■ゴジラvs自衛隊の軍事検証
先週までリバイバル上映となっていましたゴジラvsビオランテ、今回からは軍事検証の視点からみてみましょう。
ゴジラvsビオランテ、自衛隊撮影協力体制が過去にない規模で組まれています。演習場などで撮影された様子や木更津第1ヘリコプター団の大編隊等もV-107輸送ヘリコプター時代の貴重な映像、なにしろ大型のCH-47に機種転換後は32機定数となっていますが、V-107時代にはヘリコプター団の定数は40機、機数が大きくなればその分、迫力も凄い。
怪獣映画といえば61式戦車でしょう。1964年公開のモスラ対ゴジラにて特車隊の新兵器として登場して以来、怪獣映画の定番となりました。90mm戦車砲はソ連軍のT-55戦車へ対抗する事を念頭に開発され、1970年代にはソ連軍の新型T-62戦車へ対抗する事が若干難しくなっていますが、車幅を3m以下、2.95mに抑えた為、貨物列車で輸送可能です。
75式自走榴弾砲がゴジラvsビオランテ小説版では沿岸部において運用されていました。護衛案の127mm艦砲よりも強力な30口径155mm榴弾砲で射程は19km、自動装填装置により毎分6発の射撃が可能という、長砲身化したらばまだ世界で第一級の性能を有しています。自衛隊では既に2013年に引退しました。射程が長く、間合いも取れて理想的です。
61式戦車、四式戦車や五式戦車という第二次世界大戦末期に本土決戦へ開発され、75mm高射砲を転用した高初速砲を採用、M-4戦車に対抗可能、M-26戦車に対しても従来の日本戦車以上に対抗できる性能を持ちつつ実戦を経験しなかった戦車、戦後初の国産戦車61式戦車は技術的延長にある戦車です。一度61式戦車で怪獣をやっつける映画を撮ってみたい。
61式戦車、第3戦車大隊と第10戦車大隊の61式戦車が多数並ぶ様子も作品中に示されていました。当時の映画パンフレットには富士総合火力演習にて大規模なロケを実施した、とありますが、富士総合火力演習は富士教導団戦車教導隊に加えて第1戦車大隊と第12戦車大隊が支援に参加する事はあるようですが、第3戦車大隊と第10戦車大隊はどうか、と。
今津駐屯地においてロケをおこなったのではないか、整列していた第3戦車大隊と第10戦車大隊の規模は小隊規模というような参加ではなく、もっとおおきなものです。1989年といいますと、90式戦車の開発が進む中、一応劇中には実車ではありませんが90式戦車とよく似た複合装甲を有する戦車は参加していました、しかし、あのころの主力は74式戦車だ。
61式戦車でゴジラと立ち向かうのは嫌だなあ、率直な印象です。90mm戦車砲はステレオ式照準器を採用、測距に時間を要すると共に74式戦車に搭載される砲安定装置が搭載されていない為に行進間射撃も出来ません、その上に狭軌貨物鉄道輸送を念頭に車幅を抑えた代償に車高が高く、重量も74式戦車の38tに対して61式戦車は35tしかありません。
74式戦車よりも61式戦車は車高が高いという事で前方投影面積が大きくなっているのですが、その分重量は一割ほど軽い、要するに装甲が薄い、という事です。勿論ゴジラの熱線に74式戦車の避弾経始構造の敵戦車砲弾を滑らせて反らす構造がどの程度有効かは未知数ですが、それでも距離次第で、薄い装甲よりは厚い装甲の方がまだ生存確率が高くなる。
ゴジラとの戦闘で61式戦車が有する最大の脆弱性はNBC防御能力の低さでしょう。1985年ゴジラ襲撃後の新宿副都心が放射性降下物により汚染されている様子が作品世界冒頭に画かれていますが、可能性として核燃料をエネルギー源とし、そのエネルギーを元に高熱の熱線を放射する生物であるゴジラは、相当量の放射性物質を蓄積している可能性が高い。
旧式戦車でゴジラに立ち向かう以上、少なくとも掩砲所を構築し、地形防御と反射面陣地を徹底し、戦車をゴジラに正面から向き合わぬよう戦闘するべきです。残念ながら劇中、若狭湾決戦にて戦車部隊は待機位置に大隊規模で集合、陣地構築の時間が無かった事を意味します。無人攻撃機スーパーX2が配備される予算がありながら、61式戦車も残っている。
スーパーX2、ゴジラvsビオランテにおける象徴的な装備です。運用は陸上自衛隊ですが、潜水艦としての機能を有し、超音速巡航も可能という。恐らく物凄い予算を要する装備で、陸上自衛隊が運用している様子は、余り者維持費に他の正面装備取得を圧迫するとして海上自衛隊や航空自衛隊が管理を嫌がった為、押し付けられたとの構図なのかもしれません。
ファイヤーミラー、原理は不明ですがゴジラの熱線を反射する装備を有しており、極めて有用な装備といえます。空対艦ミサイルや大口径機関砲、長魚雷までを搭載する無人攻撃機です。全長34mと全幅16mと全高11mということですので、重量は発表されていませんが、軽量ならばヘリコプター搭載護衛艦はるな型からも大きさの上では運用可能です。
