北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】練習艦隊江田島出航2021(2)帽振れ送る乗艦と空の祝賀飛行(2021-03-13)

2021-09-19 20:00:54 | 海上自衛隊 催事
■空征く祝賀飛行と出航準備
 今年も卒業式は縮小挙行となりましたが、COVID-19猛威振るう中でも粛々と行事の体裁は整え出航へと進んでゆきます。

 江田内の俯瞰風景を広角にて。江田内の壮大な風景、というところですが、てんりゅう船体規模がよくわかります。昔艦内を見学させてもらった事もありますが、少なくない候補生課程修了者が乗艦した場合に充分な艦内容積の余裕はあるのかな、気になってしまう。

 かしま、うらが、てんりゅう。大型護衛艦信仰、という訳ではないのですが、海上自衛隊の任務増大、裏返せば周辺情勢の緊迫化、これに伴い航海期間は長期化するものですから、居住性を考えますと少しでもまともな、そう乗りたくなる護衛艦へ転換するのが望ましい。

 将官艇、かしま左舷に接舷しています。外国訪問の多い練習艦かしま、国家元首の表敬訪問などの接遇機会もあり、将官艇を搭載します。あきづき、むらくも、たちかぜ、が護衛艦隊旗艦であった時代には将官艇が無く、司令官は内火艇で荒天の日には苦労したという。

 祝賀飛行へSH-60K哨戒ヘリコプター3機が飛来しました、小松島航空基地第24航空隊の所属機です。例年は続々と編隊が飛来するのですが昨年はCOVID-19影響により中止、悪天候でも中止されますので、エンジン音にわあっと歓声上げてしまう編隊飛行の飛来です。

 SH-60K哨戒ヘリコプターは海上自衛隊の主力艦載機、対潜戦闘に哨戒飛行と特殊警備隊輸送から軽輸送に対艦ミサイル誘導、対艦ミサイルを搭載しミサイル艇狩りまで成し遂げる高性能機、その分取得費用も高く、あの陸上自衛隊のAH-64D戦闘ヘリコプターより高い。

 ヘリコプター搭載護衛艦の大型化と共に汎用護衛艦は勿論、イージス艦でのヘリコプター運用能力の付与、小型護衛艦と掃海艇を置換えるFFM多機能護衛艦にもヘリコプターが搭載される時代、陸上からも艦上からも運用できますが基本は艦載機として運用されている。

 小月航空基地より飛来したT-5練習機です、海上自衛隊では広範に航空要員養成に用いられる初等練習機ですが、小月航空基地祭以外ではなかなか編隊飛行を観る機会がありません、観艦式にも小月からは参加しませんので江田島基地上空の祝賀飛行は貴重な機会ですね。

 P-1哨戒機が飛行して参りました。厚木航空基地か鹿屋航空基地か、どちらの所属でしょうか。例年はP-3C哨戒機の編隊飛行とともにP-1哨戒機が参加しますが、年々P-1哨戒機の量産は進んでいまして、着実に運用部隊が増えているのはおどろく新鮮さという印象です。

 祝賀飛行と練習艦隊、広角で撮影です。練習艦隊、しかしこの構図に護衛艦や護衛艦転用練習艦の姿が見えないのは、不思議な印象ですね。イージス艦まや竣工により余剰が生まれ、練習艦隊にはこの程ミサイル護衛艦はたかぜ、が練習艦はたかぜ、となりました。

 はたかぜ、はこの艦隊出航の時点で南方に展開していたのですね。護衛艦ゆうぎり、練習艦せとゆき、はたかぜ、と共に2月9日より3月16日まで、第54期部内一般幹部候補生課程修了者を乗艦させ、グアムおよびミクロネシアへ外洋練習航海へと出発しています。

 かしま。基準排水量4050tで満載排水量5400tの練習艦です。装備は76mm単装砲と68式3連装短魚雷発射管2基のみ、あとはシミュレーターのみであり水上戦闘艦の様な勇ましい外見ではありませんが、国家元首の来賓接遇も想定し内装特別公室を設置しています。

