北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】F/A-XX第六世代戦闘機始動と独仏次世代戦闘機FCAS計画進展,台湾F-16V供与

2020-10-05 20:20:06 | インポート
■週報:世界の防衛,最新9論点
 今回の防衛情報は戦闘機に重点を置き最新情勢を。アメリカと欧州の第六世代戦闘機開発と第五世代戦闘機や第4.5世代戦闘機の話題などです。まずはF-35墜落事故の話題から。

 アメリカ海兵隊のF-35Bが9月29日、墜落しました。F-35Bの墜落による喪失は今回が初めてです。事故は第3海兵航空団第121海兵攻撃飛行隊と第352海兵空中給油飛行隊所属機のもので、エルトロ海兵航空基地を訓練発進したF-35B戦闘機が夜間の空中給油訓練に際しKC-130J空中給油機と接触、そのまま機体姿勢を崩したまま墜落したとのこと。

 F-35BとKC-130Jの衝突、幸い、F-35B操縦士は脱出に成功し無事救出されたとのことです。F-35Bの墜落事故は初めてですが、2020年に入りアメリカ空軍はF-35Aを事故により喪失しており、これは航空自衛隊のF-35A墜落事故に続く喪失となっています。KC-130Jについてなお今回の事故ではカリフォルニア州サーマル郊外の路外に緊急着陸しています。

 KC-130Jは四基のエンジンの内三基がブレード損傷という深刻な状態となっており、墜落時の航空管制との通信では、二基のエンジンと空中給油装置に衝突死燃料漏れが発生すると共に空中火災が発生した、として緊急事態を宣言しています。墜落に至らなかったのは幸いです。事故はアメリカン航空の民航機に目撃されていますが、不随被害はありません。
■スーパーホーネット後継計画
 アメリカではスーパーホーネットを置き換える第六世代戦闘機開発計画が本格化しました。

 アメリカ海軍はNAVAIR海軍航空システム司令部にF/A-18E/Fスーパーホーネット後継第六世代戦闘機計画へプログラムオフィスを立ち上げたとのこと。第六世代戦闘機計画は2010年代から研究が進められていますが海軍としてはF-35C戦闘機に全てを統合するのではなく新型戦闘機の開発を計画しています。この部署はNGADプログラムオフィスという。

 空母航空団に対し海軍はF-35戦闘機の戦闘行動半径700浬を不十分と考えており、第六世代戦闘機は少なくとも1000浬の戦闘行動半径を持たせる展望だ。新型機はF/A-18Eと同じボーイングが2021年会計年度から今後5年間で45億ドル程度を開発費に充て、2020年1月議会報告では、670億ドルを投じ2032年から2050年までの間に量産を行う展望です。

 F-35を生産するロッキードマーティン社は手堅い案として、ボーイングF/A-18EにF-35の技術を応用しステルス性よりも兵装搭載能力に特化した新型機等を提案しているとのこと。2030年代後半にF/A-18E/Fスーパーホーネット初期の機体が耐用年数限界を迎え2040年代にはEA-18Gグロウラー電子攻撃機についても順次耐用年数を迎える事となります。
■FCAS,独仏第六世代機
 FCASはまだかたちになっていないために例によって困ったときのX-2実験機の写真にて代用しますが、独仏でも次世代機が開発中です。

 独仏次世代戦闘機FCAS計画へドイツ空軍がネットワーク実証実験を実施したとのこと。この試験にはドイツ空軍が運用するユーロファイタータイフーン戦闘機にエアバス社が開発したCANDL戦術戦闘機用ネットワークシステムを搭載し、戦術データリンクを行うもので今回はトーネード攻撃機に対して実施、空域戦闘情報共有に成功したと発表しました。

