北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

防衛省平成二九年度予算概算要求の検証【11】 弾道ミサイル攻撃及び特殊部隊攻撃への対応

2016-11-21 21:59:54 | 国際・政治
■弾道ミサイル防衛体制整備
 防衛省平成二九年度予算概算要求の検証、今回は弾道ミサイル攻撃及び特殊部隊攻撃への対応についてです。

 弾道ミサイル攻撃への対応。各種事態への実効的抑止力整備及び対処、もう一つの重要施策は弾道ミサイル攻撃への対応能力の整備です。年々、北朝鮮によるミサイル開発が進むと共に、概算要求では具体的な国名は示されていませんが、日中関係悪化は対日核攻撃を含む重大な脅威、反撃や事前攻撃を選択肢に含めない平和国家の重要施策といえましょう。

 概算要求において“弾道ミサイル攻撃に対し、我が国全体を多層的かつ持続的に防護する体制を強化する。弾道ミサイル攻撃に併せ、同時並行的にゲリラ・特殊部隊による攻撃に対応する態勢を整備する。”としており、弾道ミサイル防衛に加えて、ミサイル防衛施設やミサイル防衛部隊に対する複合的な攻撃への対処能力も併せて整備される事となりました。

 弾道ミサイル防衛関連経費1872億円、要求されています。その細部ですが、イージスシステム搭載護衛艦の能力向上へ1隻分の121億円、 BMD用能力向上型迎撃ミサイルSM-3ブロック2Aの日米共同開発費用へ3億円、イージスシステム搭載護衛艦に搭載するBMD用能力向上型迎撃ミサイルSM-3ブロックIIAの日米共同開発についても継続されます。

 イージス艦関連ではBMD用能力向上型迎撃ミサイルSM-3ブロック2Aの取得に147億円が要求され、イージスシステム搭載護衛艦に搭載するBMD用能力向上型迎撃ミサイルSM-3ブロックⅡAを取得します。SM-3の射程は大きく、日本本土上空到達以遠の洋上において無力化するものですが、内側については航空自衛隊とペトリオットが迎撃に当たる。

 ペトリオット関連では、能力向上型迎撃ミサイルPAC-3MSEの導入等の費用に1056億円が要求されました、PAC-3MSEは従来のPAC-3の射程が15kmと対航空機用のPAC-2が有する100km以上の射程と比較し、非常に短射程となっていた点を改良したものです。もともとPAC-3は急浮上しました弾道ミサイルへの緊急的な対応策として開発されました。

 PAC-3MSEにより射程が延伸し防空区域の拡大と対航空任務併用が可能となります、PAC-3MSEミサイルを運用するべく換装改修を実施し、弾道ミサイル対処能力等を向上する費用を987億円、PAC-3MSEの取得に69億円、PAC-3ミサイルの整備など再保証へ84億円が要求されました。将来の弾道ミサイル迎撃体制について調査研究も要求されました。

 ゲリラ特殊部隊による攻撃への対応、これは弾道ミサイル防衛とは一見無関係に見える施策ですが、我が国周辺には大規模な特殊部隊を正規軍部隊として編成し、持している諸国があり、弾道ミサイル攻撃を我が国に対して実施する場合において、特殊部隊によるミサイル防衛部隊や関連施設、日米基地等重要施設攻撃と並行される可能性が高い為でしょう。

 要求装備等は、化学剤検知器33個2億円、16式機動戦闘車の取得、 軽装甲機動車9両の取得4億円、個人用装備の取得として具体的には89式小銃2300丁の取得9億円、等が挙げられています。16式機動戦闘車は機動旅団所要の物を示すとのこと。89式小銃については陸上自衛隊所要に加え、航空自衛隊海上自衛隊の警備部隊や陸警隊所要の64式小銃後継装備も含まれている可能性があります。

北大路機関:はるな くらま
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検証:イラク派遣と駆け付け警護【前篇】僥倖だったイラク展開自衛隊梯団と護衛オランダ軍

2016-11-20 22:50:00 | 国際・政治
■自衛隊人道支援と蘭軍治安維持
 安全保障関連法施行により自衛隊による駆け付け警護が可能となりました、発動要件や装備等能力面の課題は多いものの、これまでは超法規措置という判断を第一線部隊指揮官へ突き付けていた状況からは、脱却できた点で評価すべきでしょう。

 自衛隊の駆け付け警護は今回南スーダンへ派遣される第9師団派遣部隊より正式に防衛大臣命令により発令される事となりましたが、2004年5月10日、陸上自衛隊は実質的に超法規措置に近い判断を迫られた事がありました、場所はイラク、戦死者が出ず奇跡的と云われたイラクへの自衛隊派遣の最中、指揮官が超法規措置を迫られる瞬間があったのです。