 乗艦した新任幹部は甲板上に整列を開始しています、これは登舷礼といいまして、ここから第71期一般幹部候補生課程修了者は近海練習航海へ、第73期飛行幹部候補生課程修了者は外洋練習航海へと向かいます。近海練習航海、日本を一周し治験と交流を深めるもの。

 これは“初級幹部に対し、艦上における訓練作業を通じて遠洋練習航海に連接するために必要な基礎的事項を修得させ、艦内生活への慣熟を図り、初級幹部としての素養を育成し、シーマンシップを体得させるとともに、我が国及び海上自衛隊の現状を理解させる”と。

 うらが、てんりゅう、乗艦が進んでいます。てんりゅう、訓練支援艦なのですが、上部構造物を比較しますと、うらが、てんりゅう、その大きさの違いが端的に見えていますね。訓練支援艦は、しかし近海練習航海の様な一ヶ月半の航海を想定しているのかな、とも。

 練習艦隊司令官石巻 義康海将補を指揮官として出航するこの令和3年近海練習航海は、71期一般幹部候補生課程修了者約160名を含む590名が前半を航海します。江田島発して呉、沖縄と佐世保、大湊から舞鶴と横須賀、呉に戻り阪神基地を経てまた呉、という行程です。

 令和3年近海練習航海は3月13日から4月30日までを前半とし、後半は参加艦を練習艦かしま、せとゆき、とした上で5月11日から5月23日という日程、参加部隊の規模も3隻から2隻となりますので、71期一般幹部候補生課程修了者約160名を含む510名という。

 令和2年度外洋練習航海は第3護衛隊司令濱崎真吾1等海佐を指揮官として護衛艦あけぼの、及び艦載機1機、第73期飛行幹部候補生課程修了者59名を含む240名が参加しています。飛行幹部は航空教育集団隷下に操縦要員教育を受ける為、この航海以降陸に上がる。

 かしま、ゆっくりと前進を始めました。牡蠣筏の並ぶ江田内、この撮影位置は岩風呂山という、ちょっと標高の高い所まで登った所でして、これに備えて一年間、岐阜基地近くの三井山とか撮影機材を担いでの低山登山の訓練を怠らなかった成果が、活かされたのかな。

 うらが、出航始めました。岩風呂山登山、完全装備で頑張ったぜ、と格好よく書きたいところですが、実はそれも途中まで、毎年お世話になています大阪のY様に拾っていただきまして、なんというか、コロナ時代、運動不足になってしまったのは反省しているところ。

 てんりゅう、先行して掃海母艦うらが、という。そして周囲には新任三尉を送り届けた交通船が遊弋しているところ。艦隊は予定時間通りに出航してゆく、二年ほど前に主錨が抜けなくなった旗艦を僚艦が先行して出航した事がありますが、自衛隊は時間厳守なのだ。

 あけぼの出航へ。先程まで山影で見えなかった護衛艦あけぼの、その姿を現しました。岩風呂山、もう少し登れば見える位置なのですが、木立が津久茂瀬戸の航路を隠してしまっていまして、少し考えて、撮影位置を少し下げたこの位置にて陣地変換していたのですね。

 海上自衛隊の小型艦艇と護衛艦あけぼの。江田島出航は毎回撮影位置というものを、今年は此処で来年はあのあたりから撮影してみよう、と考えるのが実に楽しいのですね。私はここ数年、公民館前で撮影していましたが、今年は神社手前の参道から撮影しています。

 江田島、中には墓地の中から、酷いのは墓石を足場にしている方も居ますが、そこまでして撮影する写真に価値はあるのかな、と思ったりします。公民館前は単縦陣を少し斜めから撮影する事になり、真正面となればその立地しかないようですが、一寸それは、なあ。

