■週報:世界の防衛,最新13論点
今回はヘリコプター等の話題と軽装甲車や軽戦車の話題を中心に13の最新情報を観てゆきましょう。
アメリカ陸軍FLRAA長距離強襲機計画に基づくベルV-280可動翼機試作機試験は発着試験から機動性評価試験へ前進したとのことです。ベルV-280ヴェイロー可動翼機はアメリカ陸軍で大量に運用されるUH-60ブラックホーク多用途ヘリコプターの後継機を目指し2019年に初飛行した機体で2020年末までに試作機は200時間の飛行試験を完了しました。
V-280は巡航速度520km/h、これは280ノットを示しV-280の由来となっています。航続距離は3900kmでアメリカ陸軍では2030年から配備開始を予定しています。海兵隊のMV-22オスプレイに対し、主翼の格納等の条件を緩和し取得費用を抑えているのが特色で、しかし高速性能は匍匐飛行等の機動性に条件を課すことから、この試験が始まったのです。
■UH-72Bラコタ配備開始
UH-72Bラコタは小型で最前線での運用よりは支援用ではあるもののアメリカがUH-1Hの後継に選定したもの。
アメリカ陸軍州兵は最新型のUH-72Bラコタ小型多用途ヘリコプターの受領を開始しました。最初の受領は21機となっており、州兵航空部隊の近代化を更に進める計画です。UH-72B小型多用途ヘリコプターはUH-1H多用途ヘリコプターの後継機として配備が進むUH-72A小型多用途ヘリコプターに続いて導入されるエアバス製のヘリコプターです。
UH-72Bの前型であるUH-72Aはミシシッピ州コロンバスで製造されるユーロコプターEC-145ヘリコプターの軍用型で、LUH軽量ヘリコプター計画として導入されたもので、2020年9月に463号機が納入され生産終了となりました。UH-72Aと比較しUH-72Bは回転翼が四枚から五枚となり、またテイルローターが従来型から一体型へ転換しています。
■IM-SHORADストライカー
IM-SHORADストライカーは既存装輪装甲車に詰め込めるだけ色々なものを詰め込んだもの。
アメリカ陸軍は2021年1月22日、IM-SHORADストライカー統合兵器プラットフォームシステムに関してエネラルダイナミクス社とレオナルド社との間で6億ドルの契約を締結しました。ストライカー装甲車の派生型、当面は28両が初期教育所要として納入され、アメリカ陸軍における地上戦闘や戦術体系などを大きく変えるものとなるかもしれません。
IM-SHORADストライカー統合兵器プラットフォームシステムはXM914/30mm機関銃とM-240/7.62mm機関銃及びスティンガーミサイル四連装発射装置と二発のロングボウヘルファイアを搭載、MHR多機能型レーダー装置を搭載します。このMHR多機能型レーダーは敵味方識別装置と連接し、無人機や航空機及び地上車輛に対する火力戦闘を実施します。
■中国人民解放軍15式軽戦車
15式軽戦車は軽戦車とはいうものの重量は61式戦車と74式戦車の中間あたりで、近年の戦車重量化は軽戦車にも及ぶ模様だ。
中国人民解放軍は山岳専用に開発された15式軽戦車の新規量産分を取得した、1月31日に新疆ウイグル自治区において撮影したという、その訓練の様子を中国中央テレビCCTVが報じた。15式軽戦車は標高4000m以上の山岳地域での運用を念頭に開発された新型戦車で、軽戦車として軽量に収めている背景には山間部での地盤脆弱性適合を考慮したため。
15式軽戦車は戦闘重量36t、これは山岳戦用に維持されていた62式軽戦車と同程度であり、近代化改修の限界を超えている62式軽戦車を置換える為の開発と読み取れる、主砲は105mm戦車砲で99式戦車や96式戦車と比較し、過給装置の容量を強化することで酸素濃度の低い地域での運用を念頭としている。15式軽戦車は中印国境等に重点配備されている。
■エルビットシステム社軽戦車
主力戦車の巨大化と重厚化により主力戦車を安易に保有できない諸国へエルビットシステム社の提案です。
