦力投射艦という新区分が誕生しつつある、識者の一部はこう指摘します。戦力投射艦とは、水上戦闘艦艇の能力ないし航空機運用能力を相応に備えつつ、併せて両用作戦能力を一定水準有する艦艇を示し、揚陸フリゲートや戦闘支援艦などの名称や一部では航空母艦に区分された艦艇を、従来の区分から分化し、定義づけられたもの。

 現代における巡洋艦の定義は、曖昧で任務に応じ区分するもの、世界最大の巡洋艦といいますと、トルコとの条約の関係上巡洋艦とせざるを得なかったロシア海軍のアドミラルクズネツォフ級空母を別格とし、キーロフ級原子力ミサイル巡洋艦、スラヴァ級ミサイル巡洋艦、カーラ級巡洋艦など大型水上戦闘艦という区分として用いられているものが一つ。

 このほかに巡洋艦は例えばかつてのイギリス海軍のインヴィンシブル級軽空母等は建造当時全通飛行甲板型対潜巡洋艦という区分で建造されましたし、フランス海軍がかつて運用していた練習艦兼強襲揚陸艦用途にあたるヘリコプター巡洋艦ジャンヌダルク、イタリア海軍が今世紀初頭まで運用していたヘリコプター巡洋艦ヴィットリオヴェネトなど、幾つかの事例はあります。

 巡洋艦、このほかにタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦のように米海軍の区分では指揮官たる艦長の階級などで区分するなどありますが、元々巡洋艦は、艦隊旗艦用の大型水上戦闘艦という意味合いよりは、海外領土保護や通商船団保護、攻撃任務などに用いる艦艇の用途で用いられ、クルーザーという呼称、巡洋艦という邦訳などは、語源的な意味で艦隊旗艦というよりは上記定義では後者を示す用語であると気づくでしょう。

北大路機関:はるな
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