■■■防衛フォーラム■■■
中国の軍事的脅威に直面しているオーストラリアは抜本的な国防戦略の大転換に取り組むようです。
オーストラリア国防省は4月24日、国防戦略見直しに関する青書を発表しました。この110ページからなる国防戦略見直しの主眼は、戦車や装甲車を削減しミサイルを増強する、という現在の、中国によるインド太平洋地域における安全保障環境の軍事力による変更、という2022年12月版日本の国家安全保障戦略と非常によく似た内容となっています。
国防戦略見直し、特に強調されているのは、現在のオーストラリア軍が従来型戦闘を念頭とした陸海空軍戦力の均衡に留意している点であり、従来型戦闘に基づく戦力整備そのものが時代遅れである、と指摘され、特にオーストラリアへ軍事的脅威が及ぶ以前の防衛力が整備されていても、北部に攻撃が加えられた場合の無防備という点が指摘されている。
国防戦略見直しでは必要な施策に、海上および水中での警戒監視用無人機、統合目標指示能力強化、長距離精密攻撃兵器、水陸両用作戦能力、海上での接近阻止領域拒否への海上戦力、遠征航空作戦能力とデータリンク能力の一元化、統合型防空及びミサイル防衛システム、遠征作戦部隊の兵站能力、戦域指揮能力、北部地域の基地間ネットワークを挙げた。
■自走砲と装甲戦闘車
正式契約前とはいえ少々無理が在ったような装甲車両調達計画が下方修正されるとともにリソースを別の装備に集中するという。
オーストラリア軍は国防政策の転換を受け装甲車両の調達計画などへ大規模な修正を行う計画です。具体的には装甲戦闘車の調達計画縮小と自走榴弾砲の増強計画などが示されており、他方で既に運用している主力戦車や調達を開始した偵察車両については縮小の計画はなく、多用途ヘリコプターと戦闘ヘリコプターの調達も予定通り行うもよう。
装甲戦闘車調達計画を450両から129両へ、LAND400PHASE3プログラムとして現在計画しているM-113後継装甲戦闘車調達計画、候補として韓国のK-21装甲戦闘車とドイツのリンクス装甲戦闘車のどちらかが選定される計画は、当初計画よりも三分の一以下の調達となり、機械化部隊は戦車と1:1程度の最小限度の調達計画に抑えられるとのこと。
自走榴弾砲はこれまでになかった装備体系として現在韓国のハンファディフェンス社製K-9自走榴弾砲を調達が決定していますが、LAND8116PHASE2として増強予定であった30両のK-9自走榴弾砲調達オプションがキャンセルされることとなります。また直接言及はありませんが、ハンター級フリゲイトの建造についても再検討が予定されています。
■ロールスロイス製原子炉
原子力潜水艦については予想できた通りです。
オーストラリア海軍は計画する原子力潜水艦の原子炉にロールスロイス製原子炉を採用します。これは3月13日、ロールスロイスサブマリナース社が発表したもので、AUKUS英米豪参加国間協定の一環として提供されるもの。ロールスロイスサブマリナース社は過去60年間にわたりイギリス海軍用原子力潜水艦用原子炉製造の実績があります。
ロールスロイス製原子炉を採用、オーストラリア海軍が導入する原子力潜水艦は当初、アメリカのヴァージニア級攻撃型原潜を導入するとしていました、これはこの発表の直前、2023年3月9日にサンディエゴにおいて開かれたアルバニージー豪首相とスナク英首相、バイデンアメリカ大統領との共同声明にて3隻のヴァージニア級導入が発表されている。
ヴァージニア級攻撃型原潜を導入する決定まで、オーストラリアの潜水艦建造計画は二転三転を繰り返し、当初2020年代に一番艦竣工という計画は大幅に遅れています、結局原子力潜水艦を、オーストラリアの1950年代からの反原子力政策を覆し導入が決定しましたが、2030年代初頭の竣工計画とイギリス製原子炉の問題に影響がないのか、関心事です。
■NASAMS配備開始
こちらは既に開始された装備に関する時事的な話題ですがこれまで無かった装備体系という。
オーストラリア陸軍はNASAMS地対空ミサイルを受領し第110防空砲兵大隊へ配備を開始しました。オーストラリア軍は広い国土に対し広域防空システムを保有しておらず、近年の巡航ミサイル脅威や無人航空機による片道攻撃等に対する防衛力を欠いており、NASAMSを新地対空ミサイルとして決定したものの受領まで時間を要していました。
NASAMSはアメリカのレイセオン社とノルウェーのコングスベルク社が共同開発したもので、AIM-120-AMRAAM空対空ミサイルを地上発射型としたもので射程は25㎞以上あり、AN/MPQ-64レーダーにより索敵し、AMRAAMそのものはアクティヴレーダー誘導方式による撃ちっ放し性能を有するため多目標へ対応し易く、高度に自動化されています。
広域防空ミサイルを漸く配備したオーストラリアではありますが、北朝鮮ミサイル危機を契機として弾道ミサイル防衛の必要性が提唱され、特にその後の中国との軍事対立を背景に中国ロケット軍が大量に保有する壴距離弾道ミサイルの脅威へ対応する能力が切迫して求められています、しかしNASAMSにはそういった能力は無く、別のミサイルが必要だ。
