北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】ゴトランド級近代化改修とイラン初空母竣工,オランダホランド級OPV去就議論

2021-04-20 20:16:19 | インポート
■週報:世界の防衛,最新11論点
 今回は謎空母に初期艦というか初期のAIP潜水艦ゴトランドと哨戒艇や哨戒艦やコルベットの話題などを。

 サーブ社は近代化改修を行ったゴトランド級潜水艦ウップランドを12月16日、スウェーデン海軍へ引き渡しました。今回の近代化改修はゴトランド級としては二隻目で、スウェーデン海軍ではゴトランド級3隻が運用されています。ゴトランドは航空運用艦ゴトランドの名を継ぎ1990年に就役、世界初の実用AIP潜水艦ですが艦齢は30年となった。

 ゴトランド級の近代化改修は船体老朽部分の交換と航法システムの最新型への換装、また潜望鏡周辺のセンサーについても最新型へ交換すると共に戦闘情報システムが50の項目に渡って改良されています。なお、スターリングシステムなどAIP推進システムはそのままとなった模様です。スウェーデン海軍では当面、ゴトランド級の運用を継続する計画です。
■北朝鮮の新型SLBM登場
 北朝鮮の潜水艦発射弾道弾、日本海ASWが一段と大きな任務になりそうな新しい動きがパレードにて示されました。

 北朝鮮は五年に一度行われる朝鮮労働党党大会に合せ軍事パレードを実施、新型のSLBM潜水艦発射弾道弾とされる北極星5型を初めて公開しました。北極星SLBMは北朝鮮の潜水艦発射弾道弾シリーズで初めてその姿が公表されたのは2015年4月22日でした。北極星5型は試験塗装を施され、トレーラーにより牽引、行進に際し展示されました。

 北極星シリーズの最初に示された北極星1型は三種類ほどが2016年にかけ公表され、何れも全長はほぼ同等でしたが、弾頭部分形状等に相違点がありました。2017年には北極星2型が公開され、こちらは運搬車両がT-62車体を延長した独自の発射装置となっており、潜水艦以外に陸上からの運用を可能とさせ、陸海でミサイル体系統合化の可能性があります。

 2019年に北極星3型が初公開され、こちらは前型である1型や2型と比較し全長や直径で大型化、この頃から北朝鮮ではディーゼル方式の弾道ミサイル潜水艦の建造が発表されるようになります。続いて2020年に発表された北極星4型では直径は同程度ながら全長が若干短縮されていました、これに続く5型についてはその弾頭形状に変化がみられています。
■コンステレーション級エンジン
 アメリカ海軍が建造する新型ミサイルフリゲイトは日本のDD汎用護衛艦と比較しても同等の水準です。

 アメリカ海軍は新たに建造を開始するコンステレーション級ミサイルフリゲイトのエンジンとしてGE社製エンジンの採用を発表しました。採用が決定したのはGE LM2500-G4エンジンで、これはもともと航空機搭載用のエンジン出会ったものを千波強に転用したものです、エンジンは設計するフィンカンティエリマリネットマリン社に引き渡されます。

 コンステレーション級ミサイルフリゲイトはEASRレーダーとスタンダードSM-2を搭載、満載排水量6200t規模のミサイルフリゲイトで艦種区分はFFM,イタリア海軍のカルロスベルガミーニ級フリゲイトを原型としてアーレイバーク級を補完する防空艦として建造が決定されており当面は10隻が建造され、最終的に20隻が建造される計画となっています。
■エジプト海軍最新鋭FREMM
 エジプト海軍は近年海軍増強が著しく、一頃の陸軍大国から地中海における重要な海洋秩序へのステイクホルダーとなっています。

 エジプト海軍は12月、イタリアフィンカンティエリ社より新フリゲイトFREMM型のアルガララを受領しました。アルガララはイタリアから導入する2隻のカルロベルガミーニ級フリゲイトの最初の一隻で満載排水量は5950t、エジプト海軍よれば6700t、アスター30艦対空ミサイルと多機能レーダーMM/SPY-790-EMPARを搭載する強力な艦隊防空艦だ。

