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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

アメリカ国防総省マティス長官明日来日 トランプ新政権国防政策に関し安倍総理と会談へ

2017-02-02 20:37:58 | 国際・政治
■日米防衛関係の鍵握る新長官
 ジェームズマティス国防長官が明日訪日します。トランプ大統領から最高の将軍として政権に迎えられた海兵隊退役大将は、日米防衛関係の鍵を握る閣僚です。

 マティス国防長官来日は新政権樹立二週間後という異例の速さで、初の閣僚訪日となりました。防衛安全保障政策では、トランプ新政権の方針が未知数な部分が大きく、果たしてアメリカは専守防衛として本土に引き籠るかつてのモンロードクトリン時代へ回帰するのか、世界の警察官の地位を越え世界の規範構築と国際公序の牽引者となるのかさえも未知数となりました。

 ボーイング747を改造したE-4国家空中指揮機に搭乗したマティス国防長官は最初の歴訪先である韓国を本日訪問、朝鮮半島情勢への韓国大統領代行からの説明を受けると共に、米韓軍事同盟の重要性について触れました。韓国は日本やドイツと同じく、トランプ大統領により安全保障での米軍支援に過剰依存している国として批判されている国の一つです。

 本年2017年は、百年前の二つの大きな出来事、今日の国際公序、世界システムが構築された転換点から百年目という年です。一つはアメリカがモンロードクトリンという孤立主義に例外を設け第一次世界大戦へ参戦した1917年から百年、そして20世紀全体と今日に至るイデオロギー対立と超大国対立の背景となった、あのロシア革命から百年目に当たる、非常に歴史的な節目からの百年目といっても過言ではない。

 モンロードクトリンとは、ジェームズマディソン大統領時代にジェームズモンロー国務長官がアメリカが欧州へ関与しない条件下で欧州の対米不干渉を求める孤立主義政策を示します、一種の中立政策で同盟国を求めない分、欧州の混乱がアメリカへ波及しない要諦でもあり、第一次世界大戦下でも西半球は難攻不落、として最後まで固持された政策でした。

 第一次世界大戦ではアメリカ人乗客の上船した商船ルシタニア号がドイツの無制限潜水艦通商破壊戦により撃沈され、世論の昂ぶりを受け参戦しましたが、モンロードクトリンの孤立主義精神は堅持され、当時のウッドローウィルソン大統領は自ら提唱した国際連盟への参加を断念しました。こうした孤立主義へ回帰されては、日本の防衛は困難へ直面する。

 わが国は専守防衛として、本土防衛には万全の守りを固めており、冷戦時代には国土を戦場として地形を活かした内陸誘致戦略として持久作戦能力を構築しており、1990年代には水際撃破戦略として遠距離打撃力と機動打撃力の整備に着手、北海道では水際撃破能力を、本州九州では内陸誘致戦略の能力を維持し、更に新世紀からは脅威増大に直面した南西諸島防衛の強化を展開、防衛力整備を冷戦後も長期継続してきました。

 その上で、日米安全保障条約では、日本は平和憲法により防衛を本土防衛に限り整備している為、シーレーンへの攻撃や、本土への航空攻撃及びミサイル攻撃を行う大陸内陸部からの攻撃に対し反撃を加え策源地を無力化する防衛力をほぼ有していません。この打撃力の部分を大きくアメリカに依存しており、日本の防衛にアメリカの打撃力は欠かせません。

 トランプ大統領は、アメリカの対外戦略をどう考えているのか、閣僚はマティス新国防長官とティラーソン新国務長官が、対外政策におけるアメリカの姿勢維持を継承する姿勢を明示していますが、トランプ大統領は在外米軍の配置や同盟関係の抜本見直し、アメリカはもはや世界の警察官ではないとしたオバマ大統領の方針を踏襲する姿勢、同盟国への負担を受ける姿勢からも、さらに一歩引いた姿勢を示しています。

 マティス国防長官は、トランプ大統領から国防に関する信頼を勝ち得た海兵隊英雄で、1972年に沖縄第3海兵師団小隊長を経験、1990年には湾岸危機を受け発動された砂漠の盾作戦へ海兵大隊長として従軍、2001年の同時多発テロを受けてのアフガニスタン空爆へ海兵隊准将として従軍、2010年に海兵隊大将として中央軍司令官に着任、2013年退役しました。

 今回の長官訪日に関して、国防総省から我が国防衛省に対して、特段の防衛政策の変更にかんする討議を目的とした訪日ではないとの通知があり、外務防衛閣僚会談2+2のような高度な政治会談を行う目的ではなく、友好関係の確認が目的となる訪日ともいえるでしょう、実際、本日の韓国訪問もこうした政治的訪問となっており、特段の報道はありません。

 シーレーンとして日本の国家そのものの運命を握る南シナ海政策等について、マティス国防長官の姿勢は明確で、中国の人工島建設により南シナ海全域への領域化はもちろん、人工島を基点とした管轄権行使も認めない姿勢を示しています。また、トランプ大統領は北朝鮮がアメリカを狙う大陸間弾道弾に対し、日本と北朝鮮の問題だとして不関与の姿勢を示しましたが、この無力化も長官は留意しています。

 わが国はアメリカと自由主義や民主主義に関する価値観を共有するステイクホルダーであり、第二次世界大戦後の平和憲法施政下にあって本土防衛への十分な戦力を整備しているが打撃力はアメリカへ依存し、一方アメリカが日本を守る構図ではなくステイクホルダーとしての運命共同体である点、同盟国の中では異例な水準の基地駐留経費負担を行っている点を、政権がどのように理解しているかについてを主眼に、明日、安倍総理との会談が行われるのでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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