 前置きしたいのは、イラク派遣において自衛隊の駆けつけ警護事案は発生しませんでした、発動したのは邦人保護法100条のみ。ただ、自衛隊が派遣されたサマーワ、市内の治安維持はオランダ軍が担当し、自衛隊は復興人道支援で派遣されました。自衛隊は多数の装甲車両を派遣しましたが、自衛隊の警護はオランダ軍が担当、ここで一つの可能性があった。

 アメリカを中心とした有志連合によるイラク戦争は、イラク政府機構崩壊後、国境管理の空隙に紛れ込む武装勢力により無政府状態となり、アメリカが中心とした暫定統治機構は正統政府樹立の目途が立たぬまま、イラク戦争の戦災からも脱却できない泥沼が現出した当時、当時の小泉首相が主導してイラク復興人道支援法を制定、自衛隊が派遣されました。

 イラク派遣、しかし毎日のように米軍や英軍が待伏せ攻撃を受け膨大な戦死者を出し、イラク戦争での大規模戦闘での米軍戦死者を二か月間の治安作戦による戦死者が数において上回るという、非対称型戦争の現実を突き付けていた状況、待伏せ攻撃は後方支援部隊や巡回に当たる軽車両を標的とし突発的に文字通り不期遭遇戦が展開、回避は非常に難しい。

 自衛隊は万全の装備を以て派遣されました、96式装輪装甲車には12.7mm重機関銃が大型弾薬箱を装備、軽装甲機動車には市街戦用防盾が追加されたほか、3t半トラックや高機動車には追加防弾板が、部隊は89式小銃と9mm拳銃に加えMINIMI分隊機銃、そして海外派遣では初装備となる対戦車火器110mm個人対戦車弾と84mm無反動砲を携行したほど。

 自衛隊はクウェート集結地から宿営地が設置されるサマーワまで、梯団を組み、軽装甲機動車が側面を、前後を96式装輪装甲車が防護する、接敵行進の隊形に近い陣形で展開しました。この際、周辺部と梯団の防護を担当したのはオランダ軍です。サマーワはイギリス軍統合任務部隊の管区、自衛隊は実質英軍指揮下へ、オランダ軍が防護を担当したかたち。

 オランダ軍ですが冷戦時代は東西冷戦最前線に近く、小さな国力の中で1000両以上のレオパルド2主力戦車を配備しYPR-765装甲車等機械化部隊を編成しました国ですが、低烈度紛争への対応準備は冷戦後急浮上したもので軽装甲車の数は充分ではなく、梯団護衛にはメルセデスクロスカントリー軽野戦車にFN-MAG機銃を搭載し実施、装甲はありません。

 輸送梯団は簡易爆発物IEDの格好の標的となります、IEDは路上からは目立たないガードレール裏側、道路標識のカラーコーン内部に152mm砲弾を隠し、有線無線何れかで管制爆破するものです。実際、数の優勢で無数に仕掛け多数は失敗するも少数が成功し、世界にその“戦果”が報じられる、という事を目的とし、自衛隊も標的となる危険は高かった。

 しかし、懸念されたのは自衛隊の軽装甲機動車とオランダ軍のメルセデスの違いです。オランダ軍には四輪駆動のフェネク装甲偵察車がありますが数は不充分、武装勢力の視点からは一見して装甲車と分かる軽装甲機動車よりも、外見の通り迷彩市販車オランダ軍のメルセデスの方が狙い易い、しかもオランダ軍は自衛隊梯団の外周と先遣を担当、狙い易い。

 サマーワ展開に際して僥倖にして自衛隊梯団は武装勢力の標的となる事はありませんでした。自衛隊は順調に給水支援任務を展開し、復興人道支援を進めてゆきました、4月7日に宿営地へ迫撃砲弾が撃ち込まれる事案が発生しましたが、逆に言えばその程度、イラク全土の戦塵の中では例外的に人道支援を継続できた、無論、絶え間ない信頼構築の成果です。

 ナジャフ市街においてサドル派民兵が大規模な攻勢に転換し、米軍部隊と大規模な衝突が発生したのはこの頃、ナジャフとサマーワは80kmしか離れておらず、80kmといえば距離にして京都から明石の距離、若しくは京都から米原の位置関係にあり、サマーワ市内の治安維持はオランダ軍の管轄でしたが、80km先は文字通り激戦地、状況はいつ悪化するか。

 自衛隊のイラク派遣は、こうした綱渡りの中開始された訳なのですが、仮にクウェートからの自衛隊展開に際し、先遣や梯団の護衛にあたるオランダ軍の車両が攻撃を受けた場合、自衛隊は96式装輪装甲車に車載する12.7mm重機関銃と軽装甲機動車のMINIMI分隊機銃を手に、必要な措置を採る場合、応戦すれば集団的自衛権行使と批判される危惧があり、何が出来たのか、瀬戸際での展開といえるものでした。

北大路機関:はるな くらま
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護衛艦FRAM近代化改修と艦隊維持【02】護衛艦むらさめ・たかなみ型へのFCS-3搭載という視点