イスラエルのエルビットシステム社は国名非開示のアジア太平洋地域某国へ軽戦車販売契約を1億7200万ドルで締結したと発表しました。アジア太平洋地域では、いまだにM-41戦車を運用する台湾とタイ、軽戦車導入計画を進めているフィリピンなどが考えられますが、特にフィリピンはイスラエルより軽戦車砲塔導入の交渉を進めていた事で知られます。
サブラ-ASCOD,イスラエルはスペインとオーストリア共同開発のASCOD装甲戦闘車車体へ105mm砲塔を搭載し電子光学照準器及び射撃統制システム、TORCH-XTM戦闘管理システムとE-LynXTM無線システムを一体化させた軽戦車を提案しており、このサブラ砲塔システムはオーストリア製パンドゥール2装輪装甲車にも搭載する事が可能だとしています。
■CV-90装甲戦闘車新型砲塔
オランダ軍の話題です、欧州共通装甲戦闘車というべきCV-90装甲戦闘車が近代化改修を受け砲塔を換装するとのこと。
オランダ陸軍は現在運用中のCV-90装甲戦闘車について新型砲塔搭載に関する5億ドル規模の契約をBAEシステムズ社との間で締結しました。オランダ軍は122両のCV-90を近代化改修の対象とする計画で、新型砲塔と共に車体部分の延命改修が予定され、改修作業はBAEより提供の構成要素を、オランダ防衛調達公社により整備される計画とのこと。
CV-90装甲戦闘車はスウェーデンのヘルグランド社が開発しましたが現在同社はBAE系列となっています。この改修により、乗員は周辺目標の発見と弾薬選定を大幅に自動化する事が可能となり、また新型砲塔は装甲防御力が強化されるとともに車体側面部分や正面部分の防御力も大幅に強化される構想です。なお、主砲は35mm機関砲のままになります。
■北朝鮮軍の軽装甲機動車型装備
いやあ自衛隊の装備が強そうなのでパクられる時代になったのですね。
北朝鮮軍の軽装甲機動車型新型装甲車は三菱自動車製パジェロ四輪駆動車の改造型か。これは北朝鮮軍が2020年と2021年に実施した夜間軍事パレードに日本の小松製作所が量産する軽装甲機動車と非常に類似した軽装甲機動車輛を指揮官車として参加させていますが、2021年の北朝鮮発表映像から運転装置や車体底部の形状から推測できるとのことです。
北朝鮮がどのようにパジェロを取得したかは定かではありません、三菱自動車はパジェロの製造を終了していますし、また北朝鮮へは経済制裁により日本からパジェロを取得する事は出来ず、中国から中古車を取得したと考えられます。もし中古車由来であれば、北朝鮮製兵器についてパレードに示される性能や量産性について、新しい視点となりましょう。
■パンドゥールEVO装輪装甲車
パンドゥール装輪装甲車といえば原型が六輪型で82式指揮通信車のような印象の装甲車でしたが。
オーストリア軍は2021年1月、30両のパンドゥールEVO装輪装甲車を新規取得した。パンドゥールEVOは六輪式の装輪装甲車でパンドゥール2の八輪型を六輪型としたもの、1980年代に大量配備されたパンドゥール1装輪装甲車の改良型に当り、原型パンドゥール装甲車はオーストリアのステアーダイムラープフ社により1979年に開発されたものです。
今回のパンドゥールEVOはパンドゥール2の高価な車体、砲塔搭載などを前提とした車体の廉価版に当り、砲塔搭載などは重量制限が厳しいもののコンパクトな車体設計に11名の兵員輸送能力を付与、1979年の原型設計当時には想定されていなかった新しい脅威、簡易爆発物IEDへの防御力を有しており、オーストリアは更に64両の増強を軽悪しています。
■M-109自走砲近代化改修
M-109A6自走榴弾砲の継続的な近代化改修の話題ですが、もともとM-109は1960年代の装備です故いつまで使うのでしょうか。
アメリカ陸軍ではM-109A6自走榴弾砲の継続的な近代化改修評価試験がすすめられている。既に方針を改良したM-109A7への更新も開始されるが、並行して既存型のM-109A6の改良も継続されるとのこと。一方、M-109A7への改修は大量生産され部品単位で保管されているM-109の改良に留まらず、車両構成部品の一部を新造部品により置換えるという。
