北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

核シェアリング論争(1):核シェアリングが核廃絶の通過点,日本維新の会馬場代表ロイターインタビューで語る

2023-07-22 20:23:46 | 国際・政治
■核シェアリングを提唱!
 核武装に関する議論が公然と野党第一党を狙う政党の代表から聞かれるようになったというのは、時代も変わったなあというところなのでしょうね。

 ロイター通信のロイターインタビューにおきまして“野党第一党を伺う勢いの日本維新の会・馬場伸幸代表はロイターとのインタビューで、党として政策提言した「核共有(核シェアリング)」の議論を進めるべきとの考えを改めて示した。”という、かなり驚くべき内容が示されていました。翌日の朝刊トップ独占か、と思うとそうでもなく逆に驚いたが。

 核兵器、この驚くべき内容がロイター通信により掲載されたのは2023年6月29日5:43 午後となっていまして、“核共有は拡大抑止を強化する安全保障政策の1つだが、岸田文雄首相が目指す核廃絶につながる”という独自の視点で政策論を展開しています。もっとも日本維新の会は2022年にもニュークリアシェアリングを政府に提案したとしています。

 ニュークリアシェアリング、“馬場氏はロイターに対し、核拡散防止条約(NPT)で保有を認められた5大国が他国と核を共有できるようにすれば、「新しく核を作らせないという道に進むと思う」と説明”したとのことでした。もっとも、核兵器を使える国を一つでも多くしてゆく態勢が核廃絶に進むのかについては個人的に賛同できないところが有ります。

 この上で“「核シェアリングを議論することが、核廃絶へ向けた1つの通過点になる」と指摘。「できれば、日米韓で(議論を)やったほうがいい」”とロイターインタビューは続いています。ニュークリアシェアリングについて誤解があるなあ、と感じる。もっとも馬場代表は核シェアリングと表現、ニュークリアシェアリングではないのかもしれない。

 ニュークリアシェアリングと米英ポラリス交換協定を誤解しているのではないか、と。ただ、ポラリス交換協定を日本とアメリカで結ぶ場合は、予算面だけで技術的や開発能力は別としても日本自身が核開発を行う構図が必要となり、恐らく日本世論として受け入れる余地はないでしょう。なにより国内で核実験場を誘致してくれそうな自治体がありません。

 ポラリス交換協定、日本維新の会が提唱しているシェアリング、核抑止力として機能する核兵器の共有はニュークリアシェアリングではなく、大陸間弾道弾の運搬技術を整備しない代わりにアメリカに依存する、という方式を用いることから、戦略ミサイル原潜の搭載核兵器のアメリカ製装備への依存を交換と言い換えたこの方式が当てはまるでしょう。

 冷戦時代のNATO以外ではニュークリアシェアリングという言葉は存在しませんので、NATOのニュークリアシェアリングを連想して日本維新の会では構想したのでしょう日本型の核抑止について。もともとニュークリアシェアリングは策源地攻撃に核弾頭を用いるのではなく、自国内での使用に限定して提供された核兵器を使用するという前提です。

 西ドイツを例に挙げるとわかりやすいのですが、フルダギャップなど、一カ所の重要な地形をソ連軍の戦車軍団に突破された場合、パリやロッテルダダムなど、アメリカから増援部隊を受け入れる為に重要な港湾都市まで一気にソ連軍に占領されてしまう可能性がありました、すると通常の機甲師団で阻止できない場合、究極の選択が必要になるわけです。

 戦術核兵器を西ドイツ国内のどこかで使用しなければNATO全体が敗北しかねない、という状況に陥ったと仮定します。仮定といっても実際にオペレーションリサーチにより恐らく使用する場所をかなり絞り込んでいたようでしが、ここにNATOが核攻撃を行う場合、恐らく少なくない西ドイツ国民が核攻撃の巻き添えを強いられるのです。

 NATOが西ドイツに核攻撃を行えば西ドイツ国民とNATOの関係が悪化する、だからこそNATOはニュークリアシェアリングとして西ドイツ軍と核兵器を共有させる構図をとりまして使いたいときに使わせるのではなくNATOが核兵器を西ドイツ国内で使用する必要が有るとした場合にドイツ人の生命を左右する問題はドイツ人に、という構図なのだ。

 ニュークリアシェアリングは、ソ連軍がボンやベルリンを核攻撃した際に報復にモスクワを攻撃させるための核兵器を供与する、というものではありません。他方で自衛隊の防衛力を見ますと、北海道が全域執られて東北地方から東京に侵攻されるような戦略機動は、ロシア軍には不可能ではないか、と思うのです。中国も九州全域を押えて東京、は遠い。

 東京を核攻撃させない為の抑止力としてニュークリアシェアリング、というならばモスクワと北京に平壌を射程に収める核兵器が必要となりまして、これはもうニュークリアシェアリングの領域を超えているように思うのです。それならば日本維新の会としては小手先議論ではなく、日本の核武装を真剣に考える、と改めて公約してははどうかと、思うのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】祇園祭二〇二三,函谷鉾を四条通にて見上げつつ思い返す先週の前祭り宵山の物凄い混雑

