■週報:世界の防衛,最新11論点
自衛隊のC-2輸送機は現状を見るともう少し数を揃えた方が良いように思うが世界の情勢を見ますと別の視点も目に付く。今回は各国防衛産業の厳しい状況と国際情勢の厳しさに関する航空関連の話題です。
ブラジル空軍はエンブラエルKC-390空中給油輸送機の導入計画を大幅に下方修正する決定を下しました。ブラジル空軍はKC-390空中給油輸送機と当初28機導入する方針でしたが、長期計画の見直し等により導入する機体は22機へと下方修正されます。これは新しいブラジル国家予算計画の画定に際し、当初の計画数を導入できなくなった為とのこと。
エンブラエルKC-390空中給油輸送機は双発ジェット輸送機で搭載能力はC-130J輸送機程度ですが、巡航速度が大きく国際航空貨物路線をそのまま運用できる利点があり、輸送と空中給油に加え人道支援や病院飛行機と捜索救難任務に対応するとしています。なお、配備数の縮減となりましたが、生産は2034年まで続くため、極めて少数の量産となります。
■CV-22新型エンジンナセル
自衛隊が採用したオスプレイにもこの機能は反映されるものなのでしょうか。
アメリカ空軍のCV-22オスプレイ可動翼機は新型エンジンナセル仕様が納入されました。これはベルヘリコプターテキストロン社が開発していた改良型で、複雑な動力伝達軸を主翼に配置するV-22シリーズは、極めて高い巡航速度を有する半面、整備が煩雑であると共に整備不良が即座に墜落事故に直結する高性能の代償としての整備負担が指摘されている。
CV-22オスプレイ可動翼機は新型エンジンナセル仕様は、この動力伝達軸部分の整備負担がエンジンそのものの整備よりも負担として大きく、そして左右両翼に同じ水準の整備が必要で、整備全体の半分以上を占めています。従来型との外見上の識別点はハッチ開閉時の形状で、基本的にV-22シリーズの整備治具などはそのまま応用が可能となっています。
■ルーマニアMiG-21後継にF-35を
F-35の費用面と云う難しさを知ってしまいますとF-16という選択肢の方が堅実であるようにも思うのですが。
ルーマニアのヨハニス大統領は空軍近代化計画の一環にMiG-21戦闘機の後継としてF-35戦闘機導入に向けアメリカと交渉開始を表明しました。ルーマニア空軍は冷戦時代から運用しているMiG-21戦闘機の後継として現在、ポルトガルから中古のF-16戦闘機を17機導入していますが、2024年までに残るMiG-21戦闘機を退役させる計画となっている。
F-16戦闘機については2021年末に現在の17機に加えて更にノルウェー空軍からも中古の機体を導入する必要があるルーマニアのディンク国防相が表明しています、しかし、ヨハニス大統領の発言では、ロシアの軍事的脅威の進む現在の中東欧地域ではF-16戦闘機では能力が不充分であるとして、F-16増強に代えF-35戦闘機の導入が必要と表明したかたち。
F-35戦闘機について、ルーマニアの国家予算からは極めて厳しい選択肢ではあるものの、ルーマニア政府は防衛力強化に2026年までに110億ドルの国防費を投じる計画を示しており、また同時にルーマニアの隣国ウクライナの現状を見る限り、既にNATOに加盟しているルーマニアは調達できるうちにF-35を導入しなければならない切迫感があるのでしょう。
■インドネシアラファール42機導入
実際のところインドネシアはF-35が必要だと突然発表してアメリカ政府が先行して出されたF-15EXの打診に検討している間のこうしたラファール決定となりました。
インドネシア空軍は次期戦闘機としてラファール戦闘機42機の導入を決定しました。フランスはラファール売込みにフロランスパルリ国防大臣とダッソー社エリックトラピエ最高経営責任者がジャカルタでの機種選定決定調印式に臨みました。ラファールはF-35戦闘機との各国選定では苦戦を強いられていますが、今回アメリカはF-15EXを提示しました。