2016-11-19 21:52:54 | 先端軍事テクノロジー
■FCS-3多機能防空システム
 江畑謙介先生はかつて、防衛費は血税である、との視点から護衛艦を簡単に除籍するのではなく、延命と改修、機関換装まで含め費用対効果をしっかり算定し、延命か除籍、納税者が納得する選択肢を採らねばならない、と指摘されました。

 むらさめ型護衛艦9隻、たかなみ型護衛艦5隻、FCS-2を運用する海上自衛隊の主力を構成する汎用護衛艦ですが、仮にFRAM工事を行い、あきづき型護衛艦、ひゅうが型護衛艦へ搭載されています多機能レーダーFCS-3を搭載する事が出来たなら、僚艦防空能力が護衛艦の基本性能となりシーレーン防衛能力や艦隊防空能力は非常に強力なものとなります。

 FCS-3,試験艦あすか、にて開発が進められた装備で、フューズドアレイレーダーを基本としたFCS-2の能力を更に高め、低高度高速目標の同時多数対処能力を強化し、遠距離を含めた索敵能力と併せ、射程50kmという新短距離艦対空ミサイルESSMとあわせ、護衛艦の能力を個艦防空能力から限定的な艦隊防空能力を持つ僚艦防空能力へ発展させました。

 当初、たかなみ型護衛艦への搭載も模索されていたようですが、開発計画の関係から、むらさめ型の改良型へ留め、FCS-2搭載艦として建造し、FCS-3の搭載は護衛艦あきづき型護衛艦からとなり個艦防空と共に艦隊とまではいかずとも護衛隊規模相互防空が可能、イージス艦の弾道ミサイル防衛任務時での航空攻撃からの掩護という運用も想定されました。

 最新鋭あさひ型護衛艦から改良型のFCS-3/OPY-1を採用しています。5000t型護衛艦として対潜能力を重視した設計でしたが、FCS-3/OPY-1の搭載により対空警戒では400km近い遠距離目標も識別可能とのことですから、対潜能力を重視しつつ、対空戦闘でも従来護衛艦と伍する、すなわちFCS-2搭載護衛艦よりも一歩進んだ能力を持つことが分かります。

 むらさめ型護衛艦9隻、たかなみ型護衛艦5隻、14隻へFCS-3をFCS-2からFRAM工事として換装すれば、能力が大きく向上するのですが、しかし、FRAM工事を行う場合、その実施は一般に考えられるほど楽ではありません、こういいますのも、護衛艦は船舶であり、重心と復元性が非常に重要です、復元性不十分であれば最悪の場合転覆しかねません。

 復元性は商船よりも水上戦闘艦の方が遥かに厳密に要求されます、これは商船には荒天時に避泊や航路変更という選択肢があり得ますが、水上戦闘艦の場合、荒天時であっても対潜脅威がなくなるわけではありませんし、ミサイル回避を含めた艦隊運動では水上戦闘艦以外では想定されないような急転舵を繰り返し、復元性が無ければ戦闘力に関わるのです。

 FCS-3は上部構造物と一体化し大型化しています、上部構造物が大型化すればその分、風力抵抗が増大し復元性計算を複雑化させますし、大型化するならばその分重量も大きくなるため船体強度計算と補強改修の必要性も高くなる、もちろんかりに、たかなみ型が元々FCS-3搭載を念頭として設計に余裕があり、艦橋構造物設計に配慮があるならば別ですが。

 費用対効果の問題もあります、FCS-3を含めた上部構造物をブロック工法により建造するまでに一年間、FCS-2を搭載する区画を換装する入渠工事と公試に二年近くを要します、この間は艦隊運用から離れる事を意味しますから、この間の艦艇を代替させなければなりません。世界には、アメリカのスプルーアンス級駆逐艦やカナダのイロコイ級駆逐艦、オーストラリアのアンザック級フリゲイト、中国のルフ級駆逐艦等近代化改修により能力を大きく向上させた事例がありますが、時間も費用も掛かる事を忘れてはならないでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十八年度十一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2016.11.19/11.20)

2016-11-18 22:35:35 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 トランプ大統領の衝撃から一週間、我が国は防衛力整備の根幹を再検討する時期が迫りつつある初冬、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 ヘリコプター搭載護衛艦くらま舞鶴入港、明日土曜日には一般公開が行われます。日曜日に一般公開予定はありませんが、週明けの祝日に大湊基地での一般公開が予定されていまして、いよいよ来春に迫った最後の従来型ヘリコプター搭載護衛艦くらま、は最後のお別れへ全国を回っています。勇壮な護衛艦の公開、お時間がある方は是非舞鶴基地へどうぞ。

 くらま一般公開の予定については、舞鶴基地と大湊基地が予定されていまして、こちらは舞鶴地方隊HP,大湊地方隊HPをご覧ください。くらま、は太平洋側から横須賀を経て高松へ入港し、高松でも一般公開を予定しています。横須賀の隣、横浜では新ヘリコプター搭載護衛艦かが、が建造中で、くらま、は、かが、の就役と共に除籍される予定となっています。

