北大路機関

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【防衛情報】イギリス26型フリゲイト4番艦バーミンガム起工とイタリア水陸両用部隊”トライデント”構想

2023-07-11 20:11:41 | インポート
■■■防衛フォーラム■■■
 今回は海軍関連の最新情報を見てみましょう。

 イギリス国防省は26型フリゲイト4番艦バーミンガムの起工式を発表しました。これは4月4日のグラスゴーのBAEシステムズ社ゴーバン造船所におけるスチールカットを示し、また先行して建造されている26型フリゲイトに関しても進捗状況が発表されていて、1番艦グラスゴーはコッツタウン造船所においてシステム部分の艤装工事中とのこと。

 26型フリゲイト、2番艦カーディフはブロックごとの建造を実施中、3番艦ベルファストの建造は初期段階とのこと。1隻あたり8億4000万ポンドという巨費を投じてオールブリテン方式で建造される26型フリゲイトはイギリス国内で120社の協力をうけ建造されており、カナダ海軍とオーストラリア海軍でも採用、参加国合わせ32隻が建造される。

 バーミンガムは先行して建造された3隻がバッチ1であるのに対し、バッチ2の最初の一隻となります。26型フリゲイトは地球規模の運用を期し満載排水量8000t、5インチ砲とMk.41VLSを24セル、またシーセプター艦対空ミサイル用VLS24セルと20mmCIWSや30mm機関砲を各2門装備し、AW-101ヘリコプター1機の運用能力を有しています。
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 横浜など停泊している事が多い印象の輸送船です。

 アメリカ海軍は新遠征高速輸送船コーディーの進水式を挙行しました。これは3月20日オースタルモービル造船所にて行われたもので、コーディーはスピアヘッド級遠征高速輸送船の14番船となります。オースタル社はオーストラリアの双胴方式高速フェリー建造大手でスピアヘッド級遠征高速輸送船はオースタルUSAが建造を担当しています。

 スピアヘッド級遠征高速輸送船は満載排水量2500t、全長は103mで特筆する点は速力が43ノットと非常に早く車両などを満載とした場合でも巡航速度は36ノット、1200浬の航続距離とともに600tの車両や装備などを輸送できる点です。一番船は2012年に竣工しており、アメリカ海軍ではスピアヘッド級遠征高速輸送船16隻体制を目指しています。
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 海底ケーブルの防衛はイギリス海軍も同種の艦艇の導入を開始しています。

 オーストラリア海軍は海洋支援艦ガイダンスの導入計画を推進中です。海洋支援艦とは具体的には深海調査や海洋調査に加え、海底ケーブルラインや海底パイプラインなどの警戒監視を行う為のもので、導入は新造ではなくノルウェー船ノルマンドヨールを中古により1億1000万ドルで取得したのち、シンガポールにて改修作業を実施しています。

 ガイダンスは満載排水量7400tで全長107m、有人海中作業艇や有人深海調査艇、無人深海作業機などを運用し、これらの装備はモジュラーシステムにより適宜交換可能だとしています。深海は宇宙空間と並ぶ第四の戦場とされ、近年経済活動が情報通信に大きく依存する中、深海作業艇による海底光ファイバーケーブル攻撃が現実の脅威となっています。
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 ブラジルは潜水艦産業を漸く国内で養成しようとしている段階で原子力潜水艦建造に舵を切り国内生産よりも潜水艦性能を重視している構図です。

 ブラジル海軍向けに建造が進む潜水艦アンゴスツラは船体モジュールを陸上輸送しています。アンゴスツラはフランスとスペインが設計した輸出用のスコルペヌ級潜水艦をブラジルでライセンス生産しているものです。しかし驚くべきはモジュール工法により建造される船体部分をトンネルなど一般道路を用いて建造施設から造船所へ陸送すること。

 リアチュエロ級潜水艦4番艦として建造されているアンゴスツラは水中排水量1900t、全長は70.62mでディーゼルエレクトリック方式を採用しています。ただ、ブラジル海軍はアンゴスツラ以降に建造する潜水艦を原子力推進方式とする計画で、原子力潜水艦アルバロアルベルトはアンゴスツラとおなじ2018年に起工、2030年代に竣工予定です。
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 トリエステは空母カブールよりも大きく海上自衛隊護衛艦いずも排水量をも上回る規模です。

 イタリア海軍はLXD新型揚陸艦を建造し強襲揚陸艦トリエステとともに水陸両用部隊”トライデント”を構想しています。トリエステは満載排水量38000tで全通飛行甲板を採用しF-35B戦闘機運用能力を持つ、中国の075型強襲揚陸艦さえ上回り、アメリカのワスプ級やアメリカ級と並ぶ世界最強といえる揚陸艦で、LXDはこれを支援する揚陸艦です。

 LXD新型揚陸艦は3隻が計画され、旧式化したサンジョルジオ級強襲揚陸艦を置き換える構想、満載排水量はサンジョルジオ級の三倍近い満載排水量20000t弱で乗員と兵員1700名、LXD新型揚陸艦の建造は既に最初の2隻が建造費12億ユーロとして計上され、一番艦が2028年、二番艦が2030年に竣工、続いて2031年3番艦が竣工する計画という。

 LXD新型揚陸艦、構造はドック型揚陸艦として船体にはウェルドックを配置、車両甲板は480平方メートルを確保し、また露天甲板には飛行甲板を配置しAW-101輸送ヘリコプターやアメリカ軍などが運用するV-22可動翼機が発着可能、イタリア海兵隊は現在古いAAV-7に代えイヴェコスーパーAVを開発中、LXDはその搭載を念頭としています。
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 日本の護衛艦もがみ型は後出しではあるけれどもアメリカで比較対象となっているもよう。

 アメリカ海軍は新沿海域戦闘艦オーガスタを受領しました、受領は就役を意味するものではなく今年秋に向け各種装備など最終艤装工事とともに公試を実施予定です。オーガスタはインディペンデンス級沿海域戦闘艦の17番艦、満載排水量は3104tで武装は限られていますが特徴的な三胴構造を採用し、最高速力47ノットという俊足を誇ります。

 オーガスタという艦名は過去にノーザンプトン級重巡洋艦の6番艦やロサンゼルス級原子力潜水艦の23番艦などに冠せられています。沿海域戦闘艦は57mm艦砲とRAM個艦防空ミサイルのみを標準搭載し、速力とセンサー及び航空機運用能力などを駆使し艦隊の前方に展開する艦種ですが、近年その軽武装が中国海軍との対峙にて問題視されています。
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 エムデンというと百年以上前に日本海軍も警戒していた通商破壊の巡洋艦のなまえだ。

 ドイツ海軍はブラウンシュヴァイク級コルベットバッチ2の二番艦エムデンを受領しました。エムデンの名はドイツ帝国海軍の巡洋艦エムデンが、第一次世界大戦における単独での長期にわたる通商破壊作戦に従事したことで有名となっており、ドイツ連邦海軍もかつてブレーメン級フリゲイトの艦名として採用、10年前に退役した名前となっています。

 エムデン竣工式は4月27日に挙行されました。このブラウンシュヴァイク級コルベットはゲパルト級ミサイル艇の後継として建造され、運用特性から水上打撃力に特化、対潜装備は皆無です。満載排水量は1840t、ミサイル艇と比べ速力は26ノットと鈍足ですが航続距離が長く、バッチ2からはTRS-4Dパッシヴスキャンアレイレーダーを搭載しています。
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 ロシアウクライナ戦争を見ますと無人小型艇による攻撃に対抗するにはこうした警戒手段が必要です。

 フランス海軍はエアバスヘリコプターズSDAM-VSR700無人航空機の海上試験を実施中です。SDAM-VSR700無人航空機は民間船上で試験中ですが、将来はフリゲイトなど水上戦闘艦に搭載し、常時持続的に自律発着と哨戒飛行を行い、いわば水上戦闘艦のマスト上に搭載されたセンサーの延長線上として警戒監視に当たることが求められています。

 SDAM-VSR700無人航空機は滞空時間を8時間とし最高速度は185km/h、GPSなどに依存せず昼夜はもちろん悪天候においても洋上の艦艇からの運用能力獲得を目指していて、ブルターニュ沖での試験では8時間の間に連続して14回の発着実験を実施、また全体では80回の完全自律発着に成功し、海軍は2035年までに15機の取得を計画しています。
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 おおすみ型よりは二回り小型なのですが。

 カタール海軍は初の強襲揚陸艦アルフルクの進水式を迎えました。式典はイタリアのフィンカンティエリ社で行われ、フィンカンティエリ社ピエロベルトフォルジェロ最高経営責任者、カタール首長国海軍司令官アブドラハッサンアルスライティ提督、イタリア海軍参謀総長エンリコクレデンディーノ提督はじめイタリアとカタール要人が出席しています。

 L141の艦番号を有するアルフルク、奇しくもヘリコプター搭載護衛艦はるな艦番号141と重なるもので、全通飛行甲板構造を採用しているものの満載排水量は8800tと、はるな満載排水量6800tと比較し特段大きくはありません、他方特筆すべき点としてアルフルクはアスター30ミサイルによりミサイル防衛任務も担うという点で、VLSは16セルとのこと。

 アルフルク、イタリア海軍の揚陸艦サンジュースト型を原型としたもので、全通飛行甲板にはNH-90多用途ヘリコプターに対応するヘリコプター発着パッド4か所とウェルドックや揚陸艇ダビットなどが配置、満載排水量は8800t、全長143mと全幅は21.5mで、短期間であれば550名の兵員を輸送可能、アスター30艦対空ミサイルや76mm艦砲を備えます。
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 P-8Aの配備開始でいよいよお役御免です。

 ニュージーランド空軍は長年運用されたP-3K2オライオン哨戒機の退役記念飛行を実施しました。これは空軍第五飛行隊に配備されているP-3哨戒機が、飛行時間15万時間、実に55年間という世代を超えた運用に従事したことを受けての退役記念飛行であり、六機のうち稼働の三機編隊によりニュージーランドの北島を中心に巡回編隊飛行を実施したもの。

 オークランドを離陸した編隊は先ずワイカト上空を経てマナワットとネイピアとタウランガそしてコロマンデル海岸にグレートバリア島と巡りファンレイ上空を飛行したのち、改めてオークランド上空にて密集編隊に移行し、有終の美を飾りました。P-3K2哨戒機は何度も延命改修が行われていますが、P-8ポセイドン多機能哨戒機の配備を機に退役します。
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 水陸機動団といいますか自衛隊の沿岸作戦部隊には必要な装備と思う。

 スウェーデン海軍はパトリアNEMO自動迫撃砲の艦載型を導入することとなりました。これはフィンランドのパトリア社が開発した後填式迫撃砲で後継は120mm、もともとは装甲車などに搭載し自走迫撃砲とするもの。水上打撃力として導入するのではなく、海軍の水陸両用戦軍団、2000年までは沿岸砲兵部隊と呼ばれていた部隊での導入となります。

 パトリアNEMO自動迫撃砲は世界で初めて間接照準射撃を行う火砲として行進間射撃が可能という装備となっていますが、スウェーデンでは24m哨戒艇の後部甲板に搭載しての評価試験を継続的に実施しており、今回水陸両用軍団の沿岸防備用装備として採用が決定しました。主として艦砲射撃を行い、また高速襲撃艇の火力にも充てられるものです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-黒海艦隊にアゾフ海管区司令部を設置,アメリカ政府-ウクライナへクラスター弾薬供給を開始

2023-07-11 07:00:00 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 護衛艦ゆうばり型よりも現在建造が進められているロシア海軍艦艇は小型化しているのですが。

 ロシア海軍は占領下のマリウポリに新設のアゾフ海管区司令部を設置、イギリス国防省7日付戦況報告が発表しました。アゾフ海管区はセバストポリに司令部を置くロシア黒海艦隊の隷下部隊で、近年整備が進むカラクルト級コルベット3隻を中心とした8隻の艦艇から成る部隊を置き、クリミア半島とウクライナ南部地域の中間占領地を警備する。

 ウクライナ南部においてロシア軍は長期的な防衛体制を固め攻勢をほぼ断念している状況ですが、クリミア半島とロシア本土を結ぶケルチ大橋はイギリス製ストームシャドウミサイルなど長距離打撃力による攻撃の脅威下に置かれており、次の橋梁が破壊された場合にはアゾフ海の海上航路が重要な兵站線となるため、新司令部が設置されたもよう。
■カラクルト級コルベット
 ロシア海軍の新しい主力艦が護衛艦いしかり、よりも小型になるとは冷戦時代には全く想像も出来なかったでしょうね。

 ロシア海軍は2014年に併合したクリミア半島において建造していたカラクルト級コルベットのチクロンを7月4日に竣工させました。クリミア半島のケルチではザリブ造船所が操業中で全長360mと幅60mの大型ドックを有していて、冷戦時代にはソ連海軍クリヴァク1型フリゲイトを建造、ウクライナ企業でしたが2017年にロシアに占領された。

 カラクルト級コルベットは満載排水量800tで全長67m、76mm艦砲とパンツィーリCIWS,そしてVLSにはカリブル巡航ミサイルを最大8発搭載可能です。ロシア海軍は近年、大型艦の建造停滞を受け、小型艦艇に射程の長いミサイルを搭載する事例が多くなっており、カラクルト級コルベットは日本近海に出現するブーヤン級コルベットの後継艦です。
■クラスター弾薬の供給
 航空機搭載用なのか湾岸戦争で使われたM26ロケット弾なのか、そもそもM26についてはてっきりもう供給していたとばかり思っていました。

 アメリカ政府はウクライナに対してクラスター弾薬の供給を発表しました。アメリカとロシア及びウクライナはクラスター弾薬規制に関するオスロ条約には批准していません。クラスター弾薬について、想定されるのは航空機搭載用の‎CBU-97クラスター爆弾とともにHIMARS高機動ロケットシステムより投射するクラスター弾薬などでしょう。

 HIMARSの原型となったMLRS多連装ロケットシステムはまさにこのクラスター弾薬を正確に散布するために開発されたもので、アメリカではGPS誘導型の単一弾頭型GMLRS弾薬が供与可能備蓄の枯渇が始まり、より威力の高いクラスター弾薬を供与開始することとしたのでしょう。数%の不発弾が発生しますが、ウクライナ政府は許容するもよう。

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