 アルガララに続くもう一隻のカルロベルガミーニ級は2024年に引き渡される方針で、エジプト海軍はカルロベルガミーニ級の他にフランス海軍よりアキテーヌ級駆逐艦を1隻導入しているほか、近年ではミストラル級強襲揚陸艦2隻をロシア経済制裁の影響から安価に入手して以来、海軍の近代化を急速に進め、地中海での存在感を大きく伸ばしています。
■ウクライナ,トルコ艦導入
 ウクライナ海軍、あぶくま型護衛艦と同程度の大きさの水上戦闘艦を整備し海軍再建を進めるという。

 ウクライナ海軍は12月16日、トルコ政府との間でトルコ製アダ級コルベット4隻と無人航空機の導入に関する協定を締結しました。契約金額は未発表だ。ウクライナ海軍ではアゾフ海にて海軍艦艇多数がロシア軍に拿捕され、海軍の再建を進めており、今回の協定を元にウクライナ国内の防衛産業再編による海軍近代化をトルコ支援下で進める構想です。

 アダ級コルベットは満載排水量2300t、小型艦ですが、SMART-S-Mk2レーダーを搭載しており、76mm艦砲とRAM近接防空システム及びハープーン対艦ミサイルと324mm短魚雷を搭載し、ヘリコプターも搭載、MTU社製ディーゼルエンジンとジェネラルダイナミクス社製ガスタービンエンジンを搭載するCODAG方式で31ノットの速力を発揮します。
■ホランド級哨戒艦去就議論
 オランダと云いますと掃海艦と外洋哨戒艦を統合したようなMCM機雷戦艦の計画が話題ですが。今回はOPV,外洋哨戒艦の話題だ。

 オランダ海軍では現在海軍が運用するホランド級外洋哨戒艦の去就が議論されています。ホランド級は重武装のカレルドールマン級フリゲイトの後継として4隻が建造されたもので、満載排水量は3750t、Thales-IM-400統合マストセンサーと76mm艦砲を搭載し、NH-90ヘリコプターとその格納庫を有しています。この他に30mm機関砲や機関銃などを積む。

 ホランド級外洋哨戒艦はオランダの冷戦後の海洋戦略として海軍よりもテロ対策を重視し2011年から2013年にかけ4隻を建造しました。しかし、IM-400レーダーの搭載により安価であるはずのホランド級の建造費はカレルドールマン級よりも高いものとなり、また広大な監視能力を持つレーダーに対し、搭載武器は艦砲のみで、射程はまったく足りません。

 オランダ海軍が本級を計画した2000年代初頭とは異なり、オランダは現在、ロシア海軍の脅威と直面しており、一方で海軍に水上戦闘艦は最新のデーゼンヴェンプロヴィンシュタインが4隻とカレルドールマン級が2隻残るのみ。ホランド級はそろそろ延命改修か退役を検討する時機ですが、この軽武装の艦を維持する意義について議論が高まっています。
■インド海軍国境警備用小型艇
 要目から考えますと複合艇になるのでしょうか河川哨戒艇になるのでしょうか。

 インド海軍はゴア造船所との間で小型哨戒艇12隻の増産契約を締結しました、小型哨戒艇は乗員キャビンに天蓋を有し十数名を輸送、重機関銃2丁等を搭載し、契約から一年以内の2021年内にも12隻全てが納入される計画です。小型哨戒艇は特殊部隊支援用に用いられる計画ですが、同時に中印国境地域においても哨戒用に用いられるとされています。

 中印国境地域での哨戒任務、しかし中国と印度は現在のところ海を接していません。この為、ヒマラヤ地域の高山池沼での運用を示しているとされ、これは2020年に中国兵によるインド兵集団暴行事件が発生して以来の続くヒマラヤ地域での緊張を前にインド陸軍に加えてインド海軍が哨戒艇部隊を派遣するという新しい段階に入っているといえるでしょう。
■イランがまさかの空母建造?
 うちの地元では空母とは呼べないな、空母と云うと私たちが想像する様な艦艇の他にタンカーに鉄板を張って間に合わせたものが戦時中にあったのですが。まさか21世紀にそれをやるとは。

 イラン海軍は1月13日、同国海軍初となる“航空母艦”マクラーンを取得したと発表しました。一見して民間タンカーと違いが分りませんが、これは取得した民間タンカー上甲板の上に鉄板を敷いて飛行甲板とした上でヘリコプターを発着させる、イギリスが第二次世界大戦中にMACシップとして建造した方式を再現した方式といえるかもしれません。

