北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

潜水艦救難任務にC-2輸送機&US-2救難飛行艇活用を【1】インドネシア潜水艦ナンガラ遭難

2021-04-25 20:18:32 | 防衛・安全保障
■日本の救難艦派遣は間に合わず
 潜水艦の事故は恐ろしいものです。二月に発生した潜水艦そうりゅう衝突事故は潜舵破損という修理可能なものでしたが4月21日にインドネシア潜水艦の事故が発生しました。

 潜水艦救難事案に際し、航空機を活用することは出来ないでしょうか。こういうのは21日、インドネシア海軍潜水艦ナンガラが消息不明となる事案が発生したのに際し、一応訓練水準では世界最高峰の水準にある海上自衛隊へ捜索協力要請がでなかった為です。もちろん現場まで間に合わないことは自明でしたが、対岸の火事には思えない事故といえます。

 航空自衛隊のC-2輸送機に搭載可能な小型のDSRV深海潜水艦救難艇を開発するとか、これが不可能であれば海上自衛隊のUS-2救難飛行艇に搭載可能なROV無人潜水艇を開発し、兎に角DSRVを搭載した潜水艦救難艦が到着するまでに事故潜水艦の位置だけでも標定しておくというような、航空機の速度を活かした潜水艦救難の装備開発が必要であると思う。

 インドネシア潜水艦ナンガラ、バリ島沖で消息を絶った事案では潜水艦内部の部品や備品と思われるものが海上で回収され、恐らく圧壊したものとおもわれます。非常に残念な出来事でしたが、耐圧隔壁の一部が無事であれば、と希望も残っておりインドネシア海軍では捜索を続行しているようです、艦内酸素は24日まで、と当初発表されていました。

 海上自衛隊は2隻の潜水艦救難艦を配備しています、実は海上自衛隊はこの種の装備着手が草創期から行われており、初の潜水艦くろしお、がアメリカ海軍から引き渡された5年後には潜水艦救難艦ふしみ、を竣工させています。また旧海軍でも工作艦朝日、戦艦朝日を改造した大型の工作艦が潜水艦救助の任務に当たっていました、この分野の先駆者です。

 多国間潜水艦救助訓練では何度も海上自衛隊が参加していますし、今回遭難したナンガラの同型艦であるドイツ設計209型潜水艦との海中での人員移譲訓練もDSRVを投入して実際に実施しています。ただ、日本から潜水艦救難艦を派遣したとして事故現場はバリ島沖、五日はかかる計算ですので、間に合わないといわれれば、確かに進出は間に合いません。

 潜水艦救難艦、速力は20ノットと支援艦としては比較的高速の部類に含まれるのですが、潜水艦事故という緊急性を考えますと、果たしてこれで十分なのか、という素朴な疑問です。もちろん、潜水艦救難艦を40ノットのウェーブピアサー船とすべき、なんていう発想ではありません、DSRVを搭載した大型艦を高速で航行させることは難しい部分も多い。

 しかし、潜水艦救難の迅速化、という必要性はあるように思います。実際問題、海上自衛隊潜水艦は潜水艦おやしお型以降、そうりゅう型、たいげい型と大型化を進めており、潜水艦行動範囲は大型化にあわせて広域化しています。航続距離は友好国オーストラリアやインドまで充分含まれ、この点、現実的に事故の危険性もこの海域で皆無ではないのです。

 US-2救難飛行艇にROV無人潜水艇を搭載し、潜水艦事故が発生した場合には潜水艦救難艦に先行して現場海域へUS-2が着水、対潜飛行艇PS-1は動き回る潜水艦の捕捉へ技術的問題から早期に運用を終了していますが、概ねの海域が絞り込まれた状況であれば潜水艦救難艦到着前に標定やロボットアームによる支援、こうした運用は考えられるでしょう。

