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E-VTOL"空飛ぶクルマ"と自衛隊【3】性能面から欠点の方が現状では圧倒的に多いが将来性

2023-11-18 20:06:08 | 先端軍事テクノロジー
■ヘリコプターに対して
 航空法などの規制が所謂ドローンの民生普及に大きな後れを取る背景となりましたが新しい空飛ぶクルマではどの程度規制緩和が行われるか、注目しています。

 空飛ぶクルマ、E-VTOLというものが技術的に現実味を帯びてくるとともに、沿空域と軍事的に呼ばれている領域、航空機が飛行する高度よりも低いが地上を走行する車両などが活かせていない領域を利用できる目処が立ってきました。そしてドローンと呼ばれる新しい無人機体系技術が進むとともに、従来の航空機に無い利点がみえてきました。

 欠点の方が現状では圧倒的に多い。最たる欠点は実用化されている有人E-VTOLは航続距離が50㎞前後のものが多く、観測ヘリコプターの航続距離と十倍以上の開きがあるとともに滞空時間が十数分から三十分未満のものが圧倒的に多いために、せめて現状の大きさを維持し滞空時間を二時間弱得られる機種が開発される程度に性能向上が必要です。

 欠点として航続距離がそもそも観測ヘリコプターとして用いるには重迫撃砲の射程程度にしか利用できず、野砲の射程は50㎞から100㎞まで延伸しようとしている現状では、まさか片道燃料の特攻の様な観測任務などは意味がなく、観測員を山頂などの観測点に運ぶのが限度、展開後の観測員は徒歩となり移動手段などを空輸する能力はありません。

 欠点である滞空時間と航続距離、速度も自動車が渋滞に巻き込まれるよりは早いのでしょうがヘリコプターの速度に達する機種は現状では飛行場の滑走路を用いる固定翼型だけで、航続距離と滞空時間はリチウムイオン電池の性能に左右、全固体電池など次の技術発展を待たなければ軍用としては観測ヘリコプターに勝る点はほぼ無い、しかしほぼ、とは。

 Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft、E-VTOLはこの略称でしてみての通り電動です。電動というのは自動車などではエンジンに代えてモーターを利用する点が内燃機関という技術領域への影響が危惧されていますが、航空機として見た場合、電動は複雑なエンジン整備を電動モーターはある程度払しょくでき、列線整備の負担を軽減しています。

 E-VTOLと観測ヘリコプターを比較した場合、大きな利点はまさにこの点でして、いわば飛行隊と野整備隊というヘリコプターは分遣隊運用を行う場合でも整備は整備隊の支援を受ける必要があり、独立して延々と数週間数か月間、燃料と簡単な天剣だけで野戦運用を続けられるものではありませんが、E-VTOLは整備負担が低くなっている点が大きい。

 本部管理中隊に飛行班を置いて、10名前後の部隊でも2機程度、任務機と予備機で運用することは、OH-6D観測ヘリコプターはもちろん、大昔に運用していたより小型で操縦士を含め2名しか乗れない着弾観測用のOH-55観測ヘリコプターでも難しいものがありましたが、E-VTOLならば操縦士と電源車整備員に列線整備員の10名程度で運用が可能だ。

 E-VTOLはいわゆるドローンとは異なり操縦士が搭乗可能です。もちろん機種によっては自律飛行を念頭としているものもあり、そもそもある程度自立飛行能力がなければ自動車免許とは別に小型飛行機免許、自動車として自走できないE-VTOLの方が多いでので、免許で簡単に飛ばせるものへの需要が多いことも事実ですが、操縦できるものもある。

 自律飛行専用機ですと、だれでも利用できるという利点はあるのですが、ここ数年で抜本的に進化しているドローン妨害技術により簡単に墜落する懸念が生じます、これはスタンドアローン無人機に対しても妨害技術が整備されているため、操縦士が載っていれば安全という訳ではなく、電子妨害に万全を期するならば観測ヘリコプターが必要となります。

 対ドローン技術が進歩しているのですが、主としてドローン妨害は920MHz、2.4GHz、5.7、5.8GHzといったWi-fi周波数帯を用いた民生ドローンに対しての妨害技術がまだ主流であり、マイクロ波等を用いてドローンの姿勢制御に用いる電子部品そのものを焼きつかせる技術はそれほど主流でなく、E-VTOLならば電子回路被膜など対抗策があり得る。

 赤外線誘導方式の携帯地対空ミサイルに対しては、もう一つE-VTOLならではの利点としましてあげますと、内燃機関を用いていないために赤外線放出量が観測ヘリコプターよりも小さいという利点もあるのかもしれません。もちろんモーターとバッテリーは放熱していますし、91式携帯地対空誘導弾のような赤外線画像追尾方式に対しては無力ですが。

 砲塔部分に欠点を列挙しましたが、本部管理中隊や大隊本部規模へ飛行班を配置できる利点は大きく、観測任務のほかに指揮官連絡として、数十km先の離島や艦上まで移動する運用や、孤立した観測員の移動や補給、遠隔観測機器の整備への人員移動などに活用できる余地はあり、薄く広く数百機を配備するならば、大きな威力を発揮するでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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