M-109A7は車体部分を従来のM-109から汎用装甲車共通車両に応用されるM-2ブラッドレー装甲戦闘車車体部分の新造車体構造に置換えるとともに、砲身を除く基部等は既存火砲をそのまま応用することで、車体寿命を延伸すると共に第一線での運用能力を維持するとされます。M-109は基本設計が1962年と古いものの、改修を重ねて今日に至ります。
■ウクライナ装甲ハンヴィー取得
装甲ハンヴィーというと装甲防御力が限界もある故にMRAPが開発されている印象ではあるのですが。
ウクライナ軍はアメリカから新たにM-1151装甲ハンヴィー20両を追加調達すると発表しました、これは2020年12月にアメリカのトランプ政権との間で締結した防衛装備品契約に基づくもので、ウクライナ軍では多数の旧ソ連製重装備などを維持していますが、M-1151装甲ハンヴィーについては陸軍特別機動部隊へ配備し、機動運用に充てる構想です。
ウクライナ軍ではこれにより100両以上のハンヴィーを導入する事となります。ただ、ウクライナ東部紛争では開戦緒戦に際しロシアからの非正規部隊浸透が指摘されており、M-1151はこうした状況に際しては非常に有用ではあると考えられますが、重戦力を維持するロシア軍と対峙するウクライナ軍には充分な装甲車とは言い難い実情もあるのでしょう。
■ドイツ軍イヴェコ製トラック
イヴェコのトラックをドイツ軍が導入するとの事でMAN社製トラックを先日大量取得したばかり、ドイツ軍はいまトラックがブームだ。
ドイツ軍はイタリアのイヴェコディフェンスビーグル社より1048両のトラッカーシリーズトラックを調達する方針を示しました。これは2021年1月から本格化する防衛装備品調達交渉の一環で、イヴェコ社は欧州連合EURO-6環境排出規制適合規格で、ドイツ連邦軍が必要な簡易爆発物IED防護構造キャビンを有する軍用トラックを多数生産しています。
イヴェコトラッカーシリーズ。ドイツ国内にはMAN社をはじめとして多くのトラックメーカーが存在しますが、IED対策構造ではイヴェコ社の方が先進的な設計と実績を有しており、今回この部分が反映されているとのこと。ドイツ連邦軍ではドイツ製を始め連邦軍の旧式化したトラック刷新を進めており、最初に八輪型の224両が納入される方針です。
■チベット用新型全地形車両
新型全地形車両を人民解放軍が配備を開始したもようで、この種の装備は山間部と峻険地形の多い自衛隊にも必要だと思うのですが。
中国人民解放軍はチベット地域での作戦用に新型全地形車両の調達を開始したとのこと。これは中国のオーディナンスインダストリーサイエンステクノロジー誌が伝えたもので、全地形車両の先駆者であるスウェーデン製BV-204,BV-206と同じ形式の連接型車体を採用し、人民解放軍配備車輛では前部分に人員と機関部、後半部に開放型荷物室を持つ配置に。
全地形車両は標高5000m以上の山岳地域において歩兵支援用に用いるもので、オーディナンスインダストリーサイエンステクノロジー誌によれば、山岳歩兵部隊へ飲料水や携行食料などを輸送する訓練支援を実施しているようです。この種の車両は2020年代に入り、アメリカ陸軍でも採用の動きがある等、新しい局地戦に対応する動きが潮流となりつつある。
■タイがLG-1-Mk3榴弾砲取得
日本では野砲といえば155mmに統一しましたが105mm榴弾砲はかなり軽量な榴弾砲であり維持している国も多い。
タイ陸軍はフランスネクスター社製LG-1-Mk3/105mm榴弾砲12門を新たに導入する計画を発表しました。タイ陸軍には前型にあたるフランスネクスター社製LG-1-Mk2/105mm榴弾砲24門を装備しており、純粋にこの増勢に充てられる砲身です。LG-1-Mk3/105mmはLG-1-Mk2/105mmと比較し新型砲弾に対応し、標定装置等が自動化されています。
LG-1-Mk3/105mmは30口径砲身を採用、NATO標準弾薬各種に対応しており、その射程はUSM-1通常榴弾を用いた場合の射程は11km、ネクスター拡張弾薬を用いた場合の射程は17kmとされており105mm榴弾砲としては比較的長い射程を発揮します。タイ陸軍では軽量な105mm榴弾砲を耐爆車両に牽引させる事で第一線での運用を行っています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回はヘリコプター等の話題と軽装甲車や軽戦車の話題を中心に13の最新情報を観てゆきましょう。