2023-07-22 14:11:21 | 日記
■函谷鉾佇む祭りの四条通
 函谷鉾が京都の中心部である四条通に鎮座している様子は近代都市と歴史都市の分水嶺に栄える京都は夏の風物詩とおもう。

 宵山が、凄かった。いや今夜も宵山でしょうと言われるかもしれませんが、前祭宵山、三連休の日曜日に宵山に行ってみたのですが、いやもう、ある程度は予想していたのですがその先週の宵山は、凄かったというか、昔はあんなに混雑しませんでしたよね。

 舞鶴展示訓練の前日であった昨年は、COVID-19に引っかかると折角の展示訓練が大変な事になるので、ちょっとだけ撫でる程度の祇園祭でした、祇園祭は2019年以来というけれども舞鶴展示訓練は2014年以来、ちょっと優先度を考えると祇園祭は、ねえ、と。

 昔は宵山、夕方に9系統バスでそろそろ交通規制が始まるかなという頃合いに四条通に入りまして、なにしろ嵐山の方は未だ明るいですから東山の峰々をビルの谷間に山鉾を撮影して、そして路地に一つ一つ撮影へ、とカメラを片手に散策していたものでした。

 四条烏丸の交差点を横断するのに10分近く掛かった、それ程混雑していた。先週の宵山はそんな感じです、普段なら10分あれば四条通から五条通りまで行けてしまう程の時間ですが、要するにそれだけ人口密度が凄くて危険な程に歩ける訳が無かったという。

 カメラバッグから望遠レンズを取り出して付け替える、なんてことができる訳ではなく、いや人に触れてレンズに他人の脂分がついてしまうような人口密度でしたので、狭い路地を抜けて迂回に迂回を、迂回路も混雑していたけれども、なんとか長刀鉾は撮った。

 山鉾巡行の当日は、行きたかったけれども正直なところお仕事が立て込んでいて、ちょっと勿体ない事をしたとは思う。けれども祇園祭は期間が長いものですから、行ける時にちょっと散策する、こういう愉しみ方が町衆に支えられた祭事故の巡り方なのかもしれない。

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ウクライナ情勢-ドニエプル川ロシア軍を阻むロシア軍流失地雷とケルチ海峡大橋代替交通手段の揚陸艦

2023-07-22 07:00:21 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 自衛隊の地雷対策をもう少し進めなければなりませんが今回のロシア軍の一件は自業自得と思う。

 ドニエプル川ウクライナ軍渡河に対しロシア軍は意図せぬ地雷原に苦戦している、7月9日付ISWアメリカ戦争研究所が戦況報告として発表しています。ウクライナ軍の渡河作戦は小規模ではあるものの、車両の渡河も行われており、たいして決して大兵力ではないウクライナ軍をロシア軍が撃退できない背景には自業自得的な地雷の問題が。

 カホフカダム破壊によりロシア軍はこの地域に広大な洪水を引き起こしていますが、この洪水はロシア軍自身が敷設した地雷原をも押し流し、特に押し流された地雷の位置が不明となることからロシア軍自身が地雷被害を受け、前進できない状況に陥っているという。また洪水により放棄したロシア軍陣地へ地雷が流れ込む状況も無視できない。

 ロシア軍は洪水による浸水地域へ水が引いたことを受け再度陣地展開しようとしたところでの地雷被害や、またウクライナ軍が無傷で確保した支流にかかるアントノフスキー橋へ向かう途上に流出地雷原の被害を受けるなど、ドニエプル川の東岸の低い地域での地雷に悩まされ、特に敢えて濃い密度で敷設した地雷原が裏目に出ているようです。
■臨時情報-ウクライナ情勢
 黒海艦隊の揚陸艦はミサイル攻撃により喪失が有り余裕はないはずなのですが元々の数が多いという事か。この点わが国は、と考えてしまう。

 ロシア軍はケルチ海峡大橋の渋滞解消へ戦車揚陸艦2隻をフェリーとして派遣している、ロシア運輸省の要請に基づくもので、ロシア海軍のマキシムルイクロフ司令官は11日に発表しました。ケルチ海峡大橋はウクライナ空軍によるストームシャドウ巡航ミサイル攻撃を受け修理が行われており、交通は損害を受けなかった部分に限定されている。

 戦車揚陸艦は軍需輸送に加え民需輸送としても利用されているとのこと。ロシア軍は重要橋梁への防空火器配備を強化していますが、ステルス性に配慮された形状を採用するストームシャドウミサイルは、防空システムを突破する事例が多いもよう。戦車揚陸艦は車両輸送能力はありますが同じ大きさのフェリーよりも車両輸送力は限定されます。

 ただ、ストームシャドウミサイルは弾頭威力の限界から橋梁そのものを倒壊させる威力はありません。ケルチ海峡大橋は路面を貫徹し橋脚部分を破壊していますが、倒壊していないために修理可能となっており、ウクライナ軍はクリミア大橋を破壊した際のような高威力の装備、無人艇か特殊部隊攻撃、これらを用いなければ状況はかわりません。

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