北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都幕間旅情】貴船神社,平安遷都に遥か遡る社殿とともに考える奈良は唐招提寺の観光客による破損事件

2023-07-26 20:23:03 | 写真
■寺社仏閣と遊興地の分水嶺
 京都を散策していますと日本史や日本社会と価値観や文化の源流が見えるところが面白いのですが、関心と理解が無ければ散策するならば別の場所の方がいいのかもしれない。

 貴船神社、その創建は反正天皇の時代といい、西暦でいえば430年代まで遡ります。十年一昔といいますし、貴船に隣接する鞍馬山の名を冠した護衛艦くらま竣工が1981年ですが、しかしそれと比べても貴船神社の創建は遥か昔という表現では全く、という。

 玉依姫命、神話上の神武天皇その実母が船に乗って淀川から守側とそして貴船川を上ったという故事から、となりますが、すると神話は除いていつ頃からの社殿なのかという事が気になりますが、歴史上残っているのは白鳳6年こと西暦666年の記録まで遡る。

 鞍馬寺、その始まりに際しても東寺を造営していた当時の藤原伊勢人に託宣を行ったのは貴船神社の高龗神とされていますので、高龗神の夢のお告げがそのまま貴船神社と理解するほどには、実は奈良時代には定着していた神社だ、ということがわかります。

 歴史をある程度理解していないと、京都を観光するよりは渋谷や秋葉原でも歩き回った方がいいのではないか。世界のお客様が増える中に在って、ふと京都散歩には、単に見栄えのいい景色だけを巡るならば、日本にはもう少しほかにいい場所がある、と思う。

 唐招提寺、奈良の唐招提寺にて先日起こりました落書きの一例を以て少し考えるところが。また外人か、とおもうなかれ、日本でも沖縄の慰霊碑で悪戯をして放火した地元の若い方の事例がありましたし、京都でもおそらく多かれ少なかれ起きているようにも。

 奈良の一件は七夕の少し後の、つまりつい先日、カナダからの外国人観光客の未成年の若者が、唐招提寺が退屈だったので金堂に爪で自分の名前を刻んだ、という事件があり、ほかの観光客が通報、警察の取り調べにおいて、退屈しのぎだった、と話している。

 文化財保護法違反というれっきとした犯罪なのですが、唐招提寺の詰めによる傷の落書きは10㎝幅で削られたという事ですから、簡単には修復できません、なにしろ鑑真さんが伝法しました奈良時代の建物ですので簡単に板を張り替えるわけにはいかない。

 歴史を知らないと退屈なのかもしれないけれども、変な話、あの太平洋戦争で中国だけでは足りずにアメリカを空母の大艦隊で正面から襲い世界を相手に全面戦争を仕掛けた日本で千年単位受け継がれた寺社仏閣が京都には多い、という周知が必要なのか。

 コロッセオ、ローマでも何年か前に落書きをしたロシア人が逮捕され2万ユーロの罰金をいいわたされた事例がありますし、コロッセオが二千年前の建物だと知らなかった、という謝罪になっていないような謝罪もありました。すると観光客を迎えるのは大変だ。

 参拝者として神社は迎えており、拝観者として寺院は迎えている。ただ、見栄えのいいだけのものを見たければ、大阪城に、昭和天皇を迎えるために陸軍が第四師団司令部庁舎とともに再建した歴史はある建物、こうしたものをお勧めしたほうがいいのかも。

 京都を散策し、寺社仏閣の歴史を紐解くと、日本史や日本文化の見えなくてよい根底部分が見えてくるものです、それは非常に楽しいのだけれども、しかし写真映えするような風景だけを眺めに京都を散策するというのは、本人が満足ならばそれはいいけれど。

 文化財、こう一括りにされるものだけれども寺社仏閣は支えてきた人々の願いがある、家族旅行などで寺社仏閣を世界から敢えて京都を選ぶ際には、唐招提寺のようなことが無いように、と考えてしまうのですね。そうすることで歴史は来訪者を受け入れる。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】貴船神社,白馬と黒馬へ願い込めた絵馬発祥の神社で想うのは隣県多度大社は上げ馬神事の悲劇

2023-07-26 20:00:03 | 写真
■涼しさの奥に貴船神社
 鞍馬山に隣接する山手故に若干の冷涼感を感じるのは貴船なのですが考えればここからの流れが貴船川から鞍馬川と結ばれやがて鴨川となるゆえでしょう。

 貴船神社、歴史ある社殿は水を司る神社であり、創建は反正天皇の時代、つまり五世紀前半頃、治世は短期間でしたので西暦では430年代まで遡ります。天皇の陵墓は大阪府堺市の百舌鳥耳原北陵、まだ平安遷都までは遥か先の時代に創建された社殿という。

 反正天皇年間に創建された社殿、当時の首府は大阪平野にありましたが、考えれば淀川水系を辿り辿って上れば鴨川の、そしてその源流の最初の一滴がここ貴船神社といいますから、もちろん五世紀にはまだ叡山電鉄もなく、大冒険だったでしょうが所縁が分る。

 高龗神という水の神様を祀った社殿、考えれば大阪平野そのものが沖積平野であり、洪水や干ばつは、なにしろ治水という技術が漸く日本に入り始めたばかり、田畑開発を行うにもため池という概念が未だない時代、水の神様に崇敬を集めるのはある種当然だ。

 白馬を奉じて長雨の鎮定を願い、しかし逆に干ばつの時には黒馬を奉じて、茶馬は御呼ばれすることなくほっと安堵していたのでしょうが、これがいつしか馬型の板に着色して板立馬というもので代用するようになり、これが絵馬になった、と歴史があります。