中国の軍事的脅威に直面しているオーストラリアは抜本的な国防戦略の大転換に取り組むようです。
オーストラリア国防省は4月24日、国防戦略見直しに関する青書を発表しました。この110ページからなる国防戦略見直しの主眼は、戦車や装甲車を削減しミサイルを増強する、という現在の、中国によるインド太平洋地域における安全保障環境の軍事力による変更、という2022年12月版日本の国家安全保障戦略と非常によく似た内容となっています。
国防戦略見直し、特に強調されているのは、現在のオーストラリア軍が従来型戦闘を念頭とした陸海空軍戦力の均衡に留意している点であり、従来型戦闘に基づく戦力整備そのものが時代遅れである、と指摘され、特にオーストラリアへ軍事的脅威が及ぶ以前の防衛力が整備されていても、北部に攻撃が加えられた場合の無防備という点が指摘されている。
国防戦略見直しでは必要な施策に、海上および水中での警戒監視用無人機、統合目標指示能力強化、長距離精密攻撃兵器、水陸両用作戦能力、海上での接近阻止領域拒否への海上戦力、遠征航空作戦能力とデータリンク能力の一元化、統合型防空及びミサイル防衛システム、遠征作戦部隊の兵站能力、戦域指揮能力、北部地域の基地間ネットワークを挙げた。
■自走砲と装甲戦闘車
正式契約前とはいえ少々無理が在ったような装甲車両調達計画が下方修正されるとともにリソースを別の装備に集中するという。
オーストラリア軍は国防政策の転換を受け装甲車両の調達計画などへ大規模な修正を行う計画です。具体的には装甲戦闘車の調達計画縮小と自走榴弾砲の増強計画などが示されており、他方で既に運用している主力戦車や調達を開始した偵察車両については縮小の計画はなく、多用途ヘリコプターと戦闘ヘリコプターの調達も予定通り行うもよう。
装甲戦闘車調達計画を450両から129両へ、LAND400PHASE3プログラムとして現在計画しているM-113後継装甲戦闘車調達計画、候補として韓国のK-21装甲戦闘車とドイツのリンクス装甲戦闘車のどちらかが選定される計画は、当初計画よりも三分の一以下の調達となり、機械化部隊は戦車と1:1程度の最小限度の調達計画に抑えられるとのこと。
自走榴弾砲はこれまでになかった装備体系として現在韓国のハンファディフェンス社製K-9自走榴弾砲を調達が決定していますが、LAND8116PHASE2として増強予定であった30両のK-9自走榴弾砲調達オプションがキャンセルされることとなります。また直接言及はありませんが、ハンター級フリゲイトの建造についても再検討が予定されています。
■ロールスロイス製原子炉
原子力潜水艦については予想できた通りです。
オーストラリア海軍は計画する原子力潜水艦の原子炉にロールスロイス製原子炉を採用します。これは3月13日、ロールスロイスサブマリナース社が発表したもので、AUKUS英米豪参加国間協定の一環として提供されるもの。ロールスロイスサブマリナース社は過去60年間にわたりイギリス海軍用原子力潜水艦用原子炉製造の実績があります。
ロールスロイス製原子炉を採用、オーストラリア海軍が導入する原子力潜水艦は当初、アメリカのヴァージニア級攻撃型原潜を導入するとしていました、これはこの発表の直前、2023年3月9日にサンディエゴにおいて開かれたアルバニージー豪首相とスナク英首相、バイデンアメリカ大統領との共同声明にて3隻のヴァージニア級導入が発表されている。
ヴァージニア級攻撃型原潜を導入する決定まで、オーストラリアの潜水艦建造計画は二転三転を繰り返し、当初2020年代に一番艦竣工という計画は大幅に遅れています、結局原子力潜水艦を、オーストラリアの1950年代からの反原子力政策を覆し導入が決定しましたが、2030年代初頭の竣工計画とイギリス製原子炉の問題に影響がないのか、関心事です。
■NASAMS配備開始
こちらは既に開始された装備に関する時事的な話題ですがこれまで無かった装備体系という。
オーストラリア陸軍はNASAMS地対空ミサイルを受領し第110防空砲兵大隊へ配備を開始しました。オーストラリア軍は広い国土に対し広域防空システムを保有しておらず、近年の巡航ミサイル脅威や無人航空機による片道攻撃等に対する防衛力を欠いており、NASAMSを新地対空ミサイルとして決定したものの受領まで時間を要していました。
NASAMSはアメリカのレイセオン社とノルウェーのコングスベルク社が共同開発したもので、AIM-120-AMRAAM空対空ミサイルを地上発射型としたもので射程は25㎞以上あり、AN/MPQ-64レーダーにより索敵し、AMRAAMそのものはアクティヴレーダー誘導方式による撃ちっ放し性能を有するため多目標へ対応し易く、高度に自動化されています。
広域防空ミサイルを漸く配備したオーストラリアではありますが、北朝鮮ミサイル危機を契機として弾道ミサイル防衛の必要性が提唱され、特にその後の中国との軍事対立を背景に中国ロケット軍が大量に保有する壴距離弾道ミサイルの脅威へ対応する能力が切迫して求められています、しかしNASAMSにはそういった能力は無く、別のミサイルが必要だ。