ラファール戦闘機42機のインドネシアへの輸出と共に、今回フランスはラファール操縦及び整備要員訓練支援、そしてインドネシア国内空軍基地におけるラファール運用基盤構築、またインドネシア国内の二箇所にラファール戦闘機地上シミュレータ施設建設、またラファール戦闘機の予備部品及び弾薬等を包括契約する方針ですが、金額などは未発表です。
ラファール戦闘機はインドネシアの世界最大の島嶼部国家での運用能力が評価された、インドネシア国防省国防施設庁のユスフジャウハリ長官は説明しています、その背景にはF-15EXの戦闘行動半径の広さより、艦載機として設計というラファールの運用基盤についての軽快である点が評価されたのでしょうか。なおF-15不採用は公式発表されていません。
■139億ドルF-15輸出白紙
間が悪いと言いますかなんといいますかボーイングには残念な結果といえる。
アメリカ政府はインドネシア政府が要請していたF-15戦闘機輸出を行き違いで許可しました。インドネシア政府は次期戦闘機の候補機としてアメリカのF-15EXイーグルⅡを情報要求し、アメリカ政府は36機のF-15EXと関連機材を139億ドルにより有償供与する事を許可しましたが、許可した時点でインドネシアは次期戦闘機にラファールを決定します。
F-15EX戦闘機は36機とF110-GE-129などエンジンを予備含め87基、AN/APG-82-AESAレーダー45基、ALQ-250-EPAWSS自衛装置45基とADCPデジタルコンピュータ48基、JHMCSヘルメットマウントディスプレイ80基、AAQ-33スナイパー照準装置40基等一式を含みます。商談は成立しませんでしたがF-15EX輸出価格として参考になるでしょう。
■AGM-88GAARGM-ER
昔はスーパーシュライクミサイルをファントムに搭載していた時代がありますが今はこういう。
アメリカのノースロップグラマン社はAGM-88GAARGM-ER対レーダーミサイルの空中発射試験を成功させました。これはカリフォルニア州沖にて1月21日に実施され、サンニコラス島に設置された地上目標を識別、命中し破壊しました。この実射試験はAGM-88GAARGM-ERの試験としては二回目となり、2023年に初度作戦能力獲得を期す。
AGM-88GAARGM-ERはハームミサイルシリーズの最新型で、従来のハームミサイルはレーダーを逆探知し、相手がレーダー照射を切った場合でも移動しない限り座標を記憶し攻撃しました、しかし、ハーム攻撃を検知し陣地変換した場合は対応できません。そこでAGM-88GAARGM-ERはミリ波レーダーを搭載、陣地変換後も攻撃が可能となりました。
■カイバルシェカン発射実験
自衛隊では従来”敵基地攻撃能力”と表現していたものを”反撃能力”と表現するのだとか。
イラン国防省は新型弾道ミサイルカイバルシェカンの発射実験に成功したと発表しました、カイバルシェカンとはペルシャ語で7世紀にユダヤ人との戦いに勝利した際の破城槌を示すもの、射程は1650kmでイラン西部地域からイスラエル本土を射程に収めており、従来イラン軍が開発していたシャハブ3と射程は同程度ですが、推進方式など更新された。
カイバルシェカンは固体燃料方式を採用し、液体燃料方式のシャハブ3よりも発射準備時間を六分の一に短縮し、軽量化により機動発射装置へ2発の搭載が可能となっています。イランの弾道ミサイルはアメリカの東欧におけるミサイル防衛システム整備の口実となっていますが、イランは射程を2000kmに抑える事で欧州諸国の批判を躱そうとしています。
■A-100AEW&Cがレーダー搭載飛行
電子機器などは日本含め西側の装備にかなり依存していた筈ですがウクライナ侵攻後の経済制裁下でどうするのだろう。
ロシアの新型早期警戒機A-100AEW&Cが初のレーダー搭載飛行を実現させました、UACロシア統一航空機製造公社が設計し、子会社のタガンログベリエフ航空機科学技術製造所が生産しているA-100AEW&Cは、元々ロシアがソ連時代から運用しているイリューシンIl-76輸送機派生のA-50早期警戒機後継であり、原型にIl-76MD-90Aを採用している。
A-100AEW&Cの初飛行は2022年2月9日に実施されました、原型のIl-76MD-90Aの初飛行は2019年でしたので、3年間でレーダー搭載試験を完了させたこととなります。その性能は基地から1000km離れた空域において六時間の空中警戒監視任務を行うというもので、ロシア航空宇宙軍は2024年までにA-100AEW&C開発を完了させる方針とのことです。
■ユーロファイター用ECRS2
F-2は試作機にも搭載していた水準、ユーロファイターは開発当初からAESAレーダーを搭載する計画が延々20年遅れているので重要内歩と云うべきか遅れ過ぎというべきか。
イタリアのレオナルド社はユーロファイター戦闘機用ECRS2レーダー開発を2億6000万ユーロで受注しました。ECRSとはEuropean Common Radar Systemの略称で、現在はMk1が運用中、このMk1はヘンゾルト社が主導し開発しているもので、2025年より既存のユーロファイター戦闘機新造分に搭載される事となるAESAレーダーとなっています。
ECRS2レーダーは前型がまだ開発中である最中の開発開始ですが、もともとユーロファイター戦闘機は2003年の運用開始までに当初はAESAレーダーを間に合わせる当初計画がありましたが、クウェートとカタールの導入分から実現、実質19年遅れて目処が立ったという時点で遅れを痛感します。ECRS2レーダーはドイツとスペインに採用される計画です。
■ドイツF-35を35機導入
内定していたスーパーホーネットを無かった事にされたボーイングは酷い目に遭ったという印象がある。
ドイツ空軍は新たに次期戦闘機としてF-35戦闘機35機の導入を発表しました。これは3月14日に報道されたもので、ドイツのショルツ首相は2月のロシア軍ウクライナ侵攻を受けドイツ国防費の大幅な増額を発表しており、NATO加盟国に求められる国防費GDP比率2%を超える1000億ユーロもの国防費を2022年予算に計上する決断を下しています。
ショルツ首相のドイツ防衛力強化指針を受けカレンバウアー国防相は、あらゆる選択肢を検討した結果、として老朽化したトーネード攻撃機の後継にF-35戦闘機を選定したとのこと。トーネード攻撃機はドイツ空軍における現在唯一の核爆撃能力を持つ航空機であり、有事の際にはニュークリアシェアリングに基づく核爆撃を担当する重要な航空機です。
■ドイツ空軍はユーロファイターも
ボーイングとドイツ軍需産業との提携強化する程に採用を内定し次の段階に進めたのだからスーパーホーネットを購入する義務と云うか道義的責任もあるよう思うのだが。
ドイツ空軍はF-35戦闘機と共にユーロファイター戦闘機15機を導入します、これはF-35戦闘機導入と同じく3月14日に報道されたもので、ユーロファイター戦闘機は新規ではなく増強、ドイツ空軍が運用するファントム戦闘機の後継として導入を開始し、多目的戦闘機としての能力を有する事から部分的にトーネード攻撃機の代替としても機能しています。
ユーロファイター戦闘機については当初導入計画を修正せず継続調達した構図となっていますが、ドイツ空軍の戦闘機調達計画、先ず当初はトーネード攻撃機の後継機にはアメリカ製F/A-18E/F戦闘攻撃機を予定、取得費用を抑える事でフランスとの次期戦闘機開発費を捻出する構想でした。これら両立は大幅に増額した国防費にて三本並行するのでしょう。
F-35とユーロファイター戦闘機を両方同時に調達する方針ですが、ドイツ政府とドイツ空軍ではF-35の導入に際し大きな摩擦が生じており、過去にフランスが難色を示したF-35導入を主張した空軍将官を事実上更迭する騒動を経てF/A-18E/F戦闘機を採用した一幕がありました。F/A-18E/Fは導入中止となりますが、ボーイングとも摩擦が生じるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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自衛隊のC-2輸送機は現状を見るともう少し数を揃えた方が良いように思うが世界の情勢を見ますと別の視点も目に付く。今回は各国防衛産業の厳しい状況と国際情勢の厳しさに関する航空関連の話題です。
ブラジル空軍はエンブラエルKC-390空中給油輸送機の導入計画を大幅に下方修正する決定を下しました。ブラジル空軍はKC-390空中給油輸送機と当初28機導入する方針でしたが、長期計画の見直し等により導入する機体は22機へと下方修正されます。これは新しいブラジル国家予算計画の画定に際し、当初の計画数を導入できなくなった為とのこと。
エンブラエルKC-390空中給油輸送機は双発ジェット輸送機で搭載能力はC-130J輸送機程度ですが、巡航速度が大きく国際航空貨物路線をそのまま運用できる利点があり、輸送と空中給油に加え人道支援や病院飛行機と捜索救難任務に対応するとしています。なお、配備数の縮減となりましたが、生産は2034年まで続くため、極めて少数の量産となります。
■CV-22新型エンジンナセル
自衛隊が採用したオスプレイにもこの機能は反映されるものなのでしょうか。
アメリカ空軍のCV-22オスプレイ可動翼機は新型エンジンナセル仕様が納入されました。これはベルヘリコプターテキストロン社が開発していた改良型で、複雑な動力伝達軸を主翼に配置するV-22シリーズは、極めて高い巡航速度を有する半面、整備が煩雑であると共に整備不良が即座に墜落事故に直結する高性能の代償としての整備負担が指摘されている。
CV-22オスプレイ可動翼機は新型エンジンナセル仕様は、この動力伝達軸部分の整備負担がエンジンそのものの整備よりも負担として大きく、そして左右両翼に同じ水準の整備が必要で、整備全体の半分以上を占めています。従来型との外見上の識別点はハッチ開閉時の形状で、基本的にV-22シリーズの整備治具などはそのまま応用が可能となっています。
■ルーマニアMiG-21後継にF-35を
F-35の費用面と云う難しさを知ってしまいますとF-16という選択肢の方が堅実であるようにも思うのですが。
ルーマニアのヨハニス大統領は空軍近代化計画の一環にMiG-21戦闘機の後継としてF-35戦闘機導入に向けアメリカと交渉開始を表明しました。ルーマニア空軍は冷戦時代から運用しているMiG-21戦闘機の後継として現在、ポルトガルから中古のF-16戦闘機を17機導入していますが、2024年までに残るMiG-21戦闘機を退役させる計画となっている。
F-16戦闘機については2021年末に現在の17機に加えて更にノルウェー空軍からも中古の機体を導入する必要があるルーマニアのディンク国防相が表明しています、しかし、ヨハニス大統領の発言では、ロシアの軍事的脅威の進む現在の中東欧地域ではF-16戦闘機では能力が不充分であるとして、F-16増強に代えF-35戦闘機の導入が必要と表明したかたち。
F-35戦闘機について、ルーマニアの国家予算からは極めて厳しい選択肢ではあるものの、ルーマニア政府は防衛力強化に2026年までに110億ドルの国防費を投じる計画を示しており、また同時にルーマニアの隣国ウクライナの現状を見る限り、既にNATOに加盟しているルーマニアは調達できるうちにF-35を導入しなければならない切迫感があるのでしょう。
■インドネシアラファール42機導入
実際のところインドネシアはF-35が必要だと突然発表してアメリカ政府が先行して出されたF-15EXの打診に検討している間のこうしたラファール決定となりました。
インドネシア空軍は次期戦闘機としてラファール戦闘機42機の導入を決定しました。フランスはラファール売込みにフロランスパルリ国防大臣とダッソー社エリックトラピエ最高経営責任者がジャカルタでの機種選定決定調印式に臨みました。ラファールはF-35戦闘機との各国選定では苦戦を強いられていますが、今回アメリカはF-15EXを提示しました。
ラファール戦闘機42機のインドネシアへの輸出と共に、今回フランスはラファール操縦及び整備要員訓練支援、そしてインドネシア国内空軍基地におけるラファール運用基盤構築、またインドネシア国内の二箇所にラファール戦闘機地上シミュレータ施設建設、またラファール戦闘機の予備部品及び弾薬等を包括契約する方針ですが、金額などは未発表です。
ラファール戦闘機はインドネシアの世界最大の島嶼部国家での運用能力が評価された、インドネシア国防省国防施設庁のユスフジャウハリ長官は説明しています、その背景にはF-15EXの戦闘行動半径の広さより、艦載機として設計というラファールの運用基盤についての軽快である点が評価されたのでしょうか。なおF-15不採用は公式発表されていません。
■139億ドルF-15輸出白紙
間が悪いと言いますかなんといいますかボーイングには残念な結果といえる。
アメリカ政府はインドネシア政府が要請していたF-15戦闘機輸出を行き違いで許可しました。インドネシア政府は次期戦闘機の候補機としてアメリカのF-15EXイーグルⅡを情報要求し、アメリカ政府は36機のF-15EXと関連機材を139億ドルにより有償供与する事を許可しましたが、許可した時点でインドネシアは次期戦闘機にラファールを決定します。
F-15EX戦闘機は36機とF110-GE-129などエンジンを予備含め87基、AN/APG-82-AESAレーダー45基、ALQ-250-EPAWSS自衛装置45基とADCPデジタルコンピュータ48基、JHMCSヘルメットマウントディスプレイ80基、AAQ-33スナイパー照準装置40基等一式を含みます。商談は成立しませんでしたがF-15EX輸出価格として参考になるでしょう。
■AGM-88GAARGM-ER
昔はスーパーシュライクミサイルをファントムに搭載していた時代がありますが今はこういう。
アメリカのノースロップグラマン社はAGM-88GAARGM-ER対レーダーミサイルの空中発射試験を成功させました。これはカリフォルニア州沖にて1月21日に実施され、サンニコラス島に設置された地上目標を識別、命中し破壊しました。この実射試験はAGM-88GAARGM-ERの試験としては二回目となり、2023年に初度作戦能力獲得を期す。
AGM-88GAARGM-ERはハームミサイルシリーズの最新型で、従来のハームミサイルはレーダーを逆探知し、相手がレーダー照射を切った場合でも移動しない限り座標を記憶し攻撃しました、しかし、ハーム攻撃を検知し陣地変換した場合は対応できません。そこでAGM-88GAARGM-ERはミリ波レーダーを搭載、陣地変換後も攻撃が可能となりました。
■カイバルシェカン発射実験
自衛隊では従来”敵基地攻撃能力”と表現していたものを”反撃能力”と表現するのだとか。
イラン国防省は新型弾道ミサイルカイバルシェカンの発射実験に成功したと発表しました、カイバルシェカンとはペルシャ語で7世紀にユダヤ人との戦いに勝利した際の破城槌を示すもの、射程は1650kmでイラン西部地域からイスラエル本土を射程に収めており、従来イラン軍が開発していたシャハブ3と射程は同程度ですが、推進方式など更新された。
カイバルシェカンは固体燃料方式を採用し、液体燃料方式のシャハブ3よりも発射準備時間を六分の一に短縮し、軽量化により機動発射装置へ2発の搭載が可能となっています。イランの弾道ミサイルはアメリカの東欧におけるミサイル防衛システム整備の口実となっていますが、イランは射程を2000kmに抑える事で欧州諸国の批判を躱そうとしています。
■A-100AEW&Cがレーダー搭載飛行
電子機器などは日本含め西側の装備にかなり依存していた筈ですがウクライナ侵攻後の経済制裁下でどうするのだろう。
ロシアの新型早期警戒機A-100AEW&Cが初のレーダー搭載飛行を実現させました、UACロシア統一航空機製造公社が設計し、子会社のタガンログベリエフ航空機科学技術製造所が生産しているA-100AEW&Cは、元々ロシアがソ連時代から運用しているイリューシンIl-76輸送機派生のA-50早期警戒機後継であり、原型にIl-76MD-90Aを採用している。