 陸上自衛隊関連行事は、師団行事と旅団行事が執り行われます。第10師団創設記念行事と第15旅団創設記念行事が実施される予定です。第10師団創設記念行事は愛知県名古屋市の守山駐屯地にて行われ、師団は東海北陸地方の防衛警備及び災害派遣に対応します、戦略機動師団から即応近代化師団へ改編を受け、部隊の重装備等コンパクト化した部隊です。

 第15旅団は那覇駐屯地に司令部を置き、部隊編制には戦車部隊や特科部隊を有さないものの、ヘリコプター隊を置き島嶼部での機動展開に対応すると共に高射特科連隊を隷下に置き、沖縄県及び鹿児島県島嶼部の防衛警備及び災害派遣に対応する旅団です。近年南西諸島への脅威増大を受け、更なる増強改編等が検討される部隊、注目行事と云えましょう。

 普通科部隊関連行事では、第19普通科連隊の小倉駐屯地、対馬警備隊の対馬駐屯地、第41普通科連隊の別府駐屯地祭、等が実施されます。普通科連隊は近接戦闘部隊としてあらゆる地形を克服し戦闘の最終段階においてその役割を担う部隊です。第19普通科連隊、第41普通科連隊は共に第4師団隷下部隊、対馬警備隊も第4師団隷下、唯一の離島警備隊です。

 土浦駐屯地祭、武器学校が置かれる陸上自衛隊の教育機関です。武器学校は装備品整備などを全般に担う整備の専門要員を養成する学校で、この他、武器学校には我が国初の国産戦車である八九式中戦車や本土決戦へ備えた三式中戦車等が教材として展示されており、資料館の各国小火器は我が国で最も充実した銃器が展示されている場所として知られる。

 さて、撮影機材の話題を。フォトビューア、最近はすっかりと撮影の第一線器材からは消えて久しいものですが。デジタルカメラの撮影、その昔はCFカードの容量と撮影枚数の上限という厳しい制約の下での撮影でしたので、ある意味フォトビューアという器材は大変重宝するものでした、CFカードを差し込むとそのまま全自動で画像情報をコピーし保存してくれる、という器材です。

 EPSON P-2000、当方愛用の物は40GBの容量があり3.8型液晶ディスプレイによりHDD映像を確認する事も出来ます、CFカードスロットとSDメモリーカードスロットを備えUSB 2.0とビデオ出力コネクタを有していました、日帰りではなく数日間の撮影旅行の場合、CFカードを何枚も携行するには限度がありましたので、フォトビューアは必須でした。

 しかし、技術の進歩は大きなものがありまして、そもそもEPSON P-2000の容量は40GB、しかし、今やSDカードの容量で当方コンパクトデジタルカメラに差し込まれているのは64GBという容量ですので、40GBのフォトビューアの時代では無くなているのですね、ただ、撮影した画像を大画面で確認できた、というものも利点ではありますが形式消滅です。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・11月19日:武器学校創設記念土浦駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/ord_sch/
・11月19日:第10師団創設記念守山駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/10d/
・11月20日:対馬駐屯地創設記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/4d/tusima/index.html
・11月20日:小倉駐屯地創設記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/4d/kokura/
・11月20日:別府駐屯地創設記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/4d/beppu/top.html
・11月20日:第15旅団創設記念那覇駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/15b/15b/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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航空防衛作戦部隊論(第四四回):航空防衛力、C-2輸送機が拓くアメリカ後方連絡輸送

2016-11-17 22:07:00 | 防衛・安全保障
■C-2輸送機の戦域間輸送能力
 C-2輸送機は長大な航続距離を有します、具体的にはフェリー航続距離か2t程度の搭載であればアメリカ本土と日本本土を無着陸輸送が可能です。

 アメリカまでの航続距離があれば、緊急調達物資の第一線搬入が容易となる、列線整備ユニット、AMRAAM等弾薬、チャフやIRフレアー等、稼動状況によっては戦闘機用エンジンの本体を含め現代航空戦闘では急速に消耗する資材が多く、また日本でライセンス生産が行われているものでも同規格部品の補充を受ける事で稼動率と損耗復旧速度は向上します。この為日米防衛協力のための指針、所謂日米防衛ガイドラインにおいては、こうした装備品の供給について日米での合意が為されました。

 これは制定当時、自衛隊の弾薬を米軍へ供与できるという部分ばかりが強調され、日本のアメリカの戦争協力という視点で世論といち部市民団体などは騒ぎましたが、日本が必要とする米軍の大量備蓄資材をそのまま供給を受けられることを意味し、日本国内の米軍弾薬、そしてアメリカ本土の地球規模での作戦を支える膨大な防衛資材を臨時受領する事も可能となった点の方が実のところ大きい訳です。