 DSRV,アメリカ海軍などはDSRVをそのままC-5戦略輸送機に搭載し事故現場近くの飛行場まで輸送し、飛行場からトレーラーを用いて港湾に進出、救難艦や潜水艦にDSRVを載せ替えて事故現場に向かうという、世界を舞台に行動するアメリカ海軍ならではの運用です。もっともC-2輸送機には現行のDSRVは40t以上もあり巨大、搭載不可能ではある。

 海上自衛隊が装備するDSRVは水深2000m程度までは潜航可能です、具体的に潜航深度は公表されていませんが潜水艦を発見する無人潜水艇ROVが2000mまで潜れるものとなっており、ROVが発見した潜水艦を救助する能力がDSRVにはあると説明されていることから逆算できます。ただオーストラリアのLR-5のように数百m程度の小型のものも世界には存在する。

 C-2輸送機の格納庫は全長15.7mと全高4.0mに幅4.0mで最大搭載能力は36tです、するとオーストラリアが開発したLR-5-DSRVであれば潜航深度は650mと重量24tで全長9.6m、全幅3.2mと全高2.7mですので、C-2輸送機に搭載出来、また16名を救助可能です。もっとも国産DSRVも大きさではC-2に搭載出来る為、軽量型が出来れば、とも。

 潜水艦事故は必ず深海で発生するものではありません、もちろん水深が浅い海域であればスタンキーフードという脱出救命器具が潜水艦にも搭載されているのですが、C-2輸送機の最大搭載能力である36tと機内容積を念頭に、空輸可能であるDSRVを潜水艦救難艦搭載用よりも潜航深度が著しく劣るものでも、即応用に開発する必要は、あるように思います。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】呉海軍カレー巡り,護衛艦せとゆきビーフカレーと潜水艦せきりゅうカレー

2021-04-25 18:29:22 | グルメ
■榛名さんの総監部グルメ日誌
 海軍の街というものは不思議な伝統を紡いでるものですがグルメというものもその要諦の一つでしょう。

 江田島、東日本大震災のその年度もそうでしたし、国が困難にあろうとも有事に備えるからこそ日常を維持しているのが、練習艦隊出航です。練習艦隊の江田島基地出航、2020年も2021年もCOVID-19広がる最中に粛々としかし堂々と大海原に錨を上げてゆきました。

 海軍とグルメ、海上自衛隊とグルメ、これは中々に切り離せないものがありまして、駐屯地と演習場と自宅を往復するという概念ではなく、護衛艦や潜水艦は其処が生活の場であり任務地です、すると上陸という言葉だけでも甘美であり、また生活の場の食事も重要だ。

 榛名さんの総監部グルメ日誌、こんな感じで自衛隊の総監部所在地域を散策してみましょう。呉は江田島の練習艦隊出航に併せて幾度も探訪していますが、2020年も新型肺炎と当時呼ばれたCOVID-19コロナウィルス感染症の脅威はあるものの、散策をすこしだけ。

 せきりゅうカレー。海上自衛隊潜水艦は広大な太平洋を任務管区として長期航海という厳しい任務と運用が続いています、なにしろ潜水艦は娯楽と云えば食べる事と寝る事、故に潜水艦の食事は例外なく美味しいと云われ、毎週金曜日の海軍カレーはその頂点のひとつ。

 駅膳、ここはJR呉駅の駅ビルにあります一階の駅前食堂兼居酒屋という面持のお店で、潜水艦のカレーと気合を入れて入店しましたが、家庭的なカレーが出されていまして、ハーフサイズとフルサイズを選べます。フルーチェの小鉢が付くのも、せきりゅう伝統という。

 カキフライを、呉に来たという事で追加してみました。家庭的なカレーは何杯でも食べたくなる優しい味わいでしたが、今回はハーフサイズで。こういうのも練習艦隊出航を経て江田島から呉まで進出しましたので時刻は既に夕刻、フルサイズはまた次回ということで。