 高田港、最初の頃はこの当たりで、しかし、いろいろな場所を数時間かけて吟味したところでして、そんな中で美味しい牡蠣と巡り合ったり、呉空襲を視ていたご老人に物凄い経験談を聞いたりしまして、これは撮影ではなく海軍の体験なのだな、考えたものでしたね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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豪州原潜導入決定【2】2054年の挑戦とアタック級潜水艦400億ドル契約破棄の国際問題化

2021-09-19 18:29:07 | 国際・政治
■特殊過ぎた潜水艦要求の行く末
 日曜日の第二記事はグルメ特集を予定していましたが、本日は昨日に続き豪州潜水艦原潜発表の分析第二回を掲載しましょう。そうりゅう型が選外となったのは幸いだったのか。

 シュフラン級潜水艦オーストラリア仕様、これがアタック級潜水艦なのですが、シュフラン級潜水艦は調べますと簡単に分かるのですけれども、原子力潜水艦です、フランス海軍将来攻撃型原潜として開発されたものなのですね。フランスではこれを通常動力潜水艦に再設計するという方式で、オーストラリアの求める潜水艦が完成すると契約しました。

 原子力潜水艦を通常動力潜水艦に改造する、これはトラックを普通乗用車に改造する様なものです、頑張れば車高を低くしてエンジンをキャブオーバーからボンネット式に切替えキャビンと車体を再設計した上で、と出来そうに見えますが、無理をせずに、乗用車を買った方は早いですよね。これほどに通常動力潜水艦と原子力潜水艦は構造が別物なのです。

 通常動力潜水艦は水中で動力をバッテリーに頼ります、その為に充電しなければなりませんが、充電する為にはディーゼル発電機が必要です、しかし水中でディーゼル発電機は動きません、酸素が無ければ燃焼しないからなのです。液体酸素や液体酸素を積む方式があり、これをAIP非大気依存推進方式というのですが、これは出力が限られてしまいます。

 ディーゼル発電機を稼働させる為には空気が必要ですので、スノーケルを海面上に伸ばして空気から酸素を補給します、他方で原子力潜水艦となりますと原子炉は酸素が無くとも熱を発し蒸気タービン方式で推進力を得られます、乗員の呼吸に用いる酸素も海水を電気分解すれば良い、通常動力潜水艦と電子力潜水艦の最大の違いは空気吸排気系統の有無だ。

 アタック級潜水艦がシュフラン級攻撃型原潜の通常動力型、という決定を聞きました際に驚かされました、将来的にアタック級後期型を原子力推進方式としてシュフラン級をそのままノックダウン生産するのではないか、という憶測も、南半球非核化条約であるラロトンガ条約さえなければあり得るのではないか、とさえ、考えられたほどなのですけれども。

 2054年までに戦力化完了。SFの話ではなく、アタック級潜水艦の進捗度合いからここまで遅れるという報道がオーストラリア国内で衝撃と共に伝えられました。1954年に海上自衛隊が発足しましたので自衛隊創設100周年観艦式には間に合うのか、という印象ですが、上記の通り、シュフラン級通常動力潜水艦再設計とオーストラリア建造計画は遅れました。

 2054年というのは遅れ過ぎだ、ということで2021年に入りオーストラリア政府はアタック級潜水艦の建造中断を決定します。そしてオーストラリア政府はアタック級潜水艦に代わる“プランB”というものを示唆してゆきました。色々な憶測をしましたが、なにしろラロトンガ条約という“常識”がありますので、“日本核武装”“日米安保破棄”と同じ響き。

 214型潜水艦のドイツからの取得、オーストラリアABC報道でドイツ製AIP潜水艦の導入案が示され始めたのは初夏の頃でした。ドイツの潜水艦は素晴らしく隣国インドネシアも209型潜水艦を採用しています。もっとも、オーストラリア海軍としては北方の脅威を睨んだ場合、自国数倍の人口と経済成長を続けるインドネシアは警戒の対象でもあるのですが。