 現時点では航空自衛隊は30機程度の取得を計画していますが、実際問題として生産ラインが構成され慮さんが開始されたばかりの航空機であるため、今後必要であれば製造する川崎重工へ増産を要請する事で生産数を増勢する事が出来るという強みがあります。そして航空自衛隊の航空消耗戦へ対応するには新しい輸送任務が加わるでしょう。

 日本本土からアメリカ西海岸トラビス空軍基地まで距離にして8600km、川崎重工が海外向けに提案したC-X民間輸送型では最大搭載量37t、フェリー航続距離10000kmが提示されていました。この場合、アメリカ本土へ飛行し、米軍弾薬などの供与を受け、その帰路ホノルルかヒッカム空軍基地において給油、若しくは空中給油機からの給油支援を受けつつ無着陸で日本本土へ戻り物資を、という太平洋を越えた兵站輸送が可能となります。

 これはC-130では不可能であった戦域間輸送で、C-2輸送機であればホノルルかヒッカム経由で一日での往復が可能ですが、C-130輸送機を用いた場合、グアム、バックホルツ、ホノルル、トラビス、と経由地を十分取ったうえで給油を行う必要がありました、往復すれば四日間を要します。C-130はアメリカ製で米軍において大量に用いられている為、中継地での整備支援を受ける事も可能ですがC-2はボーイング767やボーイング747と同型のエンジンを搭載し世界中の空港で整備支援を受ける事が可能です、これは運用受難性を高める。

 そして、C-130ではグアムのアンダーセン基地を経由しなければ、勿論、南鳥島飛行場や硫黄島航空基地を経由する事も可能ですが、グアムのアンダーセン基地は北朝鮮の中距離弾道ミサイルや中国軍の巡航ミサイル及び中距離弾道弾の主要攻撃目標となっていまして、有事の際には一時的に使用不能となる可能性が高く、勿論それ以上に日本本土の自衛隊基地及び米軍基地も攻撃目標となるのですが、太平洋を越えた兵站線を確保する観点から、さらにグアムを経由する必要のある輸送機から、一挙に2t程度の搭載では航続距離でアメリカ本土まで飛行できる新型機が導入される、ということ。

 今日まで自衛隊は後方地域を北海道北部に対する北海道南部、南西諸島に対する急襲、というような地理的主観から認識していましたが、C-2の輸送能力はその長大な航続距離から後方地域に同盟国アメリカの本土を含み、其処からの連絡線を構築できることを意味する訳です、このように戦域輸送機としての能力を持つC-2輸送機が有する戦略的意義は非常に大きくなります。

北大路機関:はるな くらま
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トランプ新大統領の外交国防戦略【01】 三五〇隻海軍構想、大統領選下の海軍再建発言の検証

2016-11-16 21:58:10 | 北大路機関特別企画
■トランプ三五〇隻海軍構想
 安倍総理は明日、ニューヨークにてトランプ次期アメリカ大統領と初の会談に臨みます。トランプ新大統領にとって、明日の安倍総理との会談は大統領選当選後初の外国首脳との会談となりました。

 ペルーで開かれるAPECアジア太平洋経済協力会議の首脳会議へ出席する途上、ニューヨークへ立ち寄り実現するものです。政府は今回の会談について、現在のアメリカ大統領はオバマ大統領である為、個人的な信頼関係を構築することに主眼が置かれた会談になる、との立場を強調していますが、トランプ大統領の外交政策、アメリカは内向きとなるのか、世界での地位も偉大なものとするのか、一端が語られる事でしょう。

 アメリカを再び偉大な国とする、壮大な計画を示しましたトランプ新大統領ですが、実態としては保護主義的な政策と世界各国からの軍事力引き上げを示唆しているので、逆にアメリカは内弁慶となり、世界におけるアメリカの勢力は相対的に低下するのではないか、この懸念は様々な分野において大統領選の時期から為されてきましたが、どうなるのか。今回から、アメリカの次期トランプ政権が進める外交防衛政策を分析してゆきたいと思います。

 三五〇隻海軍構想、これはトランプ大統領が公約として提示した国防政策で、具体的には戦闘艦の保有数を現在の1.5倍へ増強する構想というかなり大規模な艦隊計画です。現在アメリカ海軍は予算均衡法に基づく緊縮財政により国防費削減措置を実施中で2012年から五年間の強制削減措置を実施中です。この為、アメリカ海軍の水上戦闘艦部隊規模は第一次世界大戦後最小規模となっています。

 トランプ大統領が掲げる保護主義を実行するならば、長大なシーレーンを維持する必要が無くなり、世界の警察官をやめる事で戦力投射能力整備の事業評価が低下し、最後に財政再建と公共事業重視を掲げる、そこで350隻という数値を提示するとなりますと、建造費用の問題や維持費の問題がありますので、大型水上戦闘艦ばかりを数十隻短期間で建造する事は財政的な裏付けが必要となり、不足する部分はミサイル艇やミサイルコルベット等小型艦建造しか選択肢は無くなるでしょう。