 せきりゅう、は潜水艦そうりゅう型の8番艦として2017年に竣工しました水中排水量4200tのAIP動力潜水艦です、呉市では海上自衛隊と観光協会が協力し、海軍カレースタンプラリーを実施しており、乗員協力のもとその味わいを正確に再現し提供しています。

 JR呉駅の駅膳-eki-zen、隣が呉駅改札へのエスカレータという正に駅前食堂なのですが、しかし惜しむべくは新型コロナウィルスCOVID-19感染拡大により、夏ごろに閉店してしまったという。潜水艦せきりゅう、は健在ですので何処か味わいを継承してほしいですね。

 ワインを頂きつつ、この日撮影した練習艦隊の写真を見返す、ここは駅向かいの大和温泉物語、ホテルじゃありません。呉駅とは呉線を挟んで向かい側に在りますスーパー銭湯でして、サウナもありますし食堂にカレーを提供しているところ、ホテルじゃありません。

 せとゆきビーフカレー、はつゆき型護衛艦10番艦せとゆき、現在は練習艦に転籍していまして、1980年代に12隻もの多数が建造された護衛艦はつゆき型の数少ない現用艦として活躍しています。此処の名物はしっかりと牛肉を煮込んだビーフカレー、旨みが自慢です。

 海軍カレースタンプラリーにも参加している護衛艦せとゆきカレー、溶け合う程に長時間煮込まれたビーフカレーです。そしてポテトフライが付け合せとして添えられているのも特色ですね。海上自衛隊では曹士はカレーも自分盛り付けで自由にお代わりできるという。

 呉カレースタンプラリーは30店舗が参加していまして、もちろん一日で30杯ものカレーを平らげる人は恐らくいないと思いますが幾度かに分けまして、カレー巡り、自衛艦の方か仕事か地元の方を除けば呉を探訪する方の多くは観光でしょうから、巡るのも楽しそう。

 大和温泉物語。しかしこちらも残念ながら昨年に廃業し閉店してしまったという。カレーの食堂ではなく大和温泉物語そのものが廃業してしまったといいまして、なにしろスーパー銭湯はCOVID-19の風当たりが大きな業種の一つ、ボイラーなどの維持費も実に大きい。

 懐かしの海軍カレー、こういう割には練習艦せとゆき、潜水艦せきりゅう、ともに現役ではないか、と反論があるでしょう、そうではなく練習艦や潜水艦よりも前にカレーのお店の方が無くなってしまった、という事なのですね。コロナ影響、厳しいとはいえここまで。

 広島で今何が起きているか。呉の海軍カレー、練習艦隊出航を2020年に散策しましたカレー店が二つとも閉店という。いや大和温泉物語は設備を継承した他の業者が再開したともいうのですが、改めてCOVID-19自粛機運の飲食業への大きさというものを垣間見た印象でした。

 広島へ旅へ、しかしこう云えないのが緊急事態宣言再発令直前といえるCOVID-19感染第四波の現状です、無理に旅に出ましてもし自分が無症キャリアであった場合にはお店に迷惑が掛かります、自費でPCR検査を旅行一週間前と前日に行うという選択肢はありますが。

 カレーを巡る旅、観光地には厳しい状況ですがCOVID-19変異株N-501は簡単な、つまりマスクと手洗いとアクリル板、こうした感染対策だけでは感染を防ぐ事は不可能なのですよね。もちろん、個室の料理旅館で一人孤独にグルメを、という方式ならば安全なのだが。

 美味しいお店、今は行きつけの馴染みの生活圏内のお店を全力で支えて、こう、一日の全国感染者数が二百や三百程度まで収まるまでは、感染を広げず早期首足させる為の努力こそが、実のところ外食産業と食文化を支える、遠い様で実は最短の対策なのかもしれない。

 COVID-19の感染状況下、なにしろ毎週のように自衛隊行事を撮影していました北大路機関ではなかなかに辛い状況ではあるのですが、まず感染を抑える、その上で遠出する事無く、今できる事をやろう、幸い昨年自粛の頑張りもあって出来る事は多い、こう思うのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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