■苦い良薬を誰が飲ませるか
バイデン大統領はアフガニスタン撤退が安全に終わったとして自画自賛した、こうした報道がロイターやAFPにCNNにおいて流れまして少々残念な気持ちになりました。
アフガニスタン撤退による政府崩壊、バイデン政権の判断に危うさを感じる点は幾つもありますが、極めて大きな影響を及ぼす一つの要素は欧州諸国への影響です。それは、結局アメリカは、ユニラテラリズムの認識を脱却できずにいるのではないか、という危惧です。単極主義、ユニラテラリズムという発想は2000年代、ブッシュ政権時代に指摘された。
相談しない国アメリカ、バイデン政権の施策は2000年代にテロとの戦いを始めた時代まで回帰しているのではないか、少なくともアフガニスタンの政権崩壊が当初意図した緩慢なアフガニスタン政府崩壊を見込んだタリバーンの反撃という甘いものではなく、アメリカが撤退後、どれだけアフガニスタン政府が持ちこたえるかという認識さえ甘かった訳です。
想定していた事だ、こう考えるならば大問題です、バイデン大統領はガニ大統領との首脳会談において、いざと云う時には支援を惜しまないと表明したのですが、結果はこの通り。約束を反故にしたのであるか、あの状況でさえバイデン大統領は充分な支援を行った結果だという認識の相違があり、どう考えても国際関係において好意的結果はもたらしません。
ユニラテラリズムという発想は過去のものなのかもしれませんが、バイデン政権がアフガニスタン撤退を、情勢悪化後には修正する柔軟さも、これにより生じる危惧されるべき結果への危機管理も、アメリカにとっての戦争は終わった、この名のもとに切り捨てた事で、ISAF国際治安支援任務として有志連合を組んだ諸国への影響さえ事業評価できていない。
相談しない国アメリカ、一国主義と批判されたユニラテラリズムは裏をかえっせば国際協調の上でその先頭に立つという、第二次大戦以来のアメリカの世界政治における基本方針から、合意形成ではなくその手間を省くと共に、有志連合に加わる国だけを以て対応する指針への変遷へ危惧を含めたものとなっています。実際アフガン撤退がこれに当てはまる。
2001年のアフガニスタン空爆と介入は当初、有志連合の志というものを共有していた筈です、重大な方針変更があるならば相談が為されて然るべきで、しかし、撤退が重大な結果を及ぼした際の所謂“プランB”について、日本は自衛隊を治安任務に派遣していない為仕方ないにしても、せめてNATO主要国、特にイギリスに相談しなかった事実は、大きい。
単極の名の通りユニラテラリズム、これは有志連合として理念に合致する諸国での協同を多国間合意に代えて国際慣行へ反映させるもので、有志連合を組む事は一見国際協調を思わせる概念ではありますが、その提唱者としての地位を不動とする事は、言い換えれば単なる国際協調の否定に他なりません。そして有志に参画しない諸国の意見は無視され得る。
有志連合、これは賛同する諸国のみで形成されるものであり、時として、アメリカの暴走、と表現された。オバマ政権の際に一時的に国際協調路線への回帰を意図的に進めた事で、ユニラテラリズムという概念は過去のものとなりましたが、アメリカ世論の反動は、結果的に極めて独自の外交政策を展開するトランプ政権を生む支持の原動力となっています。
バイデン政権は、アメリカは還ってきた、としましてトランプ政権時代の一種ユニラレタリズム的なアメリカからの脱却を明確に示していた筈なのですが、結果的にトランプ政権では、アメリカ一国主義的な大統領方針をアメリカが世界の中心として置く視点から大統領を補佐するスタッフが支え、結果的に国際公序の牽引者とした実情とは対照的といえる。
日本は日本だからアメリカがどうなろうと関係ない、こう思われるかもしれませんが、アメリカは確実に西太平洋において新しい有志連合を考えています、これは中国が推し進める地域秩序、海洋閉塞や人権よりも集団利益を重視し軍事力による領域変更を厭わない新秩序に対し、自由と公正という既存の国際秩序を守る有志連合を組もうとしているのです。