 海軍力の強化の背景は財政難への反発です。緊縮財政により2012年から国防費を五年間で4900億ドル削減するという大規模な予算縮小措置を実施していましたので、陸海空軍及び海兵隊へ影響が及ぶのは当然で、海軍力の低下は致し方なく、毎年1000億ドル近い国防費の縮小を知られる中で、艦隊規模を増強は勿論、維持する事などできるわけがありません。

 レーガン大統領の六〇〇隻艦隊構想をもい出させる海軍計画、偉大なアメリカの復活を掲げるトランプ新大統領は三五〇隻海軍構想を掲げる事で偉大なアメリカ海軍の復活に繋げる構想でしょう。実際、アメリカが19世紀から20世紀初頭の帝国主義の時代に在って植民地を持たず国家を繁栄させた背景には海洋自由原則を掲げ、交易により国家経済を拡大させたためで、繁栄を維持するには海洋交通自由が不可欠です。

 アメリカが世界から引くのであれば新興勢力、欧州と中東ではロシアが、東南アジア南アジアとアフリカでは中国が、アメリカのポテンシャルを引き継ぎ、アメリカを排除した中ロによる新しい国際秩序が構築できるのではないか、両国の為政者と政策決定者の大きな視点はこうした部分に収斂するやしれません、しかし三五〇隻海軍構想は方向性が異なる。

 もちろん、アメリカを偉大な国とする、という施策と併せトランプ新大統領が提示した、最早アメリカは世界の警察官ではない、として軍事的な撤収を示唆し、導き出された一つの方向性ですが、アメリカの発展へ海洋自由原則が不可欠ならばこれは一転するでしょう。なお、現在のアメリカ海軍は航空母艦に潜水艦と水上戦闘艦で177隻、両用戦艦と機雷戦艦艇に支援艦を含めれば251隻という規模となっています。

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駆け付け警護任務、第11次南スーダンUNMISS自衛隊派遣部隊(第9師団)より付与で閣議決定

2016-11-15 22:50:51 | 国際・政治
■新任務の駆け付け警護
 政府は今日、安全保障関連法案に基づく国連PKO部隊への駆け付け警護任務付与を正式に閣議決定しました。今月第9師団より派遣される部隊より新任務が付与されることとなります。

 南スーダンは2011年にスーダンからの独立が実現した新しい国です。UNMISSはこの南スーダンという新しい国家建設を支援するべく国連憲章七章措置に基づく国連安全保障理事会決議1996号により派遣が決定したもので、各国軍11350名及び文民職員と文民警察官1173名が派遣されています。司令官は現在、エチオピア軍のテスファマリアム中将で、副司令官は2200名と最大の派遣部隊を展開するインド軍のミストリー准将が務めています。

 駆け付け警護は、国際平和維持活動等に対し後方支援等を重点として参加している自衛隊派遣部隊が、自隊へ直接危険が及ばない場合においてもNGO職員や国連関係者等が攻撃を受けた場合に、現場へ駆け付けて警護の任務を遂行しようとするものです。従来法規は自隊が戦闘に巻き込まれた場合以外、警護を行う事は出来ず当事者となる必要がありました。

 新任務が付与される背景には、南スーダン情勢の混乱があります。建国後の南スーダンは主導権を巡り大統領派政府軍と元副大統領派反政府勢力との対立が激化、2012年12月21日にはジョングレイ州での戦闘でUNMISSヘリコプターが撃墜、2013年4月に輸送任務に当たったインド軍が待伏せ攻撃を受け戦死者が出たほか、北部で発生した戦闘で発生した避難民がインド軍宿営地へ保護され、攻撃する反乱軍との間に戦闘が発生しています。

 南スーダン情勢の緊迫は2013年12月19日に発生したクーデター事件で、これを受け国連は当時7600名のUNMISSをクーデター事件に伴う全土への治安悪化を阻止するべく6000名の増派を安全保障理事会が決議しました。2014年4月17日に派生したボルでの戦闘ではUNMISS部隊宿営地も戦闘に巻き込まれ、2015年の国連報告ではスーダン人民解放軍による越境攻撃が発生、今年7月11日には首都ジュバでも大規模な戦闘が発生しました。

 安全保障関連法整備以前では、邦人NGOや国連職員が攻撃された場合に見捨てる事は出来ず、1992年のカンボジア派遣では自隊が攻撃されている状況を構築するべく、戦闘防弾チョッキを複数着用し武装勢力と攻撃を受けている側の中間に挺身し、自らが撃たれる状況を醸成し、これを以て反撃する極めて無理な運用を想定していたとされます。これでは確実に死傷者が出る為、現実に対応するべく安全保障関連法の施行を以て是正されたかたち。

 自衛隊UNMISS派遣部隊は正式名称を南スーダン派遣施設隊、各方面隊から中央即応集団を通じ国連UNMISS司令部隷下に置く形となります。部隊編成は、隊本部、本部付隊、3個施設小隊、施設器材小隊、警備小隊、対外調整班、警務班、以上350名の大隊規模部隊で、現在第10次派遣隊が活動中、2011年12月の派遣命令より継続して派遣されています。

 駆け付け警護の想定は、自衛隊UNMISS派遣部隊の警備小隊が軽装甲機動車を装備しており、自衛隊宿営地が置かれる首都ジュバ近郊に限定し国連職員等が暴徒に包囲され孤立するような状況で、且つ自衛隊以外のUNMISS派遣国が対応できない場合に実施するとし、例えばUNMISS他国軍や避難民への駆けつけ警護は、政府によれば想定されていません。しかし、非常に抑制的ながら駆け付け警護は自衛隊の現実的な対応を可能としましょう。

 宿営地共同防護、今後の課題となるでしょう。これは今回の駆け付け警護任務付与に続き自衛隊へ付与される新任務となり、政府は間もなく宿営地共同防護の実施についても閣議決定する方針です。これは自衛隊宿営地であるジュバ国際空港付近には自衛隊以外のUNMISS部隊が駐屯しており、この宿営地へ攻撃が加えられた場合、自衛隊が他のUNMISS派遣部隊と協同で防衛するもの。

 政府は駆け付け警護の任務を付与すると同時に、PKO参加五原則が崩壊した場合にはUNMISS派遣部隊を撤収させるとしていますが、南スーダンでの情報収集体制へ専門部隊を置いている訳ではありません。また、突発的な事態に対して撤収する政治決定が間に合うのかという視点は手つかずであり、今年7月の戦闘では反政府勢力のT-72戦車と政府軍のMi-24攻撃ヘリコプターが交戦しましたが政府はこれを戦闘ではなく衝突としました。課題は多々ありますが、我が国は新しい国際貢献へ前進する事となりました。

北大路機関:はるな くらま
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防衛省平成二九年度予算概算要求の検証【10】 統合指揮通信体制・協同対艦戦闘体制の整備

2016-11-14 21:10:26 | 北大路機関特別企画
■陸海空指揮通信の共通化
 防衛省平成二九年度予算概算要求では、陸海空自衛隊の統合的な指揮通信と通信基盤整備が継続して実施されます。

 指揮統制・情報通信体制の整備、来年度予算概算要求では陸海空が従来独自の運用基盤に基づき整備されてきました情報通信基盤とサーバ部分及びソフトウェアが共通化され、統合機動防衛力整備に際する統合通信と指揮体制が整備される事となります。この整備により、上級司令部を通じず独自に各部隊の端末が相互間の通信指揮を一体化できるでしょう。

 システム予算、中央指揮システムの換装に44億円を要求、クラウドの共通サービス基盤等の整備へは8億円、陸上自衛隊のクラウド基盤整備に1億円、海上自衛隊のクラウド基盤整備へ39億円要求、航空自衛隊のクラウド基盤整備へ40億円が要求されています。なお、中央指揮システムの換装について29年度予算においてすでに設計費用が計上されました。

 最初から統合化しておけばよかったのではないか、という視点も当然思い浮かぶところではありますが、独自の運用需要に依拠したシステム構築が無ければ従来のシステム基盤では冗長性に限界があり、必ずしも統合化は準備が出来ているとは言い切れなかったものでした。陸海空自衛隊の任務に応じた統合基盤を構築可能な水準に漸く至った、ということ。

 抗耐性という視点ですが、これは共通化により全体として強化される事となります。システム統合により複数個所へサーバを設置し、運用する事となりますのでサイバー攻撃や核攻撃等により障害が発生した場合でも、別サーバを共通化し運用継続が可能となります、サイバーセキュリティ専門部隊が既に編成されていますのでシステム防衛も一体化される。

 データリンク能力の陸上自衛隊への整備も為されます、これは協同対艦戦闘体制の整備を主眼としたもので、遅れていましたがようやく実現します。対艦戦闘は海上自衛隊の艦対艦ミサイルや海空自衛隊の空対艦誘導弾、そして陸上自衛隊の地対艦ミサイル部隊が当たります、この中でも陸上自衛隊の地対艦ミサイル部隊は非常に規模が大きいものでした。

 陸上自衛隊の地対艦ミサイル連隊は5個連隊と教育所要0.5個連隊が整備され、各連隊は16両の6連装発射装置を装備しています、冷戦時代にソ連軍の大規模上陸を洋上で一挙に撃破するための重装備で、この遺産が現在の南西諸島への軍事圧力を跳ね除けている重要装備であると共に後継装備としまして新たに12式地対艦ミサイルシステムも完成しました。

 地対艦ミサイル連隊の打撃力は非常に強力なものですが、陸上自衛隊には哨戒機や潜水艦はありません、旧陸軍は何故か持っていましたが、こうした装備を欠いている為、地対艦ミサイルの目標標定は、標定小隊の捜索標定レーダー装置JTPS-P15を沿岸の高台まで進出させるか、水平線以遠の目標は電子隊の標定中隊の支援を受けるほかありませんでしたが此処がかわる。

