■ロシア駆逐艦舞鶴親善訪問
ロシア駆逐艦アドミラルパンテレーエフ舞鶴寄港一般公開特集、第三回の今回が最終回となります。

アドミラルパンテレーエフ、満載排水量8400tとカーラ級巡洋艦と並ぶ巨大な船体を採用していますが、これまでに紹介しました通り、決して無駄に大きいのではなく2機のヘリコプターを搭載、対潜打撃力と外洋作戦を意図した結果の大型艦となった事が分ります。

旧ソ連がアドミラルパンテレーエフを含むウダロイ級駆逐艦を建造した少し前、アメリカ海軍でもスプルーアンス級駆逐艦として満載排水量8040tという非常に大きな駆逐艦を建造、これも必要な外洋航行能力と優れた対潜機材を搭載した帰結として大型化しました。

そして、アメリカのスプルーアンス級駆逐艦は新開発のイージスシステムを搭載した派生型としてタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦を誕生させましたが、ウダロイ級は対潜重視の設計ながら2010年代に入り3K96リドゥート艦対空ミサイルを搭載、防空艦となります。

防空能力について、近代化改修により3K96リドゥート艦対空ミサイルへの換装が進む、ロシア版ペトリオットミサイルの派生型、アメリカ製スタンダードミサイルの様に射程に応じミサイル長が類型化され200km型から20km型まで搭載能力に応じ選ぶことが出来ます。

3K96リドゥート艦対空ミサイルは50km型が搭載されているとされ、これにより西側のターターシステム艦と射程で同程度、高い艦隊防空能力を有するに至りました。ウダロイ級建造時期、ソ連海軍は防空艦へ、全く異なるソブレメンヌイ級を建造したのは前述の通り。

ソブレメンヌイ級という別の艦型をミサイル駆逐艦としていたのは搭載していたシチルシステムが大型であり、ウダロイ級へシチルシステムを搭載し艦隊防空用の艦対空ミサイルシステムを搭載するなら、11000tのスラヴァ級ミサイル巡洋艦規模となっていたでしょう。

ソブレメンヌイ級はミサイル駆逐艦となっていますが、シチル艦隊防空システムに加え、SS-N-22サンバーン超音速対艦ミサイルを搭載し、水上打撃力を極めて重視した設計となっていました、サンバーン、ソブレメンヌイ級の艦橋基部左右の大型発射器に収められる。

SS-N-22/P-270サンバーン超音速対艦ミサイル、モスキートミサイルとも呼ばれますがラムジェット推進により高高度をマッハ3で飛行し目標付近から超低空へ移行し突入する強力な対艦ミサイル、射程は250km程度となっています。強力ですがその分本体が大きい。

SS-N-22/P-270サンバーン超音速対艦ミサイルを搭載すればSS-N-14/RPK-3対潜ミサイルを搭載出来なくなるため、片方のみ、艦隊防空艦であるソブレメンヌイ級は前者と艦隊防空ミサイルを、対潜艦であるウダロイ級はSS-N-14/RPK-3対潜ミサイルを選択した訳です。

しかし、ウダロイ級はSS-N-22/P-270サンバーン超音速対艦ミサイルを搭載出来なかったものの、SS-N-27カリブル/クラブ巡航ミサイル搭載の近代化改修が2010年代に入り実現した事で、カリブルは亜音速巡航ミサイルではありますが長距離対艦打撃力を得た訳です。

SS-N-27カリブル/クラブ巡航ミサイルはSS-N-22/P-270サンバーン超音速対艦ミサイルよりも新しい分かなり小型ですから8040tのウダロイ級へも搭載出来た訳です、ウダロイ級は更に3K96リドゥート艦対空ミサイルを追加搭載できました、船体の余裕故といえます。

SA-N-7/ 3K90ウラガーン/ガドフライ、ソブレメンヌイ級が搭載する艦隊防空ミサイルですが、形状がアメリカが開発し海上自衛隊が、あまつかぜ、たちかぜ型、はたかぜ型に搭載したスタンダードSM-1単装発射装置Mk-13と非常に似ており模倣した点が読み取れます。