安保条約の関係がある以上、好むと好まざるとを問わず日本は日太平洋に位置する以上、この地域ではアメリカと有志連合を組むほかないではないか、こう思われるかもしれませんが、そう簡単ではありません、何故ならば有志連合に日米だけで対応できる水準ではなく、少なくとも欧州NATO諸国の参画やインドとアフリカ諸国の賛同が必要なのですから。
バイデン政権に二期目があるのかはさておき、アメリカ一国の国力限界を示したのもアフガニスタン撤退でした、すると有志連合にアメリカは牽引するのではなく依存する度合いを深める事を同時に意味します。バイデン大統領はアフガン撤退を成功裏に終えたと自画自賛します、しかし良薬は口に苦し、現実を伝える事も同盟国日本の重要な役割といえる。
良薬は口に苦し、本来は大統領を支える補佐官や国務長官と国防長官の責務です、しかしバイデン大統領は有色人種や女性活用には熱心ですが、トランプ大統領程、職を賭して大統領に提言する補佐官や長官が少ないように思えてなりません。そしてバイデン大統領のビジョンが、アメリカ第一主義としたトランプ大統領ほど明確ではなく、わかりにくい。
菅総理大臣、日本として期待するのは、総裁選不出馬を決断しコロナ対策に首相の座を掛けて最後まで挑む、なにか終戦時の鈴木貫太郎総理大臣を思い出させる総理への期待です、撤退は賛同する、しかしアフガン撤退が情勢悪化後も堅持したのは失敗だったのではないか、この視点を、間もなく総理の座を降りる故の覚悟と共にオンライン会談ででも伝えられれば。
同盟国の首相といえども苦い良薬を呑ませる事は、感謝が表面上伝えられても禍根は残るでしょう、しかし、首相任期が次の衆院選までという明確な時機だからこそ、今後十年二十年続くかもしれない、相談しない国アメリカ、有志連合への不信、こういうものをしがらみ無く断ち切る事が出来るのかもしれません。簡単では無いが、こう、おもうのですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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バイデン大統領はアフガニスタン撤退が安全に終わったとして自画自賛した、こうした報道がロイターやAFPにCNNにおいて流れまして少々残念な気持ちになりました。
アフガニスタン撤退による政府崩壊、バイデン政権の判断に危うさを感じる点は幾つもありますが、極めて大きな影響を及ぼす一つの要素は欧州諸国への影響です。それは、結局アメリカは、ユニラテラリズムの認識を脱却できずにいるのではないか、という危惧です。単極主義、ユニラテラリズムという発想は2000年代、ブッシュ政権時代に指摘された。
相談しない国アメリカ、バイデン政権の施策は2000年代にテロとの戦いを始めた時代まで回帰しているのではないか、少なくともアフガニスタンの政権崩壊が当初意図した緩慢なアフガニスタン政府崩壊を見込んだタリバーンの反撃という甘いものではなく、アメリカが撤退後、どれだけアフガニスタン政府が持ちこたえるかという認識さえ甘かった訳です。
想定していた事だ、こう考えるならば大問題です、バイデン大統領はガニ大統領との首脳会談において、いざと云う時には支援を惜しまないと表明したのですが、結果はこの通り。約束を反故にしたのであるか、あの状況でさえバイデン大統領は充分な支援を行った結果だという認識の相違があり、どう考えても国際関係において好意的結果はもたらしません。
ユニラテラリズムという発想は過去のものなのかもしれませんが、バイデン政権がアフガニスタン撤退を、情勢悪化後には修正する柔軟さも、これにより生じる危惧されるべき結果への危機管理も、アメリカにとっての戦争は終わった、この名のもとに切り捨てた事で、ISAF国際治安支援任務として有志連合を組んだ諸国への影響さえ事業評価できていない。
相談しない国アメリカ、一国主義と批判されたユニラテラリズムは裏をかえっせば国際協調の上でその先頭に立つという、第二次大戦以来のアメリカの世界政治における基本方針から、合意形成ではなくその手間を省くと共に、有志連合に加わる国だけを以て対応する指針への変遷へ危惧を含めたものとなっています。実際アフガン撤退がこれに当てはまる。
