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検証:防衛省令和3年度概算要求5兆4897億円(1)新型コロナCOVID-19下一ヶ月遅れ開示

2020-10-06 20:00:44 | 国際・政治
■多次元統合防衛力整備へ前進
 来年度の防衛予算に関する概算要求が例年より大きく後倒しして開示されました、今回から数回に分けて視てゆく事としましょう。

 9月30日、令和3年度概算要求が発表されました。今年度は安倍政権から菅政権への政権交代、そして新型コロナウィルスCOVID-19感染拡大などの諸事情から例年よりも一ヶ月程度遅れる、という状況です。令和2年度予算は5兆0688億円として成立していますが、来年度予算は厳しい安全保障情勢を受け5兆4897億円という規模にて要求されています。

 多次元統合防衛力整備、新防衛大綱にもとづく新体系への転換中ですが、来年度予算概算要求は予算規模だけではなく幾つかの注目点がありますが、もっとも特筆すべき点はCOVID-19新型コロナウィルス禍下における景気後退の懸念がある最中であっても防衛費は大きく縮減できない現状、安全保障環境の厳しさが端的に現れているといえるでしょう。

 CPEC常続的陸上自衛隊展開訓練構想。来年度予算の興味深い点は、装備や施設などを従来の、新制度をふまえつつ現状の更新に重点を置いた、整備方式から新しい制度への転換を多分に踏まえた、防衛大綱を流動化させた防衛力整備が行われる点に挙げられます。これは大綱での多次元統合防衛力整備枠内において、細部の冗長性を持たせた結果といえる。

 CPEC,この概念は戦車や自走火砲の重点的配備を受けた北海道の総合近代化師団を従来は南西有事に際して迅速に機動展開させ脅威排除を念頭としていましたが、新しいCPEC構想では九州沖縄地域に一部部隊を訓練名目にてローテーション展開させ、有事に際しては重装備の戦略展開という、一種の脆弱性、これを省略し文字通り即応を実現するもの。

 南西地域への常時持続的な訓練展開は西部方面隊管内の中でもすでに部隊が駐屯し即応体制のとられている九州本島ではなく、島嶼地域に対し実施する構想と概算要求には記されており、これは本年北部方面隊が大々的に実施した総合近代化師団による島嶼部防衛演習が示すとおり、90式戦車や10式戦車を島嶼部に配置する運用の具現化といえるものです。

 ゲームチェンジャー技術開発の促進。ゲームチェンジャーとは従来の概念を一新する革新的な装備を示し、近年では小型無人機などが従来の歩兵戦闘はもちろん、航空優勢という概念に地上と上空の中間空域という高度数十mを専用空域とする装備体系があらゆる戦闘領域の概念を覆すものとして注目されています。来年度予算はここに挑戦するという。

 ドローン対処レーザーシステムの実証実験、艦艇用HPM高出力マイクロ波発生装置の研究、スタンドオフ電子戦機の開発、来年度予算が目指すゲームチェンジャー装備品の一例はこう云ったものが挙げられ、自衛隊、具体的にはドローンを活用するよりも、技術的奇襲といえるドローン技術の普及に伴い、この奇襲脆弱性を払拭する技術に重点化されようです。

 スタンドオフ電子戦機には原型機としてC-2輸送機が想定され、またRC-2としてC-2輸送機二号機の電子偵察機への改修も進んでいます、C-2輸送機は輸送効率の高さなどから第一線輸送航空部隊への量産計画が下方修正されることとなりましたが、スタンドオフ電子戦機とRC-2,これによりC-2輸送機の派生型の生産がこの機種の幅を広げる事となります。

 技術的奇襲性とは、相手が意図しない技術により得られるものであり、ドローンは正規軍についてはもちろんですが、小型ドローンについては貧者の空軍として長距離打撃力の一端を構成するに至っています。しかし当初指摘されたのは正規軍同士の戦闘では電子戦能力に上限があるドローンは、用途が限られる、脆弱性はシリア内戦でも証明されました。

 ゲームチェンジャーとしての装備は、今後予想されるスウォーム攻撃のような小型無人機飽和攻撃への広範な対処能力を整備するとともに、中間空域へも航空優勢という概念を相手に強要する、という観点が考えられます。一方、電子戦機、EA-18Gなどの実例がありますが、C-2という大型機を母体とすることで戦略的用途を見込んでいるのかもしれません。

 いずも型護衛艦の改修。実のところ本命のゲームチェンジャーとは、従来の護衛艦に第五世代戦闘機を搭載し、本来であれば五万トン規模の大型艦でなければ運用不可能であった最新世代の戦闘機を、小さくはないとはいえ駆逐艦、全通飛行甲板型護衛艦にF-35Bを搭載、様々な方面へ機動的に運用できることはゲームチェンジャーとしての重要な資質です。

 かが、いずも、この全通飛行甲板型護衛艦に関してはF-35B戦闘機搭載へ甲板形状、艦首部分は現在甲板長を最大限活かせない形状となっている点が指摘されていまして、来年度予算の要求を視てゆきますと、200億円以上を投じ、外見を一新する程、短距離発艦を想定した形状へ大きく改修されるようですが、この点については次回視てゆく事としましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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1 コメント

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Unknown (軍事オタク)
2020-10-12 18:50:21
RC-2は限定的なのかもしれないが電波妨害機能もあるみたいだけど事実かな?
あると自分は信じてますが
どうなんでしょうね?
本当ならRC-2は限定的な電波妨害で、今後開発するスタンドオフ電波妨害機はかなり遠方からの多方面かつ多種の目標に対して電波妨害可能なんですかね?

http://tokyoexpress.info/2018/05/18/%E9%98%B2%E8%A1%9B%E7%9C%81%E3%80%81%E6%96%B0%E5%9E%8B%E9%9B%BB%E5%AD%90%E6%88%A6%E6%83%85%E5%A0%B1%E5%8F%8E%E9%9B%86%E6%A9%9F%E3%81%AE%E9%96%8B%E7%99%BA%E3%81%AB%E5%8F%96%E3%82%8A%E7%B5%84%E3%82%80/
この記事に記載がありましたが、
今日は防衛省の原本は確認できませんでした。

今回改修したC-2電子戦情報収集機はC-2輸送機の試作2号機。防衛省の平成17年度事業事後評価報告によると、本機は『高度に自動化したシステムを搭載し、敵が発するあらゆる情報とデータを収集・処理・伝送する。また、機首、胴体上面と側面、垂直尾翼頂部のフェアリング内に各種アンテナを配置し、遠距離から広周波帯信号を捕捉・遮断し、敵目標の方位を探知する能力を持つ』と記されている。

すなわち、本機は敵からの「電磁気信号の収集(collection of electromagnetic signals)」機能だけでなく、電子信号を妨害する「ジャミング(jamming)」機能を併せ持つ「多機能型電子戦機」と解釈できる。
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