ウダロイ級は大型のSA-N-7/ 3K90ウラガーン/ガドフライ搭載を行う余裕がなかった為、個艦防空用の3K95/SA-N-9キンジャールを搭載した訳ですが、艦隊防空用艦対空ミサイルも技術開発を経て3K96リドゥート艦対空ミサイルでは小型化し、その搭載が叶いました。

ウダロイ級は対潜艦ですのでヘリコプター運用能力を重視しています、ソ連海軍では18機のヘリコプターを搭載する1960年代のモスクワ級ヘリコプター巡洋艦建造以来、一隻の対潜掃討艦で広範囲を哨戒できる為、艦載ヘリコプターによる対潜哨戒を重視してきました。

艦載機としてKa-27を2機搭載しています。二重反転ローターを採用するカモフ社製ヘリコプターで4tまでの貨物や人員輸送機は16名を搭載可能ですが、全長は11.3mと、同程度の搭載力をもつ自衛隊のSH-60Kが全長19.8mに対し非常にコンパクトな機体が特色だ。

Ka-27対潜ヘリコプターは、APR-2対潜魚雷1発を搭載可能で、若しくは機内へ対潜機材を収容しソノブイ36本を搭載する事で対潜哨戒任務へも対応します。機体が非常にコンパクトですが、格納庫も更にコンパクトで二機搭載する格納庫としては驚きを禁じ得ません。

ヘリコプター格納庫は飛行甲板から半甲板低く位置していまして、二機のヘリコプターを右舷左舷へ収納すると共に中央部分へ発着管制施設が配置されています。ただ、ソブレメンヌイ級等は半入れ子式格納庫を採用しており本型の整備性は比較的高いといえましょう。

Ka-27対潜ヘリコプターの搭載は、海賊対処任務や人道支援任務など2000年代に入り急激に増大した任務への対応能力を強化しました、16名もの兵員を輸送出来ますし、2機を搭載している為交替により継続的に飛行させる事が可能、本艦の運用多用途性を高めました。

総合的に考えますと、ウダロイ級はソ連崩壊後、非常に厳しい経済情勢化にあっても維持する事での費用対効果が高い艦艇と評価され、維持される事が早い時期に発表されました、12隻のうち、それでも4隻は除籍されましたが、それでも全体としては多数が維持される。

ガスタービン推進による整備性の高さ、航空機運用能力による汎用性の高さ、外洋効能能力の大きさ、それに副次的なものですが重武装による砲艦外交的な本型の形状は少なくなった、ソ連時代の威光、ソ連時代の遺構でもありますが、を発揮できた部分があります。

基本能力の高さがありますが、そして設計の余裕により大型対潜艦としての設計当時は想定されなかった二つの任務、艦隊防空能力が新型ミサイルの小型化により、水上打撃力が巡航ミサイルと艦載システムの小型化により、それぞれ実現し、多用途艦となったかたち。

それでも旧式艦であることは否めません、一番艦竣工は1980年、ヘリコプター搭載護衛艦くらま、よりも古く、海上自衛隊で12隻が建造された護衛艦はつゆき型護衛艦よりも古いのですが、ロシア海軍はソ連崩壊後の混乱から立ち直りつつある中、完全ではありません。

リデル級原子力駆逐艦としてウダロイ級とソブレメンヌイ級の後継艦へ8隻の11000t型原子力駆逐艦を建造する構想がありますが、設計開始が2018年であり建造は更に後、就役は2030年代前後となる可能性が否定できず、アドミラルパンテレーエフは当面現役でしょう。

ロシア艦の居住性等は公開されませんでした、しかし、案内と警備の水兵と海兵さんは丁寧で、基地を出た後、舞鶴市内で同じATMの前に並んだり、何故かビールをレストランで何杯も乾杯したり、記念写真撮ったり、ささやかながら日ロ友好を高める事が出来ました次第です。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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ロシア駆逐艦アドミラルパンテレーエフ舞鶴寄港一般公開特集、第三回の今回が最終回となります。