 マクラーンは航空母艦であると同時に前進作戦基地と位置付けており、タンカー部分の載貨重量は10万t、補給艦として用いる事も可能とのこと。外見から判別は難しいですが、飛行甲板部分は航空エレベータの様なものは確認できず、ヘリコプター等について露天係留するだけなのかもしれません。また前進作戦基地というが車両ランプの様なものも無い。

 イラン海軍は近くヘリコプター6機から7機を搭載するイラン海軍初の“航空母艦”を建造すると2020年に発表していましたが、まさかこれなのでしょうか。イラン海軍はマクラーンについて、補給なしで1000日の航海が可能としています。軍事用途は見い出しにくいですが、ホルムズ海峡などでアメリカ海軍空母へ異常接近する運用が考えられるでしょう。
■イランミサイル護衛艦ゼーレ
 ゼーレというとエヴァンゲリオン世代には別物を想像してしまうのですが、護衛艦というと日本ではもう少し大きいものを想像しまして、もうなにがなんだか。

 イラン海軍は1月13日、ミサイル護衛艦ゼーレを竣工させました。ゼーレはドイツが1977年にイランへ輸出したカマン級ミサイル艇を独自に模倣したシーナ級ミサイル艇の5番艦でイラン海軍はカマン級の取得を求めていたものの、1979年イラン革命により不可能となり、運用を維持していましたが年々難しくなり、形状を模倣し代替しているものです。

 ゼーレは満載排水量234t、中国製C-802対艦ミサイルかこれを模倣したイラン製ヌール対艦ミサイルとイタリアOTOメララ社製76mmスーパーラピット砲を不法コピーした艦砲を搭載しているもので、シーナ級ミサイル艇は2003年より建造開始、最終的に10隻建造を計画しています。イラン海軍ではより大型の水上戦闘艦建造も計画しているとされます。
■ウダロイ級を近代化改修
 ウダロイ級、舞鶴で何度か見る機会がありまして強そうな艦だなあと設計思想と機能美に驚かされたものです。

 ロシア海軍は旧式化したウダロイ級駆逐艦の近代化改修を本格化させました。冷戦時代にクレスタ級巡洋艦やカーラ級巡洋艦を置き換えるプロジェクト1155M大型対潜艦として称されるウダロイ級駆逐艦は満載排水量8500t、1980年からソ連崩壊の1991年にかけて12隻が量産され、新生ロシア海軍でも貴重な現用艦艇として8隻が維持されていました。

 マーシャルシャポニコフが改修の第一号となり公試中です。ウダロイ級は艦橋基部の左右両舷に搭載された射程45kmの巨大なSS-N-14/RPK-5対潜ミサイルが外見上の特色で、MGK-335対潜ソナーと併せる事で50km圏内の強力な対潜攻撃能力を有していましたが、近代化改修に際しては射程2500kmのカリブル巡航ミサイル発射筒に換装されています。

 ウダロイ級駆逐艦7番艦のマーシャルシャポニコフは2016年より改修へ入渠、ミサイルの換装に加えて背負い式の100mm艦砲を艦砲一門に縮小、また対艦ミサイルや対空ミサイルも換装しています。これにより区分も大型対潜艦からフリゲイトに変更されています。ロシア海軍ではこの近代化改修と共に10年程度の艦齢延長を期待しているようです。
■インド,テジャス艦載機構想
 お祭りの際の発表ですがテジャス戦闘機についてこれはもう凄い発表がありました。

 インド海軍は共和国記念日軍事パレードにおいてテジャス戦闘機空母艦載機型の模型を行進させました。空母艦載機型とは、トレーラ上にインド海軍の航空母艦を思わせるスキージャンプ台が再現され、その上に全長2mほどのテジャス戦闘機模型が二機、滑走中の様子を再現したものです。けっして2mの無人機ではなく、テジャスの縮尺模型というもの。

 テジャス戦闘機がインドが1980年代に開発に着手、1990年代に完成を見越して延々と技術的問題や設計錯誤などから遅延が続き、完成は無理ではないかと云われたものの2020年末に遂に正式発注が為されたものです。もっとも陸上機の空母艦載機転用としては着陸装置等の大幅な設計変更が必要であり、その実現性については未知数と言わざるを得ません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする