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【京都発幕間旅情】宗安寺(滋賀彦根)赤門迎える御堂は井伊直政高崎に開いた不思議な御寺

2020-09-23 20:01:19 | 旅行記
■淀殿念持仏奉じる近江の御寺
 勝者が全てを得る二元論、一種デジタル的で現代的と見えますが敗者をも包容する多元的な価値観がかつての我が国でした。これを体現する御山が彦根にある。

 赤門が真夏の厳しい陽射しの下に少々日焼けした退色の緋色を青空と見事な色彩対比を醸し、なにか長すぎた梅雨明けに唐突な猛暑酷暑の陽射しに疲れた印象を、しかし奥の本堂が疲れているも佇まいを糺す僧侶の風格の様な気風を漂わせる。ここは彦根宗安寺です。

 宗安寺庭園。滋賀県彦根市の寺院です。彦根と云えば江戸時代の大藩彦根藩が西国大名への抑えとして機能していまして、成程江戸時代に大きく整備が進んだ彦根城の城下町は明治維新の後にモザイク画のような和洋折衷化が進みましたが平成に再整備され今に至る。

 近江牛でも一つ入れて活力を増そう、新型コロナウィルスCOVID-19感染症の所謂コロナ禍下にあって少々社会が息苦しさを増している最中に美味しい銘牛を頂く事としました、なんでも近江牛は安土桃山時代から滋養強壮の薬膳として親しまれたもので特に美味しい。

 京橋通、ここは彦根城城下町の、駅前に至る通りとは別の寺町として整備されたもので、平成の外観復元に際しては商店街を江戸時代の商家風に化粧直ししているのですが、美味しい近江牛を頂いた後に、ふと佇まい美しい伽藍が並ぶ事に趣きを感じ、歩み進めました。

 上野国箕輪、この寺院は元々井伊直政治世下の群馬県高崎に天正18年こと1590年に建立されましたが、関ヶ原の戦いに勲功を挙げつつ銃弾に重傷を負った井伊道政が徳川家康より銃弾に身を挺して勝ち得た地に程近い彦根に転封を定め、その際に寺院も遷座したもの。

 井伊直政所縁の寺院という事で、成程それならば山門の朱色も赤備え由来かと思うと、もともとは石田三成の居城佐和山城の大手門を移築したものといいまして、佐和山城は廃城の後に彦根城へ移築されましたが、城下町に残る数少ない佐和山城の遺構でもあるという。

 住持成誉典応上人は高崎での開山から慶長8年こと1603年の彦根遷座まで井伊直政につき従いこの地に至りました。歴史によれば三年前の関ヶ原の戦い戦跡地通り彦根に至った成誉典応上人はじめ高崎からの人々は感じるものがありまして、この寺院の安置仏に現れる。

 淀殿の念持仏と石田三成の念持仏、宗安寺にはこの二柱が安置されていまして、淀殿の念持仏は御本尊として奉じられています。大坂城の仏間より大坂夏の陣にて譲り受けたといい、修復に際し鎌倉期の文永7年こと1270年に佛師阿澄に彫像された事がわかりました。

 石田三成の念持仏は拝観に際し間近に手を合わせる事が出来まして、主君は違えど戦国乱世の鎮定と平和の到来に尽力した武将の敗戦没後にあっても思いを受け継ぐ価値観には尊敬の念が湧きます。井伊家所縁の寺院は浄土宗、徳川家康没後は位牌奉安所ともなります。

 朝鮮通信使節団高官宿所、江戸時代には宗安寺は、こう、位置付けられまして庭園などは一時でも隣国高官を迎えるに相応しい風情を醸すべく、広くはありませんが静寂と清涼を湛えています。ただ、彦根城下町は元禄の大火の災厄に見舞われ、赤門以外焼失しました。

 長浜城付属御殿、現在の本殿は元和元年の1615年に長浜城は豊臣家滅亡を受け西国監視の責務が軽くなり廃城となった長浜城の遺構を江戸中期に移築したもので、御堂から庭園を昭和期に並べられたゆったりとしたソファーから時間の移ろいと共に眺める事も出来ます。

 虎の板絵が残る本堂、宗安寺は井伊家所縁の寺院であるとともに藩士の会合所として繁く供され、歴史の裏舞台に登場するのは激動の幕末、維新政府と徳川幕府の何れに彦根藩が恭順するかの秘密会議を開いたのがこの堂でした、彼らの見た風景を今見る事が出来ます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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