アメリカ陸軍FLRAA長距離強襲機計画に基づくベルV-280可動翼機試作機試験は発着試験から機動性評価試験へ前進したとのことです。ベルV-280ヴェイロー可動翼機はアメリカ陸軍で大量に運用されるUH-60ブラックホーク多用途ヘリコプターの後継機を目指し2019年に初飛行した機体で2020年末までに試作機は200時間の飛行試験を完了しました。
V-280は巡航速度520km/h、これは280ノットを示しV-280の由来となっています。航続距離は3900kmでアメリカ陸軍では2030年から配備開始を予定しています。海兵隊のMV-22オスプレイに対し、主翼の格納等の条件を緩和し取得費用を抑えているのが特色で、しかし高速性能は匍匐飛行等の機動性に条件を課すことから、この試験が始まったのです。
■UH-72Bラコタ配備開始
UH-72Bラコタは小型で最前線での運用よりは支援用ではあるもののアメリカがUH-1Hの後継に選定したもの。
アメリカ陸軍州兵は最新型のUH-72Bラコタ小型多用途ヘリコプターの受領を開始しました。最初の受領は21機となっており、州兵航空部隊の近代化を更に進める計画です。UH-72B小型多用途ヘリコプターはUH-1H多用途ヘリコプターの後継機として配備が進むUH-72A小型多用途ヘリコプターに続いて導入されるエアバス製のヘリコプターです。
UH-72Bの前型であるUH-72Aはミシシッピ州コロンバスで製造されるユーロコプターEC-145ヘリコプターの軍用型で、LUH軽量ヘリコプター計画として導入されたもので、2020年9月に463号機が納入され生産終了となりました。UH-72Aと比較しUH-72Bは回転翼が四枚から五枚となり、またテイルローターが従来型から一体型へ転換しています。
■IM-SHORADストライカー
IM-SHORADストライカーは既存装輪装甲車に詰め込めるだけ色々なものを詰め込んだもの。
アメリカ陸軍は2021年1月22日、IM-SHORADストライカー統合兵器プラットフォームシステムに関してエネラルダイナミクス社とレオナルド社との間で6億ドルの契約を締結しました。ストライカー装甲車の派生型、当面は28両が初期教育所要として納入され、アメリカ陸軍における地上戦闘や戦術体系などを大きく変えるものとなるかもしれません。
IM-SHORADストライカー統合兵器プラットフォームシステムはXM914/30mm機関銃とM-240/7.62mm機関銃及びスティンガーミサイル四連装発射装置と二発のロングボウヘルファイアを搭載、MHR多機能型レーダー装置を搭載します。このMHR多機能型レーダーは敵味方識別装置と連接し、無人機や航空機及び地上車輛に対する火力戦闘を実施します。
■中国人民解放軍15式軽戦車
15式軽戦車は軽戦車とはいうものの重量は61式戦車と74式戦車の中間あたりで、近年の戦車重量化は軽戦車にも及ぶ模様だ。
中国人民解放軍は山岳専用に開発された15式軽戦車の新規量産分を取得した、1月31日に新疆ウイグル自治区において撮影したという、その訓練の様子を中国中央テレビCCTVが報じた。15式軽戦車は標高4000m以上の山岳地域での運用を念頭に開発された新型戦車で、軽戦車として軽量に収めている背景には山間部での地盤脆弱性適合を考慮したため。
15式軽戦車は戦闘重量36t、これは山岳戦用に維持されていた62式軽戦車と同程度であり、近代化改修の限界を超えている62式軽戦車を置換える為の開発と読み取れる、主砲は105mm戦車砲で99式戦車や96式戦車と比較し、過給装置の容量を強化することで酸素濃度の低い地域での運用を念頭としている。15式軽戦車は中印国境等に重点配備されている。
■エルビットシステム社軽戦車
主力戦車の巨大化と重厚化により主力戦車を安易に保有できない諸国へエルビットシステム社の提案です。
イスラエルのエルビットシステム社は国名非開示のアジア太平洋地域某国へ軽戦車販売契約を1億7200万ドルで締結したと発表しました。アジア太平洋地域では、いまだにM-41戦車を運用する台湾とタイ、軽戦車導入計画を進めているフィリピンなどが考えられますが、特にフィリピンはイスラエルより軽戦車砲塔導入の交渉を進めていた事で知られます。