 CESMO協同電子戦能力の付与は次の課題となっていまして、これはデータリンクに参画する各航空機の電子戦能力、電子妨害や対電子戦は勿論のこと電子標定能力も含め連接する事で、戦域単位でレーダー情報や脅威情報を共有する能力の整備という。この為にドイツ空軍とエアバス社は電子戦型のトーネードECRを加えての開発試験を継続する計画です。
■開発国オランダに初のF-35
 F-35は国際共同開発となっていますが、日本は武器輸出三原則の関係から不参加ながらどう駆け引きが在ったのか相当有利に且つ早くF-35を導入しています。

 オランダ空軍に初のF-35A戦闘機が配備された、最初のF-35戦闘機は3機でリューデン空軍基地へ到着し祝賀行事が行われた。現在オランダは8機のF-35A予算を計上し間もなく残る5機も到着するが、最終的に37機を調達する。欧州ではイギリスとイタリア及びノルウェーが既にF-35導入を開始しており、デンマーク空軍の導入も決定、時期は未定だ。

 F-35の開発に際してオランダはレベル2開発パートナーだ。開発は主開発国であるアメリカと開発に際し要求仕様へ関与できるレベル1開発国イギリス、主要部分の部品生産に参画するレベル2開発国のイタリアとオランダ、一部部品生産に関与するレベル3開発国のカナダ、トルコ、オーストラリア、ノルウェー、デンマークが分担、更に優先顧客がある。

 JSF統合打撃戦闘機として開発が進められたF-35はその開発期間長期化と共に当初は補助的な第五世代戦闘機としての位置づけから第五世代戦闘機の代表例へ要求性能が強化されたが、その分だけ開発期間が長期化しており製造費用も高騰、開発参加国の中には導入を躊躇する実例もあり、例えば日本のように開発国よりも先に運用開始となった事例もある。
■ブラジルJAS-39導入最終段階
 JAS-39の使える写真が手元に無い為に写真だけは同世代機で代用します。

 ブラジル空軍は八月下旬に初めてJAS-39戦闘機による飛行訓練を実施したとのこと。ブラジル空軍は旧式化するA-4スカイホーク攻撃機の後継としてスウェーデンより最新のJAS-39戦闘機の導入を決定し2014年に契約に至りました。ブラジル空軍が運用するJAS-39は最新のグリペンNGで、ブラジル空軍は36機のJAS-39を導入する計画です。

 JAS-39訓練飛行はシミュレータでの綿密な訓練を経てスウェーデン国内で実施され、飛行訓練はバルト海上空にて実施、50分間の飛行を行ったとしています。ブラジルではサーブ社との合弁会社が設立され、JAS-39の一部をノックダウン生産すると共に国内での重整備等も実施します。なおブラジル空軍ではJAS-39はF-39戦闘機として運用される計画です。
■台湾F-16V輸出正式決定
 F-16V,日本のF-2も運用者から反論はあっても毎年8機づつでも量産継続していればこう発展できたのかもしれません。写真はF-2とかF-16とか。

 アメリカ政府は8月14日、台湾へF-16V戦闘機66機の有償供与が正式に許可したと国防総省が発表しました。これは国務省が発表した90機のF-16V戦闘機に関する内訳で、台湾の66機とともにのこる23機については同時期にF-16Vの導入を発表しているモロッコ空軍の所要であると考えられています。台湾への配備は2026年までに完了する見込み。

 F-16VはF-16シリーズ最新型ですが、従来の安価な戦闘機や高級F-15戦闘機とのハイローミックスでのローの認識を大きく超えた機体で、先ずレーダーはAN/APG-83-AESAレーダーを採用、これはF-35戦闘機に搭載されているAN/APG-81-AESAレーダーのアンテナ部分を共有しておりF-16EのAPG-66と比較した場合で探知能力は220%伸びています。

 F-16ではありますが機体構造を強化再設計した事で耐用飛行時間は12000時間まで延伸しています。もっとも高性能の代償は取得費用の高さであり、台湾がF-16Vの66機導入を発表した際に提示された費用は80億ドル、当時のレートで邦貨換算8500億円にも達します、しかしF-35を除けばまぎれもない最新鋭機であり、台湾の防空能力は大きく向上します。
■インドラファール初任務
 日本と同じように中国の軍事圧力に曝されるインドはフランスから導入した最新戦闘機を早速第一線に配備しました。写真は日本とアメリカのもの。

