■中期防衛力整備計画完成待たず
自民党国防部会と安全保障調査会は北朝鮮の核とミサイル開発を“新たな段階の脅威”と位置付け、防衛計画の大綱改訂を前倒しとする提案を行いました。

産経新聞が今月18日付にて報じたもので、今回はこの点を考えてみましょう。北朝鮮の核開発とその運搬手段である核開発に対して、防衛鋭角の大綱を改定する場合、想定されるのは現在のミサイル防衛能力が海上自衛隊護衛艦隊のイージス艦6隻と更に建造が決定した2隻を加えたイージス艦8隻、航空自衛隊のペトリオットミサイルPAC-3を含めた高射群体制では不可能となっているという状況認識の下での施策となるのでしょう。

弾道ミサイル迎撃能力特化のTHAAD高高度防衛ミサイルを導入する新たな高射部隊の新編に関する部隊改編、敵基地攻撃能力による複数の核攻撃へ対抗するF-35戦闘機部隊の増強や巡航ミサイルトマホークの検討等、防衛計画の大綱は単純な装備計画ではなく部隊や新任務など防衛戦略の長期的改編を背景に実施される為、以上施策が考えられるでしょう。

防衛大綱、十年単位の長期的な防衛計画を画定し、その上で五年単位の中期防衛力整備計画を建て、具体的な毎年の防衛予算へ反映してゆくのですが、1976年防衛大綱は冷戦時代一杯に対応する文字通り長期的な防衛政策の指針となりました、が、冷戦後はほんとうに長期計画とは言えないほどに転々と方針転換がおこなわれまして、特に部隊規模と予算規模がそのままの状況で任務だけ増えているのですから、混乱は否めません。

冷戦後の脅威変化を受けて部隊のコンパクト化に踏み切った1995年防衛大綱は妥当なものでしたが、そのあとは長期政策を見据えていません。 弾道ミサイル防衛、2004年にミサイル防衛を行うための予算をその時点の防衛予算に盛り込むためには重装備を縮小する必要に応じて実施、しかしその見通しが甘かった為、南西諸島へ及んだ中国の圧力へ対応する従来型脅威への対応強化が求められます。

財政難下、2009年にミサイル防衛の他にせめて潜水艦を増やそうとなり重装備が必要な大陸からの軍事圧力の増大が始まった為即応武器重視への転換と重装備のさらなる削減を実施、2013年には重装備を北海道に集約して有事の際には南方に急げばいいという移動手段を考えない手段で更に重装備を削減しつつ戦闘機と護衛艦を一割増やす施策を行いました。

北朝鮮への弾道ミサイル防衛へシフトして以降中国の南西諸島への圧力を受けつつ、現政権は統合機動防衛力、と格好いい言葉で実態を濁しますが、大戦末期の本土決戦における沿岸配備師団新設よりも追い込んだ状況で、財政難の下で弾道ミサイル防衛という非常に費用を要する施策を展開しつつ予算を微減し一年程度乗り切る展望の翌年微減、その後も微減に漸く微増へ展開した事で成果として安全保障重視手段を誇示している状況です。

しかし、脅威の全体が増大しているのですから、防衛費を増大するか、国民有事負担を願うか、選択が必要です。前述の通り、長期的な施策を具現化するために5年単位の中期計画を立てているのですから1976年防衛大綱のような20年30年先を見越すのが理想で、せめて10年さきの脅威に対応できる、重厚な防衛力を整備するべきでしょう。 逆に、多少の状況変化、特にこの十年単位の周辺国脅威増勢と圧力増大を受け止め、十年先の脅威を想定すべきです。

防衛大綱改訂について、これらを踏まえた上で強調したいのは、安易に長期計画を転々と変える、いわば短命内閣時代の日本の指針のような弊害を避け、第一に統合機動防衛力の完成に要する装備体系、潜水艦や早期警戒機と空中給油機の増勢、コンパクト護衛艦整備や機動連隊に必要となる機動戦闘車の定数整備、F-35戦闘機充足を急ぐ方が優先度が高い。

