北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】ドイツCH-47大量導入とCV-90markⅣスロバキア導入とリトアニアヴィルカス装輪装甲車増強

2023-07-24 20:00:52 | インポート
■■■防衛フォーラム■■■
 今週は陸軍関連の話題を11論点あつめました。先ず最初は連邦軍の立て直しに苦労しつつ国防緊急基金を立ち上げ消えつつある国内防衛産業の配慮よりもアメリカ製装備を重視するドイツです。

 ドイツ軍が導入するCH-47F輸送ヘリコプター60機の輸出をアメリカ国務省が承認しました。CH-47F輸送ヘリコプター60機の調達は85億ドルという、ヘリコプターに関する輸出契約としては2023年内では世界大大規模となります、今回ドイツへ輸出されるCH-47F輸送ヘリコプターは改良型で最新のCH-47F輸送ヘリコプターblock2仕様とのこと。

 CH-47F輸送ヘリコプター60機、自衛隊が装備するCH-47がJ型とJA型合わせて75機ですので相当の規模となります、この巨額の防衛装備品調達はドイツ連邦軍が冷戦時代に90機と大量導入したCH-53輸送ヘリコプターの老朽化があり、その後継機としてCH-47と最新型のCH-53Kを検討した結果、CH-47F輸送ヘリコプターが採用されたかたち。

 85億ドルの内訳は、機体60機、T-55-GA-714Aエンジン140基、AN/ARC-231A無線機72基、AN/APX-123A敵味方識別装置、AN/ARN-147計器発着システム、AN/ARN-153航空ナビゲーションシステム、AN/AVS-6暗視装置、IRSS機体自衛装置、EO/IR電子赤外線センサー、M-134多銃身機銃マウント、空中給油受油装置などなどが含まれています。
■パンター戦車
 ラインメタル社はドイツ政府によるレオパルド2戦車調達終了による既存車輛改良のみという路線から戦車製造施設を事実上閉鎖しており新規製造に各国への施設整備を進めている。

 ドイツのラインメタル社は数か月以内にウクライナへ戦車工場を建設しパンター戦車を量産する構想を発表しました。これは3月4日のドイツRheinische Post紙にラインメタル社のアルミンパッパーガー最高経営責任者が答えたもので、ウクライナ西部を想定し、工場の建設費用は2億ユーロ、年産400両のパンター戦車量産を目指しているとのこと。

 ウクライナ軍は深刻な戦車不足に悩まされる一方、欧州全体で冷戦終結後の戦車生産工場閉鎖を受け供給力不足となり、いま発注した戦車がフルレート生産を行った場合でも引き渡しは最短24か月後、また戦車生産を優先するためにプーマ装甲戦闘車の生産を中止したうえでの納期となっています。パンターはレオパルド2に続く開発中で新設計の戦車だ。
■ノルウェーNH-90早期退役
 オーストラリアに続いて、だ。やはりUH-60の方がいいのかNH-90は運用費用が高く飛行シミュレータで対応する姿勢をメーカーが示していますがASWやヘリボーンはシミュレータだけでは対応できません。

 ノルウェー軍はNH-90哨戒ヘリコプターを早期退役させMH-60R哨戒ヘリコプターに置き換える決定を下しました、このMH-60Rについて導入は早ければ2025年に実施されるとのことで、現在諸般の事情から2022年6月以降運用を停止しているNH-90哨戒ヘリコプターによる深刻な海上哨戒能力の空隙をいち早く埋めることが求められています。

 MH-60R哨戒ヘリコプターは6機が導入される計画で、主要費用は120億ノルウェークローネ、米貨換算で11億ドルが見込まれているとの事、ノルウェー政府は2023年夏ごろにもアメリカ政府との間で正式導入計画を結びたいとのこと。MH-60については既に2016年にノルウェー軍が導入しており、これを増勢することでNH-90を置き換えるかたち。

 NH-90哨戒ヘリコプター、早期退役を決定したのはオーストラリアに続いて二か国目となります、この背景にはNH-90の運用費用増大が挙げられています、こういいますのもNH-90は当初想定以上に交換部品の劣化が早く、交換部品費用は飛行時間当たりの所要費用がF-15戦闘機やF/A-18E戦闘攻撃機よりも高くなっており、運用国を悩ませています。
■FK-3地対空ミサイル
 日本の装備と比べてどうか、05式水陸両用戦車もタイに輸出されていますが中国製の装備はアメリカや日本もどのような性能を持っているのか興味がある。

 タイ海軍は中国製FK-3地対空ミサイルの受領を発表しました。タイでは地域防空の一部を海軍が担当しており、   今回は海軍最大拠点であるサタヒャップ海軍基地とウタパオ航空基地、そしてその周辺にあるマプタプット工業地帯やレムチャバン港なども防空を担うとのこと。タイは伝統的にアメリカとともに中国製防衛装備品を調達し均衡を取っています。