サブラ-ASCOD,イスラエルはスペインとオーストリア共同開発のASCOD装甲戦闘車車体へ105mm砲塔を搭載し電子光学照準器及び射撃統制システム、TORCH-XTM戦闘管理システムとE-LynXTM無線システムを一体化させた軽戦車を提案しており、このサブラ砲塔システムはオーストリア製パンドゥール2装輪装甲車にも搭載する事が可能だとしています。
■CV-90装甲戦闘車新型砲塔
オランダ軍の話題です、欧州共通装甲戦闘車というべきCV-90装甲戦闘車が近代化改修を受け砲塔を換装するとのこと。
オランダ陸軍は現在運用中のCV-90装甲戦闘車について新型砲塔搭載に関する5億ドル規模の契約をBAEシステムズ社との間で締結しました。オランダ軍は122両のCV-90を近代化改修の対象とする計画で、新型砲塔と共に車体部分の延命改修が予定され、改修作業はBAEより提供の構成要素を、オランダ防衛調達公社により整備される計画とのこと。
CV-90装甲戦闘車はスウェーデンのヘルグランド社が開発しましたが現在同社はBAE系列となっています。この改修により、乗員は周辺目標の発見と弾薬選定を大幅に自動化する事が可能となり、また新型砲塔は装甲防御力が強化されるとともに車体側面部分や正面部分の防御力も大幅に強化される構想です。なお、主砲は35mm機関砲のままになります。
■北朝鮮軍の軽装甲機動車型装備
いやあ自衛隊の装備が強そうなのでパクられる時代になったのですね。
北朝鮮軍の軽装甲機動車型新型装甲車は三菱自動車製パジェロ四輪駆動車の改造型か。これは北朝鮮軍が2020年と2021年に実施した夜間軍事パレードに日本の小松製作所が量産する軽装甲機動車と非常に類似した軽装甲機動車輛を指揮官車として参加させていますが、2021年の北朝鮮発表映像から運転装置や車体底部の形状から推測できるとのことです。
北朝鮮がどのようにパジェロを取得したかは定かではありません、三菱自動車はパジェロの製造を終了していますし、また北朝鮮へは経済制裁により日本からパジェロを取得する事は出来ず、中国から中古車を取得したと考えられます。もし中古車由来であれば、北朝鮮製兵器についてパレードに示される性能や量産性について、新しい視点となりましょう。
■パンドゥールEVO装輪装甲車
パンドゥール装輪装甲車といえば原型が六輪型で82式指揮通信車のような印象の装甲車でしたが。
オーストリア軍は2021年1月、30両のパンドゥールEVO装輪装甲車を新規取得した。パンドゥールEVOは六輪式の装輪装甲車でパンドゥール2の八輪型を六輪型としたもの、1980年代に大量配備されたパンドゥール1装輪装甲車の改良型に当り、原型パンドゥール装甲車はオーストリアのステアーダイムラープフ社により1979年に開発されたものです。
今回のパンドゥールEVOはパンドゥール2の高価な車体、砲塔搭載などを前提とした車体の廉価版に当り、砲塔搭載などは重量制限が厳しいもののコンパクトな車体設計に11名の兵員輸送能力を付与、1979年の原型設計当時には想定されていなかった新しい脅威、簡易爆発物IEDへの防御力を有しており、オーストリアは更に64両の増強を軽悪しています。
■M-109自走砲近代化改修
M-109A6自走榴弾砲の継続的な近代化改修の話題ですが、もともとM-109は1960年代の装備です故いつまで使うのでしょうか。
アメリカ陸軍ではM-109A6自走榴弾砲の継続的な近代化改修評価試験がすすめられている。既に方針を改良したM-109A7への更新も開始されるが、並行して既存型のM-109A6の改良も継続されるとのこと。一方、M-109A7への改修は大量生産され部品単位で保管されているM-109の改良に留まらず、車両構成部品の一部を新造部品により置換えるという。
M-109A7は車体部分を従来のM-109から汎用装甲車共通車両に応用されるM-2ブラッドレー装甲戦闘車車体部分の新造車体構造に置換えるとともに、砲身を除く基部等は既存火砲をそのまま応用することで、車体寿命を延伸すると共に第一線での運用能力を維持するとされます。M-109は基本設計が1962年と古いものの、改修を重ねて今日に至ります。