 インド空軍は8月9日、中印国境付近にてラファール戦闘機夜間訓練を開始したと発表しました。訓練を実施したのはヒマラヤプランジェフ地方で、この地域に隣接する国境地域では中国人民解放軍兵士によるインド兵大量撲殺事件が発生して後、緊張状態が続いています。ラファール戦闘機の納入から二週間を経ずして訓練が開始されるのは異例です。

 ラファール戦闘機は4.5世代戦闘機であり、インド空軍のこれまでの最新戦闘機は第四世代戦闘機改良型であるロシア製Su-30であったことから、インド空軍最新戦闘機としてラファールへ寄せる期待は大きなものとなっており、ラファールはステルス機ではありませんがレーダー反射性を極小とする低視認性設計が採用、レーダーに映り難いのが特色です。

 中印国境地域では高山部に中国人民解放軍が設置したチベットのラサゴンガル基地と新疆のホータン基地レーダーがインド軍戦闘機に対して脅威を及ぼしており、巨大なSu-30戦闘機と比較しレーダー反射面積の小さなラファール戦闘機は探知距離の低減が期待され、インド空軍はラファールの半数をブータン近くのハシマラ基地へ配備する予定とのこと。
■基地狙う中国クラスター兵器
 中国はクラスター弾全廃条約に加盟していない為にクラスター兵器を自由に開発を続けています。

 中国国内報道によれば中国空軍は滑走路攻撃用の新型クラスター兵器開発に着手した。新型クラスター兵器はJH-7戦闘爆撃機やJ-16戦闘機等に搭載し、滑走路などに多数の子爆弾を集中投下する事で一回の航過飛行により加害半径1m程度の損傷を与えると共に複数の不発弾を発生させ、飛行場滑走路などを一定期間使用不能とさせるクラスター兵器だ。

 新型クラスター兵器は投下し集束爆弾を展開させるのではなく機体搭載の本体から子弾を散布する方式で、これはクラスター兵器の中でもディスペンサー兵器に区分される。中国国内報道によれば240発を本体に格納、6000平方米を破壊する。滑走路破壊以外に軽装甲車狙う子弾等6種類が開発され、対人地雷全廃条約に抵触し得るが中国は批准していない。

 JP-223ディスペンサー兵器、中国が今回開発する兵器と同種のものは冷戦時代にトーネード攻撃機搭載用に同種の兵器が開発され運用されたほか、第二次世界大戦でのドイツ空軍によるソ連飛行場奇襲攻撃でも同種のクラスター兵器が基地機能破壊へ用いられている。クラスター兵器全廃条約により禁止されている兵器だが中国はこの条約に加盟していない。
■ロシア,ベア爆撃機更なる改修
 ベア、熊スクランブルと呼ばれるように日本にとってはファントムやマルヨン時代以来の付き合いがある爆撃機の改良に関する話題です。

 ロシア航空宇宙軍向けのTu-95MSM戦略爆撃機近代化改修型が8月22日にユナイテッドエアクラフトコーポレーションのタガンログ工場よりロールアルトしたとのこと。23日には2時間33分にわたる飛行試験を実施、良好な成果を上げたとしている。Tu-95通称ベアは冷戦時代の二重反転ターボプロップ方式戦略爆撃機でアメリカのB-52と並ぶ老兵だ。

 Tu-95MSM戦略爆撃機は新型のクズネツォフNK-12MPMターボプロップエンジンへ換装しエンジン出力を強化するとともにTu-95シリーズ最大の課題である巨大な騒音と振動の低減を図っており、この他NV1.021フェーズドアレイレーダーや新開発のNM2電子妨害装置を搭載した。Tu-95は長命であるとともにターボプロップ機として驚異的速度を誇る。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【日曜特集】中部方面隊創隊... | トップ | 検証:防衛省令和3年度概算要... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

インポート」カテゴリの最新記事