 FK-3地対空ミサイルは中国の輸出仕様地対空ミサイルですが、人民解放軍装備の輸出仕様であり、設計や運用実績は確立されている装備です。その最大射程は100㎞に達し、27000mの高高度を飛翔する目標に対しても有効との事です。ミサイルは一個中隊がレーダー射撃指揮装置1両と4連装ミサイル発射装置3基より構成されミサイルは垂直発射可能です。
■TR-85戦車の近代化
74式戦車も古いものでしたがT-55かあ。

 ルーマニア陸軍は旧式化が進むTR-85戦車の近代化改修を開始します。TR-85は冷戦時代にルーマニアがソ連製T-55主力戦車をライセンス生産したもので、基本設計が車高の低さ以外見るところの少ないT-55戦車ではあるのですが、いまのところ将来戦車計画が具体化しておらず、まだ当面はT-55系統の戦車を改良し運用し続けなければなりません。

 TR-85M1戦車が54両、TR-85戦車が103両、T-55AM戦車が220両、ルーマニア軍は357両と比較的多い戦車を保有していますが、全て旧式です。ただTR-85M1はルーマニアのNATO加盟に際しNATO標準戦力に対応するべくエンジンをドイツ製830hpに換装し火器管制装置もルーマニア製Ciclopへ換装、増加装甲を装着し重量も50tに増大した。

 後継戦車は検討されてい入るようですが、まだ。TR-85戦車が今回近代化改修の対象となる見通しで、熱線暗視装置の追加、主砲安定化装置追加による行進間射撃能力の付与、ルーマニア軍が新しく導入したピラーニャ装輪装甲車とのデータリンク性能の付与などが行われる見通しです。近代化改修は早ければ2024年にも先行試作車が製造される構想です。
■スロバキアCV-90markⅣ
 陸上自衛隊の少子高齢化時代を考えると普通科隊員は一人ひとりが重要ですので有事の際に損耗から守るための装甲戦闘車を連隊規模を見直してでも必要だ。

 スロバキア国防省はBAEシステムズ社とコヴェルシステムス社との間でCV-90装甲戦闘車の生産契約を締結しました。スロバキア軍は旧式化したソ連製装甲車の後継としてCV-90markⅣを80両導入しますが、巨額の防衛装備品調達であり、全てをBAE社参加のBAEヘルグント社から直輸入するには抵抗があり、自国内での組み立てとなりました。

 CV-90markⅣの製造は主要コンポーネントについてはBAEヘルグント社が供給しますが、最終組み立てはコヴェルシステムス社が、また維持部品や車体構成部品もスロバキアのZTS特殊車両製作所が担当することとなっています。CV-90markⅣは35mm機関砲と対戦車ミサイルを搭載し、スロバキア軍では戦車の代替として装甲戦力の中枢を担います。
■空軍JLTV統合軽戦術車両
 航空自衛隊の基地警備用の軽装甲機動車みたいな。

 アメリカ空軍はJLTV統合軽戦術車両の運用を開始しました。これは空軍第90ミサイル保安中隊に配備されたものです。JLTV統合軽戦術車両は耐爆車両M-ATVを原型にアメリカ軍が装甲ハンヴィーを置き換える装輪装甲車として大量配備を開始しているもので、巨大な四輪駆動の車体に高度な防御力とRWS遠隔操作銃塔を搭載する汎用装甲車です。

 空軍第90ミサイル保安中隊、この部隊はアメリカ空軍のICBM大陸間弾道ミサイル部隊を警備する部隊です。従来は敵特殊部隊などによるICBM基地攻撃を警戒し空軍は装甲ハンヴィーを運用していましたが、この装備では対戦車ミサイルなどの攻撃に耐えられません。JLTVの導入は貴重なICBM部隊を“その時”が来るまで防衛するため配備されました。
■コルトIAR-6940
 自動小銃というアサルトライフルよりはオートマチックライフルをしめすみたい。

 シンガポール陸軍は次期小銃としてコルトIAR-6940を選定しました。これは現在使用しているウルティマックス100Mk2分隊機銃をおき代える標準装備となります。シンガポール陸軍は歩兵用としてブルパップ式SAR-21小銃を装備していますが、コルトIAR-6940はIARインファントリーオートマチックライフルとして、分隊支援用に用いるとのこと。

 コルトIAR-6940、世界各国で採用された事例はありません、そもそも海兵隊の分隊支援火器として施策されたものですがH&K-M27-ISRが選定されコルトIAR-6940は量産されませんでした。ウルティマックスはMINIMIを軽量化したような支援火器で、コルトIAR-6940は30発弾倉を用いて精密な短連射による歩兵戦闘支援を主眼とした装備です。
■ヴィルカス装輪装甲車
 自衛隊はパトリアAMVを96式装輪装甲車の後継に選びボクサーも良い装甲車なのだろうと思いつつAMVは水に浮くしなあと。

 リトアニア陸軍は現在配備中のヴィルカス装輪装甲車を更に120両追加調達することを発表しました。ヴィルカス装輪装甲車はドイツのボクサー装輪装甲車へ無人砲塔型30mm口径のMk-44S機関砲及び対戦車ミサイルを搭載したもので、小国であるリトアニアには対戦車火力と非常に高い機動力を備えた有力な装輪装甲車として運用されています。