第二に既存の脅威が転換しているのではなく二方面化、三方面化している認識の政策への反映を新しい大綱に盛り込まなければなりません。北方方面の脅威増大と千島列島への師団計画、ロシア軍が進める対アメリカ戦略千島列島戦力再配置の一環で、超音速対艦ミサイルの配備に続く千島列島への防衛力強化です。新大綱へは北方への抑止力強化が盛り込まれなければ意味がありません。

中期防衛力整備計画と防衛大綱、1995年、2004年、と10年先を見越す事が出きませんでしたが、2009年の防衛大綱は中期防衛力整備計画一期で完結する前に改定を迎えました、そして2013年には中期防衛力整備軽悪さえも未達成のまま再整備しまして、現状、右往左往が如く、求める防衛計画を途中で転々とさせ税金を無駄遣するように思えてなりません。

防衛予算の中で大陸から脅威増大が南西諸島に及ぶと共に対領空侵犯措置任務増大は西日本へ及び、2015年以降北方地域での脅威が再活性化していますのでこれ以上の重戦力削減は出来ない実情もあります。大前提として平和憲法の下、主戦場は我が国土に求める受動的防衛戦略を国是とする日本、本土防衛の備えが冷戦後の変容を前に蔑ろになっています。

南西シフトというよりも北方の脅威が増大し、特にロシアのアメリカへの接近領域拒否戦略整備が日本本土への脅威を増大させている状況はシフトしているのではなく北方と西方に脅威が増えている状況、ここに弾道ミサイル防衛を加えた場合、それこそ防衛予算が全く足りていませんが、有事の際にできない状況を言葉で塗布してできる、とするよりは現在の予算ではできない為、国民の負担、戦災戦禍を我慢するか充実した防衛力整備かの選択をお願いする事が当局者と為政者の義務と考えます。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
自民党国防部会と安全保障調査会は北朝鮮の核とミサイル開発を“新たな段階の脅威”と位置付け、防衛計画の大綱改訂を前倒しとする提案を行いました。

産経新聞が今月18日付にて報じたもので、今回はこの点を考えてみましょう。北朝鮮の核開発とその運搬手段である核開発に対して、防衛鋭角の大綱を改定する場合、想定されるのは現在のミサイル防衛能力が海上自衛隊護衛艦隊のイージス艦6隻と更に建造が決定した2隻を加えたイージス艦8隻、航空自衛隊のペトリオットミサイルPAC-3を含めた高射群体制では不可能となっているという状況認識の下での施策となるのでしょう。

弾道ミサイル迎撃能力特化のTHAAD高高度防衛ミサイルを導入する新たな高射部隊の新編に関する部隊改編、敵基地攻撃能力による複数の核攻撃へ対抗するF-35戦闘機部隊の増強や巡航ミサイルトマホークの検討等、防衛計画の大綱は単純な装備計画ではなく部隊や新任務など防衛戦略の長期的改編を背景に実施される為、以上施策が考えられるでしょう。

防衛大綱、十年単位の長期的な防衛計画を画定し、その上で五年単位の中期防衛力整備計画を建て、具体的な毎年の防衛予算へ反映してゆくのですが、1976年防衛大綱は冷戦時代一杯に対応する文字通り長期的な防衛政策の指針となりました、が、冷戦後はほんとうに長期計画とは言えないほどに転々と方針転換がおこなわれまして、特に部隊規模と予算規模がそのままの状況で任務だけ増えているのですから、混乱は否めません。

冷戦後の脅威変化を受けて部隊のコンパクト化に踏み切った1995年防衛大綱は妥当なものでしたが、そのあとは長期政策を見据えていません。 弾道ミサイル防衛、2004年にミサイル防衛を行うための予算をその時点の防衛予算に盛り込むためには重装備を縮小する必要に応じて実施、しかしその見通しが甘かった為、南西諸島へ及んだ中国の圧力へ対応する従来型脅威への対応強化が求められます。