2001年のアフガニスタン空爆と介入は当初、有志連合の志というものを共有していた筈です、重大な方針変更があるならば相談が為されて然るべきで、しかし、撤退が重大な結果を及ぼした際の所謂“プランB”について、日本は自衛隊を治安任務に派遣していない為仕方ないにしても、せめてNATO主要国、特にイギリスに相談しなかった事実は、大きい。
単極の名の通りユニラテラリズム、これは有志連合として理念に合致する諸国での協同を多国間合意に代えて国際慣行へ反映させるもので、有志連合を組む事は一見国際協調を思わせる概念ではありますが、その提唱者としての地位を不動とする事は、言い換えれば単なる国際協調の否定に他なりません。そして有志に参画しない諸国の意見は無視され得る。
有志連合、これは賛同する諸国のみで形成されるものであり、時として、アメリカの暴走、と表現された。オバマ政権の際に一時的に国際協調路線への回帰を意図的に進めた事で、ユニラテラリズムという概念は過去のものとなりましたが、アメリカ世論の反動は、結果的に極めて独自の外交政策を展開するトランプ政権を生む支持の原動力となっています。
バイデン政権は、アメリカは還ってきた、としましてトランプ政権時代の一種ユニラレタリズム的なアメリカからの脱却を明確に示していた筈なのですが、結果的にトランプ政権では、アメリカ一国主義的な大統領方針をアメリカが世界の中心として置く視点から大統領を補佐するスタッフが支え、結果的に国際公序の牽引者とした実情とは対照的といえる。
日本は日本だからアメリカがどうなろうと関係ない、こう思われるかもしれませんが、アメリカは確実に西太平洋において新しい有志連合を考えています、これは中国が推し進める地域秩序、海洋閉塞や人権よりも集団利益を重視し軍事力による領域変更を厭わない新秩序に対し、自由と公正という既存の国際秩序を守る有志連合を組もうとしているのです。
安保条約の関係がある以上、好むと好まざるとを問わず日本は日太平洋に位置する以上、この地域ではアメリカと有志連合を組むほかないではないか、こう思われるかもしれませんが、そう簡単ではありません、何故ならば有志連合に日米だけで対応できる水準ではなく、少なくとも欧州NATO諸国の参画やインドとアフリカ諸国の賛同が必要なのですから。
バイデン政権に二期目があるのかはさておき、アメリカ一国の国力限界を示したのもアフガニスタン撤退でした、すると有志連合にアメリカは牽引するのではなく依存する度合いを深める事を同時に意味します。バイデン大統領はアフガン撤退を成功裏に終えたと自画自賛します、しかし良薬は口に苦し、現実を伝える事も同盟国日本の重要な役割といえる。
良薬は口に苦し、本来は大統領を支える補佐官や国務長官と国防長官の責務です、しかしバイデン大統領は有色人種や女性活用には熱心ですが、トランプ大統領程、職を賭して大統領に提言する補佐官や長官が少ないように思えてなりません。そしてバイデン大統領のビジョンが、アメリカ第一主義としたトランプ大統領ほど明確ではなく、わかりにくい。
菅総理大臣、日本として期待するのは、総裁選不出馬を決断しコロナ対策に首相の座を掛けて最後まで挑む、なにか終戦時の鈴木貫太郎総理大臣を思い出させる総理への期待です、撤退は賛同する、しかしアフガン撤退が情勢悪化後も堅持したのは失敗だったのではないか、この視点を、間もなく総理の座を降りる故の覚悟と共にオンライン会談ででも伝えられれば。
同盟国の首相といえども苦い良薬を呑ませる事は、感謝が表面上伝えられても禍根は残るでしょう、しかし、首相任期が次の衆院選までという明確な時機だからこそ、今後十年二十年続くかもしれない、相談しない国アメリカ、有志連合への不信、こういうものをしがらみ無く断ち切る事が出来るのかもしれません。簡単では無いが、こう、おもうのですね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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