 アイアンウルフ旅団にリトアニア軍は68両を集中配備しており、間もなく導入される23両の納入を以て第一次契約分にあたる91両が配備完了となります。ただ、アイアンウルフ旅団には4個の歩兵大隊が編成されており、91両では2個大隊所要、残る2個大隊はM-113装甲車を装備しています。今回の追加により全てをヴィルカスで編成するのが狙い。
■TAM-2CAC中戦車
 TAMはマルダーの車体を応用した軽戦車で開発当時はそれ程はやりませんでしたが、フィリピンと続いてアメリカが装甲戦闘車由来の軽戦車的なものをつくっている。

 アルゼンチン陸軍は改良型のTAM-2CAC中戦車の評価試験を実施中です。5月13日にはアルゼンチンのホルヘタイアナ国防大臣もマグダレナ演習場において行われるTAM-2CAC中戦車の射撃試験を視察しています。第二世代の時代に開発された中戦車であるTAM中戦車をアルゼンチン陸軍はTAM-2CACへ改修し当面第一線で運表します。

 TAM-2CAC中戦車は主砲こそラインメタルRh-105-30の105mm砲のままですが、既存のTAM中戦車と比較し火器管制装置の改良と暗視装置の換装、また補助動力装置の追加によるエンジン停止状況での砲塔火器管制システムの作動等をもりこんだもので、装甲防御力を除けば旧式の中戦車を第三世代戦車相当まで能力向上することがこの改修の狙い。
■ISV歩兵分隊車両
 要するに高機動車とパジェロの中間だ。

 アメリカ陸軍はゼネラルモーターズディフェンス社との間でISV歩兵分隊車両の本格生産契約を発表しました。この契約は4月7日に結ばれたもので、アメリカ陸軍はハンヴィー高機動車の後継として量産が開始されている大柄なJLTV統合軽量戦術車両とは別に空挺部隊や空中機動部隊などに幅広く運用が可能となるISV歩兵分隊車両を配備します。

 ISV歩兵分隊車両は民生車のシボレーコロラドZR2ピックアップトラックの車体を応用しており、車体部品の90%は民生車両と同じものを用い、歩兵9名を緊急展開させる軍用車両を開発しました。この車両の利点は軽量さであり、CH-47輸送ヘリコプター機内に搭載できるほか、UH-60多用途ヘリコプターでの吊り下げ空輸にも対応しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ロシア軍第58諸兵科連合軍イワンポポフ少将突然の解任とワグネル処遇巡る混乱

2023-07-24 07:00:27 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 日本としては志方さんの北部方面総監時代のビックレスキューが自民党内一部で不評を買ったという話を聞いていますので政軍関係については何とも。

 ロシア軍第58諸兵科連合軍のイワンポポフ少将が突如解任されました。これはイギリス国防省ウクライナ戦況報告15日付分析として、特筆すべき内容と記され、具体的にはポポフ少将が解任に際し部下への訓示として部内公開した動画情報が外部に漏えいし、その中でロシア国防省のウクライナ戦争指導部を批判した内容が収録されていたため。

 ロシア国防省の戦争指導体制については、ウクライナ侵攻から最初の初夏まで、ウクライナ特別軍事作戦に関する作戦司令官を任命しないなど、恰も個々の軍隊が同時に侵攻した様な作戦始動の拙さが有り、また兵站計画や占領計画などがそもそも場渡り主義的となり、これが第一線のロシア軍部隊にウクライナ軍防御戦による甚大な損耗を強いてきました。

 ロシア軍では第一線でのウクライナ戦争に真剣に取り組む指揮官に対して、事実上の戦争を特別軍事作戦と言い換え、兵站や動員体制と後方支援体制に不満を持つ将校将官と、この戦争に対しあくまで局地戦という認識から動かないロシア国防省上層部との軋轢が生じており、今回のポポフ少将の解任は不満を上申したためと考えられています。
■ワグネルの処遇
 ワグネルの髑髏マークを掲げていますがこの写真の方々は自衛隊の訓練展示における仮設敵です。

 ロシアの民間軍事会社ワグネルグループについて、今後の処遇がロシア国内においてまだ不確定要素があるもよう、16日付イギリス国防省ウクライナ戦況報告に分析がありました。先ず、ワグネルは戦車や火砲などの2000以上にも上る重装備を12日までにロシア軍へ返還し、15日までには少数のワグネル戦闘員がベラルーシへ移動したとのこと。

 ワグネルの処遇について難しいのは、ワグネルはロシア軍が国際法上若しくは国際政治の観点から正規軍を派遣できない地域へのロシア軍プレゼンスを担う組織として成長し、特にアフリカ地域では鉱山警備から始まり、資源開発については事実上の経営を伴うなど、ワグネルを仲介して多数の資源獲得やプレゼンスの行使などを行ってきた点です。

 ロシア政府としては反乱を起こしたワグネルを従来通りの地位に位置付ける事には無理があるものの、一方でワグネル解体を優先しワグネルにより得たアフリカ地域や中東地域の権益を手放す事には難色が有る様で、いわば資源と権益を代償にロシア国内ではワグネルの存続とロシア国内での位置づけ要望を受け入れる余地がある可能性も指摘されます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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