A-100AEW&Cの初飛行は2022年2月9日に実施されました、原型のIl-76MD-90Aの初飛行は2019年でしたので、3年間でレーダー搭載試験を完了させたこととなります。その性能は基地から1000km離れた空域において六時間の空中警戒監視任務を行うというもので、ロシア航空宇宙軍は2024年までにA-100AEW&C開発を完了させる方針とのことです。
■ユーロファイター用ECRS2
F-2は試作機にも搭載していた水準、ユーロファイターは開発当初からAESAレーダーを搭載する計画が延々20年遅れているので重要内歩と云うべきか遅れ過ぎというべきか。
イタリアのレオナルド社はユーロファイター戦闘機用ECRS2レーダー開発を2億6000万ユーロで受注しました。ECRSとはEuropean Common Radar Systemの略称で、現在はMk1が運用中、このMk1はヘンゾルト社が主導し開発しているもので、2025年より既存のユーロファイター戦闘機新造分に搭載される事となるAESAレーダーとなっています。
ECRS2レーダーは前型がまだ開発中である最中の開発開始ですが、もともとユーロファイター戦闘機は2003年の運用開始までに当初はAESAレーダーを間に合わせる当初計画がありましたが、クウェートとカタールの導入分から実現、実質19年遅れて目処が立ったという時点で遅れを痛感します。ECRS2レーダーはドイツとスペインに採用される計画です。
■ドイツF-35を35機導入
内定していたスーパーホーネットを無かった事にされたボーイングは酷い目に遭ったという印象がある。
ドイツ空軍は新たに次期戦闘機としてF-35戦闘機35機の導入を発表しました。これは3月14日に報道されたもので、ドイツのショルツ首相は2月のロシア軍ウクライナ侵攻を受けドイツ国防費の大幅な増額を発表しており、NATO加盟国に求められる国防費GDP比率2%を超える1000億ユーロもの国防費を2022年予算に計上する決断を下しています。
ショルツ首相のドイツ防衛力強化指針を受けカレンバウアー国防相は、あらゆる選択肢を検討した結果、として老朽化したトーネード攻撃機の後継にF-35戦闘機を選定したとのこと。トーネード攻撃機はドイツ空軍における現在唯一の核爆撃能力を持つ航空機であり、有事の際にはニュークリアシェアリングに基づく核爆撃を担当する重要な航空機です。
■ドイツ空軍はユーロファイターも
ボーイングとドイツ軍需産業との提携強化する程に採用を内定し次の段階に進めたのだからスーパーホーネットを購入する義務と云うか道義的責任もあるよう思うのだが。
ドイツ空軍はF-35戦闘機と共にユーロファイター戦闘機15機を導入します、これはF-35戦闘機導入と同じく3月14日に報道されたもので、ユーロファイター戦闘機は新規ではなく増強、ドイツ空軍が運用するファントム戦闘機の後継として導入を開始し、多目的戦闘機としての能力を有する事から部分的にトーネード攻撃機の代替としても機能しています。
ユーロファイター戦闘機については当初導入計画を修正せず継続調達した構図となっていますが、ドイツ空軍の戦闘機調達計画、先ず当初はトーネード攻撃機の後継機にはアメリカ製F/A-18E/F戦闘攻撃機を予定、取得費用を抑える事でフランスとの次期戦闘機開発費を捻出する構想でした。これら両立は大幅に増額した国防費にて三本並行するのでしょう。
F-35とユーロファイター戦闘機を両方同時に調達する方針ですが、ドイツ政府とドイツ空軍ではF-35の導入に際し大きな摩擦が生じており、過去にフランスが難色を示したF-35導入を主張した空軍将官を事実上更迭する騒動を経てF/A-18E/F戦闘機を採用した一幕がありました。F/A-18E/Fは導入中止となりますが、ボーイングとも摩擦が生じるでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)