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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北海道胆振東部地震:厚真町大規模土砂崩落捜索,北海道大停電復旧とJR北海道部分運行再開

2018-09-08 20:00:54 | 防災・災害派遣
■北海道大停電復旧すすむ
 北海道胆振東部地震、大停電の復旧は進みますが、その爪痕は大きいようです。

 苫小牧港へ海上自衛隊の砕氷艦しらせ、が災害派遣へ入港しました。しらせ艦上には南極観測支援へ強力な物資輸送力と航空機運用能力が備えられ、今災害派遣任務では7日より給水支援と入浴支援を実施、特に震源地に近い地域ではいまだに断水が続くため、入浴支援は歓迎されているとのこと。この他、医療設備や給電設備の開放も行っているとのこと。

 北海道胆振東部地震、NHK本日1526時報道によれば、21人死亡、11人心肺停止、8人安否不明、となっています。北海道厚真町では土砂崩れにより17名が死亡、苫小牧市、むかわ町、新ひだか町、札幌市清田区、以上各市町村でそれぞれ1名の方が亡くなりました。心肺停止の方は厚真町で11名、行方不明の方も8名、共に土砂崩落地域で発生しています。

 厚真町は震度7、北海道内で震度7が観測されたのは史上初でした。同町近傍には過去一万年間に富士山と同程度で同頻度の大規模噴火を繰り返す樽前山があり、町内山間部は崩れやすい火山性土壌の表層が広がり、震度7の激震により2kmの範囲内で地滑り状に崩落した事が被害を拡大したと考えられています。行方不明者捜索は警察自衛隊等により続く。

 無人偵察機による被災地偵察を今回自衛隊が災害派遣では初めて実施しました。厚真町において陸上自衛隊は13機の無人偵察機を導入し、行方不明者捜索を強化しています。特に多数の行方不明者を捜索する厚真町では今後雨量が増す可能性があり、行方不明者捜索を強化すると共に土砂流失状況や倒木の概要の把握は二次被害防止の観点から重要でしょう。

 上富良野町と標津町で震災関連死と思われる2名の方が亡くなりました、原因は一酸化炭素中毒です。NHK7日2207時報道によれば共に玄関に自家発電機が置かれていた。道内全域が停電し、自家発電機が必要でした。家庭用自家発電機は騒音が大きい機種があり、周囲に配慮しての結果でしょう。しかし、騒音よりも安全上充分換気を行う必要はあります。

 札幌液状化被害、今回の震災では厚真町土砂災害と並び札幌市内でも住宅被害が発生しています。札幌市清田区里塚では液状化による道路被害と住宅の沈下や傾斜被害などが生じ、道路の陥没も発生しています。ただ、液状化による住宅傾斜は復旧可能で、例えば東日本大震災千葉県液状化被害でも復旧は広範に行われました、希望をうしなってはいけません。

 大規模停電はNHK本日0421時報道によれば99%の地域で解消したと北海道電力が発表しています。北海道全域295万戸が停電するという過去に例のない事態に対し復旧が進み、本日0200時の時点で300万kW電力を、道内火力発電所と水力発電所、東北電力からの融通により確保しており、道内295万戸中292万2000戸において電力供給が回復しました。

 苫東厚真発電所、北海道で稼動中最大165万kWの発電能力を持つ石炭火力発電所が震源地に近い厚真町に在り、此処が震度7の激震に非常停止した事で北海道内電力供給が一斉に停止しています。北海道電力総発電量は795万7000kW、しかし207万kW、最大の発電所である泊原子力発電所が東日本大震災以降、政治的要請で停止したままとなっている。

 石狩湾新港発電所として総出力171万kWの火力発電所が建設中、2019年内にはLNG一号炉が57万kWの出力で発電を開始し、2030年までに171万kW発電を見込む。今回の胆振東部地震は厚真町土砂災害という局地災害でしたが、厚真町の火力発電所被害が道内全域に及びました。泊原発を新発電所稼動の2030年まで限定で稼働継続していれば、とも。

 JR北海道は道内全域停電を受け7日一杯全線で運休していましたが、本数を限定し新函館北斗までの北海道新幹線が運行再開、札幌市と新千歳空港を結ぶ快速エアポートも午後には本数を減らし運行を再開しました。NHK本日0919時報道によれば、JR北海道は今朝から札幌小樽間など近郊路線、また新函館北斗から函館までの在来線運行を再開しました。

 旭川や帯広、札幌と函館を結ぶ在来線特急は本日8日も終日運休しました。JR北海道本日1630時の運転計画では、運転再開が普通列車及び快速列車限定で、札幌近郊が札幌岩見沢間と札幌小樽間と札幌新千歳空港間、函館近郊が函館新函館北斗間、旭川近郊が旭川上川間と旭川名寄間、以上が本数を減らし再開、旭川名寄間だけが通常運行となっています。

 在来線運休は、函館線の新函館北斗から旭川まで岩見沢札幌間を除く全線、室蘭線の長万部岩見沢間、日高線の苫小牧鵡川間、学園都市線の札幌新十津川間、石勝線の南千歳夕張新得間、根室線の滝川東鹿越間間、花咲線の釧路根室間、釧網線の釧路網走間、宗谷線の名寄稚内間、石北線の上川網走間、富良野線の富良野旭川間、留萌線の深川留萌間、です。

 旭川や帯広と釧路に函館と札幌、道内の大動脈が鉄道で寸断されています。9日の運転計画は1900時時点で発表されていませんが、在来線の寸断は観光業や農林畜産業へ影響を及ぼしています。特に新千歳空港から札幌小樽以外の主要な観光地への鉄道が運休し、停電影響から高速バス運行も限られる事から旭川はじめホテルキャンセルが相次いでいるという。

 高速道路について、道内を走る日高自動車道が地震影響により鵡川IC日高厚賀IC間で通行禁止となっていますが、NHK本日1201時報道によれば北海道開発局発表として明日9日午前中に通行可能になるとのこと。また鉄道について、札幌市営地下鉄と札幌市電の運行は再開されており、170万都市である道都札幌の市内交通は復旧しつつあるようです。

 全壊家屋30棟、NHK本日0716時報道として北海道庁の発表によれば厚真町19棟、安平町で6棟、むかわ町で5棟、以上30棟が地震で全壊しました。半壊家屋や一部損壊建築物は32棟、北広島市と札幌市に被害程度不明の損壊建物が13棟あり、損壊建築物は少なくとも45棟、安平町では町内の早来神社拝殿が倒壊、予定されたお祭りが中止となりました。

 余震について。NHK本日0657時報道によれば気象庁発表として本日0600時までに震度4が3回、震度3が18回、震度2が37回、震度1が67回観測されています。また、震度七の揺れにより一部堤防や山間部に地割れが発生している可能性があり、胆振地方では現在も断続的に降水量が確認されている事から降雨による土砂災害へ警戒が必要となります。

 電力供給について。不幸中の幸いというべきでしょうか、99%の電力供給再開に漕ぎ着けた本日は土曜日、企業活動が平日程大きくありません。しかし、NHK1907時報道によれば、世耕経済産業大臣の発電として、現在火力発電所により346万kWの発電量を北海道内で確保しているが発災前ピーク時383万kWよりも一割不足していると現状を説明しました。

 老朽火力発電所を今回の震災に併せ緊急稼動させているため、過負荷による老朽施設故障の危険性もあります。道内最大の苫東厚真発電所はタービン施設に損傷があり、復旧に一ヶ月程度を要する為、経済産業省としては現時点で計画停電については言及していない、ものの、週明けから北海道内の企業や家庭へ20%程度の節電を呼びかける事としています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (17)
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