防備隊に配備されていた11号型魚雷艇が全長35mと全幅9.2mで自重を示す基準排水量100t、前型にあたるスーパーXは全長27mに全幅20mと全高11mで最大離陸重量が150t、はるな型護衛艦等に搭載される54口径127mm単装砲の総重量が58tです。巡航速度はマッハ1、無人機ながら電波が通じない海中で潜水艦としても運用できる陸上自衛隊の装備だ。
イージスアショアの陸上自衛隊管理、と昨今の情勢を比較しますとゴジラvsビオランテの作品世界でも陸上自衛隊は押し付けられたのかもしれません。そしてこの無人航空機スーパーX2は1985年に東京に上陸したゴジラを迎撃し、最終的に撃墜破壊されるも一定の足止めを実現した自動炊飯器型VTOL攻撃機スーパーXの後継機、という位置づけです。
正式名称は陸上自衛隊幕僚監部付実験航空隊首都防衛移動要塞T-1号、という長い正式名称のVTOL攻撃機が1985年のゴジラ襲撃に際し出動、元々は核戦争に際しての政府中枢退避用航空機として開発され、設計時点でゴジラを想定していないものの核攻撃を想定し全体をチタン合金により装甲化し、熱線に耐える構造と共に多数の火器を搭載している。
スーパーXと呼称される首都防衛移動要塞、緊急追加搭載のゴジラの核反応を抑える新型化学剤カドミウム弾を搭載し一定の効果を挙げましたが、恐らく追加搭載の際に当初施されていた核電磁パルス対策の防護材が外されたのでしょう、暴発したソ連核ミサイルと迎撃に当った米軍ミサイルとの高高度核爆発により核電磁パルスが発生、一時不時着している。
スーパーX2は後継機として開発、主契約企業は三友重工とのこと。三友重工とは、恐らく三菱重工と住友精密工業の合弁会社なのでしょう。要求仕様はスーパーXが首都防衛用航空機という設定であったのに対しスーパーX2は元々から巨大生物災害を想定し開発された専用航空機です、こうしますと特殊器材となり企業連合による開発を行う方が合理性は高い。
三友重工が企業連合体の合弁企業であるという推測ですが、世界を見ますとこうした実例はあります。欧州共通攻撃機となったトーネード攻撃機等も開発参加国となるイギリスとドイツにイタリアが国際合弁会社パナヴィアエアクラフト社を創設しましたし、我が国でも過去には国産旅客機YS-11開発製造の際にも合弁会社日本航空機製造が創立されている。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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先週までリバイバル上映となっていましたゴジラvsビオランテ、今回からは軍事検証の視点からみてみましょう。
ゴジラvsビオランテ、自衛隊撮影協力体制が過去にない規模で組まれています。演習場などで撮影された様子や木更津第1ヘリコプター団の大編隊等もV-107輸送ヘリコプター時代の貴重な映像、なにしろ大型のCH-47に機種転換後は32機定数となっていますが、V-107時代にはヘリコプター団の定数は40機、機数が大きくなればその分、迫力も凄い。
怪獣映画といえば61式戦車でしょう。1964年公開のモスラ対ゴジラにて特車隊の新兵器として登場して以来、怪獣映画の定番となりました。90mm戦車砲はソ連軍のT-55戦車へ対抗する事を念頭に開発され、1970年代にはソ連軍の新型T-62戦車へ対抗する事が若干難しくなっていますが、車幅を3m以下、2.95mに抑えた為、貨物列車で輸送可能です。
75式自走榴弾砲がゴジラvsビオランテ小説版では沿岸部において運用されていました。護衛案の127mm艦砲よりも強力な30口径155mm榴弾砲で射程は19km、自動装填装置により毎分6発の射撃が可能という、長砲身化したらばまだ世界で第一級の性能を有しています。自衛隊では既に2013年に引退しました。射程が長く、間合いも取れて理想的です。
61式戦車、四式戦車や五式戦車という第二次世界大戦末期に本土決戦へ開発され、75mm高射砲を転用した高初速砲を採用、M-4戦車に対抗可能、M-26戦車に対しても従来の日本戦車以上に対抗できる性能を持ちつつ実戦を経験しなかった戦車、戦後初の国産戦車61式戦車は技術的延長にある戦車です。一度61式戦車で怪獣をやっつける映画を撮ってみたい。
61式戦車、第3戦車大隊と第10戦車大隊の61式戦車が多数並ぶ様子も作品中に示されていました。当時の映画パンフレットには富士総合火力演習にて大規模なロケを実施した、とありますが、富士総合火力演習は富士教導団戦車教導隊に加えて第1戦車大隊と第12戦車大隊が支援に参加する事はあるようですが、第3戦車大隊と第10戦車大隊はどうか、と。
今津駐屯地においてロケをおこなったのではないか、整列していた第3戦車大隊と第10戦車大隊の規模は小隊規模というような参加ではなく、もっとおおきなものです。1989年といいますと、90式戦車の開発が進む中、一応劇中には実車ではありませんが90式戦車とよく似た複合装甲を有する戦車は参加していました、しかし、あのころの主力は74式戦車だ。