財政難下、2009年にミサイル防衛の他にせめて潜水艦を増やそうとなり重装備が必要な大陸からの軍事圧力の増大が始まった為即応武器重視への転換と重装備のさらなる削減を実施、2013年には重装備を北海道に集約して有事の際には南方に急げばいいという移動手段を考えない手段で更に重装備を削減しつつ戦闘機と護衛艦を一割増やす施策を行いました。

北朝鮮への弾道ミサイル防衛へシフトして以降中国の南西諸島への圧力を受けつつ、現政権は統合機動防衛力、と格好いい言葉で実態を濁しますが、大戦末期の本土決戦における沿岸配備師団新設よりも追い込んだ状況で、財政難の下で弾道ミサイル防衛という非常に費用を要する施策を展開しつつ予算を微減し一年程度乗り切る展望の翌年微減、その後も微減に漸く微増へ展開した事で成果として安全保障重視手段を誇示している状況です。

しかし、脅威の全体が増大しているのですから、防衛費を増大するか、国民有事負担を願うか、選択が必要です。前述の通り、長期的な施策を具現化するために5年単位の中期計画を立てているのですから1976年防衛大綱のような20年30年先を見越すのが理想で、せめて10年さきの脅威に対応できる、重厚な防衛力を整備するべきでしょう。 逆に、多少の状況変化、特にこの十年単位の周辺国脅威増勢と圧力増大を受け止め、十年先の脅威を想定すべきです。

防衛大綱改訂について、これらを踏まえた上で強調したいのは、安易に長期計画を転々と変える、いわば短命内閣時代の日本の指針のような弊害を避け、第一に統合機動防衛力の完成に要する装備体系、潜水艦や早期警戒機と空中給油機の増勢、コンパクト護衛艦整備や機動連隊に必要となる機動戦闘車の定数整備、F-35戦闘機充足を急ぐ方が優先度が高い。

第二に既存の脅威が転換しているのではなく二方面化、三方面化している認識の政策への反映を新しい大綱に盛り込まなければなりません。北方方面の脅威増大と千島列島への師団計画、ロシア軍が進める対アメリカ戦略千島列島戦力再配置の一環で、超音速対艦ミサイルの配備に続く千島列島への防衛力強化です。新大綱へは北方への抑止力強化が盛り込まれなければ意味がありません。

中期防衛力整備計画と防衛大綱、1995年、2004年、と10年先を見越す事が出きませんでしたが、2009年の防衛大綱は中期防衛力整備計画一期で完結する前に改定を迎えました、そして2013年には中期防衛力整備軽悪さえも未達成のまま再整備しまして、現状、右往左往が如く、求める防衛計画を途中で転々とさせ税金を無駄遣するように思えてなりません。

防衛予算の中で大陸から脅威増大が南西諸島に及ぶと共に対領空侵犯措置任務増大は西日本へ及び、2015年以降北方地域での脅威が再活性化していますのでこれ以上の重戦力削減は出来ない実情もあります。大前提として平和憲法の下、主戦場は我が国土に求める受動的防衛戦略を国是とする日本、本土防衛の備えが冷戦後の変容を前に蔑ろになっています。

南西シフトというよりも北方の脅威が増大し、特にロシアのアメリカへの接近領域拒否戦略整備が日本本土への脅威を増大させている状況はシフトしているのではなく北方と西方に脅威が増えている状況、ここに弾道ミサイル防衛を加えた場合、それこそ防衛予算が全く足りていませんが、有事の際にできない状況を言葉で塗布してできる、とするよりは現在の予算ではできない為、国民の負担、戦災戦禍を我慢するか充実した防衛力整備かの選択をお願いする事が当局者と為政者の義務と考えます。
北大路機関:はるな くらま
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