■ウクライナ装甲ハンヴィー取得
装甲ハンヴィーというと装甲防御力が限界もある故にMRAPが開発されている印象ではあるのですが。
ウクライナ軍はアメリカから新たにM-1151装甲ハンヴィー20両を追加調達すると発表しました、これは2020年12月にアメリカのトランプ政権との間で締結した防衛装備品契約に基づくもので、ウクライナ軍では多数の旧ソ連製重装備などを維持していますが、M-1151装甲ハンヴィーについては陸軍特別機動部隊へ配備し、機動運用に充てる構想です。
ウクライナ軍ではこれにより100両以上のハンヴィーを導入する事となります。ただ、ウクライナ東部紛争では開戦緒戦に際しロシアからの非正規部隊浸透が指摘されており、M-1151はこうした状況に際しては非常に有用ではあると考えられますが、重戦力を維持するロシア軍と対峙するウクライナ軍には充分な装甲車とは言い難い実情もあるのでしょう。
■ドイツ軍イヴェコ製トラック
イヴェコのトラックをドイツ軍が導入するとの事でMAN社製トラックを先日大量取得したばかり、ドイツ軍はいまトラックがブームだ。
ドイツ軍はイタリアのイヴェコディフェンスビーグル社より1048両のトラッカーシリーズトラックを調達する方針を示しました。これは2021年1月から本格化する防衛装備品調達交渉の一環で、イヴェコ社は欧州連合EURO-6環境排出規制適合規格で、ドイツ連邦軍が必要な簡易爆発物IED防護構造キャビンを有する軍用トラックを多数生産しています。
イヴェコトラッカーシリーズ。ドイツ国内にはMAN社をはじめとして多くのトラックメーカーが存在しますが、IED対策構造ではイヴェコ社の方が先進的な設計と実績を有しており、今回この部分が反映されているとのこと。ドイツ連邦軍ではドイツ製を始め連邦軍の旧式化したトラック刷新を進めており、最初に八輪型の224両が納入される方針です。
■チベット用新型全地形車両
新型全地形車両を人民解放軍が配備を開始したもようで、この種の装備は山間部と峻険地形の多い自衛隊にも必要だと思うのですが。
中国人民解放軍はチベット地域での作戦用に新型全地形車両の調達を開始したとのこと。これは中国のオーディナンスインダストリーサイエンステクノロジー誌が伝えたもので、全地形車両の先駆者であるスウェーデン製BV-204,BV-206と同じ形式の連接型車体を採用し、人民解放軍配備車輛では前部分に人員と機関部、後半部に開放型荷物室を持つ配置に。
全地形車両は標高5000m以上の山岳地域において歩兵支援用に用いるもので、オーディナンスインダストリーサイエンステクノロジー誌によれば、山岳歩兵部隊へ飲料水や携行食料などを輸送する訓練支援を実施しているようです。この種の車両は2020年代に入り、アメリカ陸軍でも採用の動きがある等、新しい局地戦に対応する動きが潮流となりつつある。
■タイがLG-1-Mk3榴弾砲取得
日本では野砲といえば155mmに統一しましたが105mm榴弾砲はかなり軽量な榴弾砲であり維持している国も多い。
タイ陸軍はフランスネクスター社製LG-1-Mk3/105mm榴弾砲12門を新たに導入する計画を発表しました。タイ陸軍には前型にあたるフランスネクスター社製LG-1-Mk2/105mm榴弾砲24門を装備しており、純粋にこの増勢に充てられる砲身です。LG-1-Mk3/105mmはLG-1-Mk2/105mmと比較し新型砲弾に対応し、標定装置等が自動化されています。
LG-1-Mk3/105mmは30口径砲身を採用、NATO標準弾薬各種に対応しており、その射程はUSM-1通常榴弾を用いた場合の射程は11km、ネクスター拡張弾薬を用いた場合の射程は17kmとされており105mm榴弾砲としては比較的長い射程を発揮します。タイ陸軍では軽量な105mm榴弾砲を耐爆車両に牽引させる事で第一線での運用を行っています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)