アドミラルパンテレーエフ、満載排水量8400tとカーラ級巡洋艦と並ぶ巨大な船体を採用していますが、これまでに紹介しました通り、決して無駄に大きいのではなく2機のヘリコプターを搭載、対潜打撃力と外洋作戦を意図した結果の大型艦となった事が分ります。

旧ソ連がアドミラルパンテレーエフを含むウダロイ級駆逐艦を建造した少し前、アメリカ海軍でもスプルーアンス級駆逐艦として満載排水量8040tという非常に大きな駆逐艦を建造、これも必要な外洋航行能力と優れた対潜機材を搭載した帰結として大型化しました。

そして、アメリカのスプルーアンス級駆逐艦は新開発のイージスシステムを搭載した派生型としてタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦を誕生させましたが、ウダロイ級は対潜重視の設計ながら2010年代に入り3K96リドゥート艦対空ミサイルを搭載、防空艦となります。

防空能力について、近代化改修により3K96リドゥート艦対空ミサイルへの換装が進む、ロシア版ペトリオットミサイルの派生型、アメリカ製スタンダードミサイルの様に射程に応じミサイル長が類型化され200km型から20km型まで搭載能力に応じ選ぶことが出来ます。

3K96リドゥート艦対空ミサイルは50km型が搭載されているとされ、これにより西側のターターシステム艦と射程で同程度、高い艦隊防空能力を有するに至りました。ウダロイ級建造時期、ソ連海軍は防空艦へ、全く異なるソブレメンヌイ級を建造したのは前述の通り。

ソブレメンヌイ級という別の艦型をミサイル駆逐艦としていたのは搭載していたシチルシステムが大型であり、ウダロイ級へシチルシステムを搭載し艦隊防空用の艦対空ミサイルシステムを搭載するなら、11000tのスラヴァ級ミサイル巡洋艦規模となっていたでしょう。

ソブレメンヌイ級はミサイル駆逐艦となっていますが、シチル艦隊防空システムに加え、SS-N-22サンバーン超音速対艦ミサイルを搭載し、水上打撃力を極めて重視した設計となっていました、サンバーン、ソブレメンヌイ級の艦橋基部左右の大型発射器に収められる。

SS-N-22/P-270サンバーン超音速対艦ミサイル、モスキートミサイルとも呼ばれますがラムジェット推進により高高度をマッハ3で飛行し目標付近から超低空へ移行し突入する強力な対艦ミサイル、射程は250km程度となっています。強力ですがその分本体が大きい。

SS-N-22/P-270サンバーン超音速対艦ミサイルを搭載すればSS-N-14/RPK-3対潜ミサイルを搭載出来なくなるため、片方のみ、艦隊防空艦であるソブレメンヌイ級は前者と艦隊防空ミサイルを、対潜艦であるウダロイ級はSS-N-14/RPK-3対潜ミサイルを選択した訳です。

しかし、ウダロイ級はSS-N-22/P-270サンバーン超音速対艦ミサイルを搭載出来なかったものの、SS-N-27カリブル/クラブ巡航ミサイル搭載の近代化改修が2010年代に入り実現した事で、カリブルは亜音速巡航ミサイルではありますが長距離対艦打撃力を得た訳です。

SS-N-27カリブル/クラブ巡航ミサイルはSS-N-22/P-270サンバーン超音速対艦ミサイルよりも新しい分かなり小型ですから8040tのウダロイ級へも搭載出来た訳です、ウダロイ級は更に3K96リドゥート艦対空ミサイルを追加搭載できました、船体の余裕故といえます。

SA-N-7/ 3K90ウラガーン/ガドフライ、ソブレメンヌイ級が搭載する艦隊防空ミサイルですが、形状がアメリカが開発し海上自衛隊が、あまつかぜ、たちかぜ型、はたかぜ型に搭載したスタンダードSM-1単装発射装置Mk-13と非常に似ており模倣した点が読み取れます。

