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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【くらま】日本DDH物語 《第一回》 ヘリコプター巡洋艦から全通飛行甲板型への歴史的世代交代

2017-02-04 20:10:14 | 先端軍事テクノロジー
■新護衛艦かが竣工間近
 今回から“日本DDH物語”としまして、新護衛艦かが竣工間近と護衛艦くらま、からの世代交代に併せ、DDHという日本独自の海上防衛体系を振り返ってみましょう。

 1973年に海上自衛隊初のヘリコプター搭載護衛艦はるな、その竣工と共に海上自衛隊でのヘリコプター搭載護衛艦の歴史、艦隊航空の歴史が始まりました。海上自衛隊はヘリコプター搭載護衛艦ひえい、ヘリコプター搭載護衛艦しらね、ヘリコプター搭載護衛艦くらま、以上四隻を建造し対潜戦闘の中枢艦として、護衛隊群直轄中枢艦として充ててきました。

 ヘリコプター搭載護衛艦くらま、いよいよ36年間の現役生活への終点が見えてきました、新ヘリコプター搭載護衛艦かが就役と共に予定では除籍される事となっています、海上自衛隊では護衛艦が就役から除籍まで一度も基地を転籍しなかったのは、佐世保基地の護衛艦くらま、ただ一隻、とのこと。かが、は南西諸島守りの重責を引き継ぐこととなります。

 将来のヘリコプター搭載護衛艦運用、と銘打ちましたが、今回から海上自衛隊ヘリコプター搭載護衛案と艦隊航空の歴史を振りかえってみる事としましょう、このヘリコプター搭載護衛艦の歴史ですが、最初に考えてみたいのはF-35B戦闘機の運用が将来どの程度考えられるか、という事です。結論から言いますと海上自衛隊部内では必要ない、が大勢です。

 F-35Bが必要となるような任務が海上自衛隊へ付与されていない為、海上自衛隊が必要とする能力構築を展開する上でF-35Bを取得し、両立して現在の任務、平時の警戒監視任務と艦隊防空任務や対潜戦闘任務と機雷掃討任務という従来任務に加え近年新たに追加されました弾道ミサイル防衛任務、これらを実現する防衛力整備で予算は手一杯、ということ。

 弾道ミサイル防衛任務にはF-35Bの監視任務、更にAMRAAMを用いて発射初期段階の弾道ミサイルを迎撃し撃墜する事は不可能ではありませんし、ステルス性の高いF-35Bと統合型光学情報装置による警戒監視の併用任務は、配備されるならばそれに越した事ではないのですが、航空自衛隊へ配備されるF-35Aによっても対応可能な任務で、F-35Bは高い。

 艦隊戦闘にはF-35Bの索敵能力があるならば、特に艦対空ミサイルの射程が非常に長く延伸しており、従来運用された哨戒ヘリコプターによる索敵では逆に損耗を強いられる可能性があり、更にステルス性をほぼ考慮していない哨戒ヘリコプターでは艦隊行動海域を標定される懸念もある為、F-35Bが配備されているならば、相手に察知されず索敵可能です。

 ただ、P-1哨戒機の超長距離索敵能力を持つHOS-106レーダーを用いれば、例えばイージス艦搭載、500km近い射程を持つスタンダードSM-6等の艦対空ミサイルと同等の能力を持つ防空艦に対しても、その射程外から索敵が可能で、海上自衛隊が鋭意部隊配備を進めている国産P-1哨戒機の配備と共に、実はかなりの将来艦隊戦闘に対応する事が出来ます。

 それではまったくF-35Bが不要なのか、と問われますと、冒頭に記した通り、そもそもF-35Bでなければ対応不可能な任務が付与されていない、そもそも他の装備体系を維持した上でF-35Bを導入する予算的余裕がない、そもそもF-35Bの戦闘機操縦要員養成教育課程が海上自衛隊には無い、という実情があります。しかし、政治的要求により覆れば、話は別となるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (4)
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