61式戦車でゴジラと立ち向かうのは嫌だなあ、率直な印象です。90mm戦車砲はステレオ式照準器を採用、測距に時間を要すると共に74式戦車に搭載される砲安定装置が搭載されていない為に行進間射撃も出来ません、その上に狭軌貨物鉄道輸送を念頭に車幅を抑えた代償に車高が高く、重量も74式戦車の38tに対して61式戦車は35tしかありません。
74式戦車よりも61式戦車は車高が高いという事で前方投影面積が大きくなっているのですが、その分重量は一割ほど軽い、要するに装甲が薄い、という事です。勿論ゴジラの熱線に74式戦車の避弾経始構造の敵戦車砲弾を滑らせて反らす構造がどの程度有効かは未知数ですが、それでも距離次第で、薄い装甲よりは厚い装甲の方がまだ生存確率が高くなる。
ゴジラとの戦闘で61式戦車が有する最大の脆弱性はNBC防御能力の低さでしょう。1985年ゴジラ襲撃後の新宿副都心が放射性降下物により汚染されている様子が作品世界冒頭に画かれていますが、可能性として核燃料をエネルギー源とし、そのエネルギーを元に高熱の熱線を放射する生物であるゴジラは、相当量の放射性物質を蓄積している可能性が高い。
旧式戦車でゴジラに立ち向かう以上、少なくとも掩砲所を構築し、地形防御と反射面陣地を徹底し、戦車をゴジラに正面から向き合わぬよう戦闘するべきです。残念ながら劇中、若狭湾決戦にて戦車部隊は待機位置に大隊規模で集合、陣地構築の時間が無かった事を意味します。無人攻撃機スーパーX2が配備される予算がありながら、61式戦車も残っている。
スーパーX2、ゴジラvsビオランテにおける象徴的な装備です。運用は陸上自衛隊ですが、潜水艦としての機能を有し、超音速巡航も可能という。恐らく物凄い予算を要する装備で、陸上自衛隊が運用している様子は、余り者維持費に他の正面装備取得を圧迫するとして海上自衛隊や航空自衛隊が管理を嫌がった為、押し付けられたとの構図なのかもしれません。
ファイヤーミラー、原理は不明ですがゴジラの熱線を反射する装備を有しており、極めて有用な装備といえます。空対艦ミサイルや大口径機関砲、長魚雷までを搭載する無人攻撃機です。全長34mと全幅16mと全高11mということですので、重量は発表されていませんが、軽量ならばヘリコプター搭載護衛艦はるな型からも大きさの上では運用可能です。
防備隊に配備されていた11号型魚雷艇が全長35mと全幅9.2mで自重を示す基準排水量100t、前型にあたるスーパーXは全長27mに全幅20mと全高11mで最大離陸重量が150t、はるな型護衛艦等に搭載される54口径127mm単装砲の総重量が58tです。巡航速度はマッハ1、無人機ながら電波が通じない海中で潜水艦としても運用できる陸上自衛隊の装備だ。
イージスアショアの陸上自衛隊管理、と昨今の情勢を比較しますとゴジラvsビオランテの作品世界でも陸上自衛隊は押し付けられたのかもしれません。そしてこの無人航空機スーパーX2は1985年に東京に上陸したゴジラを迎撃し、最終的に撃墜破壊されるも一定の足止めを実現した自動炊飯器型VTOL攻撃機スーパーXの後継機、という位置づけです。
正式名称は陸上自衛隊幕僚監部付実験航空隊首都防衛移動要塞T-1号、という長い正式名称のVTOL攻撃機が1985年のゴジラ襲撃に際し出動、元々は核戦争に際しての政府中枢退避用航空機として開発され、設計時点でゴジラを想定していないものの核攻撃を想定し全体をチタン合金により装甲化し、熱線に耐える構造と共に多数の火器を搭載している。
スーパーXと呼称される首都防衛移動要塞、緊急追加搭載のゴジラの核反応を抑える新型化学剤カドミウム弾を搭載し一定の効果を挙げましたが、恐らく追加搭載の際に当初施されていた核電磁パルス対策の防護材が外されたのでしょう、暴発したソ連核ミサイルと迎撃に当った米軍ミサイルとの高高度核爆発により核電磁パルスが発生、一時不時着している。
スーパーX2は後継機として開発、主契約企業は三友重工とのこと。三友重工とは、恐らく三菱重工と住友精密工業の合弁会社なのでしょう。要求仕様はスーパーXが首都防衛用航空機という設定であったのに対しスーパーX2は元々から巨大生物災害を想定し開発された専用航空機です、こうしますと特殊器材となり企業連合による開発を行う方が合理性は高い。
三友重工が企業連合体の合弁企業であるという推測ですが、世界を見ますとこうした実例はあります。欧州共通攻撃機となったトーネード攻撃機等も開発参加国となるイギリスとドイツにイタリアが国際合弁会社パナヴィアエアクラフト社を創設しましたし、我が国でも過去には国産旅客機YS-11開発製造の際にも合弁会社日本航空機製造が創立されている。
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