ウダロイ級は大型のSA-N-7/ 3K90ウラガーン/ガドフライ搭載を行う余裕がなかった為、個艦防空用の3K95/SA-N-9キンジャールを搭載した訳ですが、艦隊防空用艦対空ミサイルも技術開発を経て3K96リドゥート艦対空ミサイルでは小型化し、その搭載が叶いました。

ウダロイ級は対潜艦ですのでヘリコプター運用能力を重視しています、ソ連海軍では18機のヘリコプターを搭載する1960年代のモスクワ級ヘリコプター巡洋艦建造以来、一隻の対潜掃討艦で広範囲を哨戒できる為、艦載ヘリコプターによる対潜哨戒を重視してきました。

艦載機としてKa-27を2機搭載しています。二重反転ローターを採用するカモフ社製ヘリコプターで4tまでの貨物や人員輸送機は16名を搭載可能ですが、全長は11.3mと、同程度の搭載力をもつ自衛隊のSH-60Kが全長19.8mに対し非常にコンパクトな機体が特色だ。

Ka-27対潜ヘリコプターは、APR-2対潜魚雷1発を搭載可能で、若しくは機内へ対潜機材を収容しソノブイ36本を搭載する事で対潜哨戒任務へも対応します。機体が非常にコンパクトですが、格納庫も更にコンパクトで二機搭載する格納庫としては驚きを禁じ得ません。

ヘリコプター格納庫は飛行甲板から半甲板低く位置していまして、二機のヘリコプターを右舷左舷へ収納すると共に中央部分へ発着管制施設が配置されています。ただ、ソブレメンヌイ級等は半入れ子式格納庫を採用しており本型の整備性は比較的高いといえましょう。

Ka-27対潜ヘリコプターの搭載は、海賊対処任務や人道支援任務など2000年代に入り急激に増大した任務への対応能力を強化しました、16名もの兵員を輸送出来ますし、2機を搭載している為交替により継続的に飛行させる事が可能、本艦の運用多用途性を高めました。

総合的に考えますと、ウダロイ級はソ連崩壊後、非常に厳しい経済情勢化にあっても維持する事での費用対効果が高い艦艇と評価され、維持される事が早い時期に発表されました、12隻のうち、それでも4隻は除籍されましたが、それでも全体としては多数が維持される。

ガスタービン推進による整備性の高さ、航空機運用能力による汎用性の高さ、外洋効能能力の大きさ、それに副次的なものですが重武装による砲艦外交的な本型の形状は少なくなった、ソ連時代の威光、ソ連時代の遺構でもありますが、を発揮できた部分があります。

基本能力の高さがありますが、そして設計の余裕により大型対潜艦としての設計当時は想定されなかった二つの任務、艦隊防空能力が新型ミサイルの小型化により、水上打撃力が巡航ミサイルと艦載システムの小型化により、それぞれ実現し、多用途艦となったかたち。

それでも旧式艦であることは否めません、一番艦竣工は1980年、ヘリコプター搭載護衛艦くらま、よりも古く、海上自衛隊で12隻が建造された護衛艦はつゆき型護衛艦よりも古いのですが、ロシア海軍はソ連崩壊後の混乱から立ち直りつつある中、完全ではありません。

リデル級原子力駆逐艦としてウダロイ級とソブレメンヌイ級の後継艦へ8隻の11000t型原子力駆逐艦を建造する構想がありますが、設計開始が2018年であり建造は更に後、就役は2030年代前後となる可能性が否定できず、アドミラルパンテレーエフは当面現役でしょう。

ロシア艦の居住性等は公開されませんでした、しかし、案内と警備の水兵と海兵さんは丁寧で、基地を出た後、舞鶴市内で同じATMの前に並んだり、何故かビールをレストランで何杯も乾杯したり、記念写真撮ったり、ささやかながら日ロ友好を高める事が出来ました次第です。
北大路機関:はるな くらま
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