 多度大社、馬繋がりで思い出すのは多度大社というやはり雄略天皇年間の、絵馬の話とともに思い出してしまうのは同じ神社の話、三重県桑名市の上げ馬神事の話題です。もともと絵馬は生きた馬を奉納する代わりに絵馬を奉納した、というものですが。

 貴船神社では絵馬、要するに馬の代用となったという貴船神社の知恵で。つまり貴船神社創建の少しのちに創建された二千年近い歴史を持つ社殿の話題で、実はこの多度大社の上げ馬神事で今年の五月、馬が骨折して安楽死、という悲しい出来事がありました。

 上げ馬神事、歴史があるかと問われれば室町時代の暦応年間即ち、西暦の1338年から1342年頃に始まった、武家による神事です。毎年五月初旬、京都ではそろそろ葵祭と第3師団祭だ、と心躍らせる頃合いに数百年間行われている多度祭の重要な一幕で。

 絵馬の話題とともに、この今年ありました馬の骨折による安楽死と、これはもう動物虐待ではないかという指摘、それに馬が急坂を登らせる際に叱咤という名の蹴りや鞭打ちが行われていたことで過去に動物愛護法違反による逮捕者も出ているというもの。

 戦車でも使ってみてはどうか。ふと貴船神社を見ていますと、上げ馬神事の話題にこんなことを思い浮かべるのですね、いわば現代の絵馬として。考えてほしいのはもともと武家の神事として始まり、今は騎兵部隊も世界中馬はほぼ用いていません、祝典のみ。

 騎兵部隊は、アメリカの第1騎兵師団などは行事用に馬を残していますが、あとはイギリスの近衛部隊やフランス軍の軽騎兵が例年の革命記念日でパレードするくらい、軍隊ではもう馬は過去のものとなっています。今は戦車や装甲戦闘車が騎兵任務を担う。

 自衛隊に要請するという選択肢はありますが、例えば海外の愛好家に依頼するとか、自衛隊へ輸送費を神社が捻出してその年度に退役する戦車や装甲車を上げ馬神事で上ってもらい、上った戦車や装甲戦闘車を、坂の上で待っていた神馬が祝福する方式でよい。

 サラブレッド、そもそも上げ馬神事は駄馬とイギリス軍に誤解された日本の在来種で行った神事を、木曽馬など在来種が減り登攀に向かないサラブレッドを用いた結果の悲劇ともいう。絵馬発祥の地貴船で、ふと現代風の神事について考えてしまいましたね。

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ウクライナ情勢-ロシアが破棄した黒海穀物合意その再開条件と原潜参加なきロシア海軍記念日観艦式

2023-07-26 07:00:40 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 今朝の話題はウクライナを侵略するロシアに関するものでロシアへの経済制裁は確かに効力を見せつけているという話題を。他方でなんとか穀物輸送船の安全を図らないと重大なリスクと成り得ます。

 ロシアが破棄した黒海穀物合意の再開についての条件は、ロシア農業銀行の国際銀行間通信協会SWIFT国際決済網への復帰と、農業関連機械の禁輸措置解除、ロシア船籍貨物船への船舶保険料戦時国家対象割り増しの解除、全世界のロシア船入港禁止措置の解除、となっています。これは船舶と農業輸出に関する大半の制裁解除要求に他ならない。

 SWIFT国際決済網への復帰要求については、ロシア農業銀行に限定して要求しているもののSWIFT国際決済網排除がロシアに対して如何に効果を示しているかを再確認させるものですが、ロシアの経済的困窮はロシアにウクライナ侵略を断念させる方向には向かわず、世界の飢餓状況を助長させロシアが逆に先進国を脅す飢餓作戦に悪用されています。

 黒海穀物合意は、もともと2022年7月にロシアウクライナ戦争を契機とした黒海海上封鎖により世界有数の小麦輸出国であるウクライナからの小麦供給が停滞したため、トルコと国連がロシアに働きかけ11月までの期限で締結、その後は11月と2023年3月に再延長されたものですが、7月17日にロシア外務省が再延長停止を発表していました。
■ロシア海軍記念日
 キーロフ級原子力巡洋艦退役など昨今ロシア海軍は暗い話題ばかり。

 ロシア海軍海軍記念日観艦式に原子力潜水艦が参加しない方針である、イギリス国防省14日付戦況報告が12日付のロシア国営通信の報道を引用し紹介しました。ロシア海軍記念日観艦式は停泊式観艦式として例年7月30日にサンクトペテルブルクで実施、首都モスクワからは遠いですが内陸部でロシア第二の都市ということで実施されている。

 サンクトペテルブルクでの観艦式は2017年より開始され、しかし原子力潜水艦が参加しないのは今回が初めてとのこと。ロシア海軍の主力は北方艦隊であり、太平洋艦隊よりも充実した艦艇を装備していますが、今回の原子力潜水艦不参加の背景には整備期間や訓練期間確保等稼働率維持のための不参加が考えられるとイギリス国防省は分析する。

 NATOとの関係を類推する場合、今回の決定は逆の意味を持つ可能性があります。北欧のスウェーデンとフィンランドは長らく武装中立国と位置付けられてきましたが、2022年のロシアウクライナ戦争を受け一転、NATO加盟申請を行いフィンランドは加盟へ、スウェーデンも加盟の見通しが出ています。サンクトペテルブルクはバルト海沿岸です。

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