 潜水艦計画、上掲の通り、オーストラリア海軍潜水艦計画は、外国製でも国内建造でもまともな潜水艦を必要としている海軍と、何が何でも潜水艦建造という雇用を必要としているオーストラリア政府、潜水艦建造能力の低いASU豪州潜水艦公社と、オーストラリア周辺の広大過ぎる海域を防衛するという特殊な運用環境が、滅茶苦茶に複雑怪奇に絡み合う。

 214型潜水艦のドイツからの取得、海軍が求めているものなのでしょうか、オーストラリアで建造する為に技術移転と工員教育に時間を割くのではなく、ドイツのティッセンクルップ社が建造した214型潜水艦をそのままドイツから輸入するという構想です。しかし、ティッセンクルップ社からは具体的な発表は無く、新聞のアドバルーン記事と受け取れます。

 コリンズ級潜水艦延命に46億ドル。アタック級潜水艦の建造遅れと共に初夏の頃に奉じられたものにこんなものがありまして、“プランB”とは此れではないかとの憶測もできました。46億ドルといいますと日本の潜水艦そうりゅう型ですと5隻が建造できる規模ですが、この予算を投じて6隻あるコリンズ級潜水艦を延命し、建造の遅れを補う構想が出ました。

 コリンズライフオブタイプエクステンション、LOTE計画として46億ドルを投じてコリンズ級潜水艦6隻を各10年間艦齢延長させるという構想です。しかし、10年艦齢延長させても、とてもではありませんが2054年には間に合いません、根本的な問題は現時点でも2054年まで要する、また延長に関わるASUの維持費など予算の増大超過はふくみません。

 アタック級潜水艦潜水艦建造前倒しへ、今年七月にはオーストラリア海軍や与野党議員からモリソン首相へ、アタック級潜水艦の建造を早めるべくフランスのナーバルグループへ圧力をかけるよう要求が突き付けられています、ただ、現実として示されたものは、突然9月に入り、アメリカとイギリスからの原子力潜水艦導入という“プランB”の発動でした。

 ナーバルグループの衝撃は驚きと云うだけでは言い表せません、500豪億ドル、という巨額の発注がその数年後に突如として中断したのです。フランスのGDPは2兆7000億ドルですので、米ドル換算400億ドルというものは国家プロジェクトのなかでも最大規模のもの、この衝撃はフランス政府をも揺さぶるものとなりました、これも当然と云えば当然という。

 フランスが駐米大使と駐豪大使を召還。17日にフランスのルドリアン外相が突然の発表です、これはマクロン大統領がフランスによるアタック級潜水艦調達中断に激怒したためといい、一方、駐英大使については原子力潜水艦導入計画には大きく関与していないため見送られた。18日にはフランスがEU欧州連合と豪州の通商関係見直しに言及、深刻化する。

 マクロン大統領の激怒に対して、アメリカ政府はホワイトハウス当局者の発言が報道され、今回の原子力潜水艦導入についてはフランス当局との意見交換を行った上での発表としています、しかしフランス外務省が報道関係者に語ったところでは、アメリカからのこうした調整は行われていないとして、400億ドル規模の計画が成約後数年を経て反故に怒りだ。

 ユーロファイターの場合は。ナーバルグループは、恐らくオーストラリア政府に対して損害賠償を請求する事となるでしょう、この規模ですが、一例として2014年にドイツ政府がユーロファイター戦闘機37機の調達をキャンセルした場合の損失保証金要求が参考となるのかもしれません、この場合は10億ドルがエアバスディフェンスからドイツへ請求された。

 ユーロファイター戦闘機37機調達キャンセルは、180機の調達計画から37機がキャンセルされた事例、調達費用の40%が要求されたかたちですので、この例に従えばナーバルグループはオーストラリア政府へ40%に当る200億ドル、邦貨換算で2兆円の損害賠償請求を行うのでしょうか、この金額はオーストラリアの年間国防費よりも高額となっています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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