 長射程の対艦ミサイル能力を最大限活かすべく、陸上自衛隊では陸海作戦協定を通じて海上自衛隊のP-3C,P-1等哨戒機からの目標情報を得る方針ですが、データ取得は音声通信となり、リアルタイムでの情報共有には適していません。ここが協同対艦戦闘体制の整備により、一種、日本列島ミサイル要塞化、というような防衛体制の整備が行われる訳です。

北大路機関:はるな くらま
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自衛隊観閲式【平成28年度自衛隊記念日総合予行】後篇:将来の陸上自衛隊を展望

2016-11-13 21:14:23 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■自衛隊観閲式二〇一六
 自衛隊観閲式、二回に分けて掲載する予定でしたが三回目、今回が最終回となります。

 中央観閲式、予行では装備品展示において16式機動戦闘車は展示されませんでした、元々観閲行進への参加は予定されていませんでしたが、装備品展示へ予定されていたものです。今年夏までは機動戦闘車と呼ばれていた車両が来年度予算概算要求に際して16式機動戦闘車という制式名称が初めて示された新装備、既に習志野や富士にて一般公開されています。

 16式機動戦闘車は毎年30両以上が調達されていまして現段階で約200両が残る74式戦車を次期中期防衛力整備計画までに代替されることとなります、今回の中央観閲式では74式戦車が遂に観閲行進に参加しませんでしたが、次の2019年中央観閲式には、機動連隊へ配備が完了し参加する事ができるのでしょうか、その頃には100両以上が配備されている。

 74式戦車の観閲式参加は、装備品展示で第1機甲教育隊の車両が参加していました、驚くのは掩体から射撃姿勢を採って展示されていたもので、5日間の陣地構築期間を採ったという。着上陸まで三週間あれば充分な防御陣地を構築できるという事ですが、地下に構築の掩砲所と主陣地に予備陣地と前哨陣地の構築を考えれば三週間という意味が理解できます。

 戦車と掩体という部分ですが、今回の陸上自衛隊中央観閲式は朝霞駐屯地朝霞訓練場へ陣地構築し、射撃陣地の様子を展示するという凝った趣向でした。なにしろ、74式戦車を筆頭にMINIMI分隊機銃に120mmRT重迫撃砲から果てはFH-70榴弾砲まで射撃陣地となる掩体へ配置され、MINIMI機銃に至っては天蓋も厳重に掩蔽されている力の入れよう。

 自衛隊はどのように海外任務が増えようとも、アメリカとの集団的自衛権行使の法整備が進もうとも、専守防衛の平和憲法の下、国土が敵に蹂躙されるまで平和的解決に努め、止むを得ず平和主義の看板を下げる瞬間は既に本土決戦という、国土と国民財産を危険に曝す徹底した平和主義、国民と一体となりこのように国土を要塞化する、という展示でした。

 ただ、陣地構築は全国に均一の連隊戦闘団を配置する基盤的防衛力があって初めて、着上陸の三週間前から防衛出動待機命令発令一下全土を防御陣地化し、決意を示す事ができます、が、統合機動防衛力として全国から部隊を緊急展開させる新しい防衛戦略への転換は、平時から陣地を維持する訳にはいかず、装甲機動部隊へ収斂してゆかねばなりません。

 本番でのストライカー装甲車の参加、陸上自衛隊は現在将来装輪装甲車を開発中ですが、先行して量産する96式装輪装甲車の改良型と16式機動戦闘車派生の装輪装甲車を開発する将来装甲車と二類型となる模様、ストライカーですが車体間データリンクと遠隔操作銃搭を採用した新世代の装甲車です、ただし、日本では車幅が道路運送車両法に引っかかる。

 ストライカーですが、2-2 ID 4-23IN、と表記されていたようです。 第2歩兵師団第2旅団の第23歩兵連隊第4大隊、という意味です、第23歩兵連隊は既に解体されていまして実質2個大隊が独立、しているのですが連隊旗と伝統呼称は捨てられずこの名称になっています 、在日米軍の車両ではなく在韓米軍の車両の自衛隊式典も初参加となりました。

 将来装輪装甲車はどの方向で開発されるかは未知数ですが、16式機動戦闘車の時点で道路運送車両法の車両限界を超えまして、基本的に平時の自走には法的制約が加わるという感覚を所轄警察署長と国土交通省への申請を迅速に行うという課題を抱えても、車幅を充分に採り戦闘車両としての能力を優先しました、人員輸送用装輪装甲車も同発想となるのか。

 自衛隊向きの装輪装甲車といいますと、陸軍のストライカー装甲車よりは海兵隊のLAV-25の方が車幅も2.5mに収まっていますので最適ではないかな、と思う次第ですが。ちなみにどちらもスイスのモワク社製ピラーニャ装輪装甲車で、LAV-25は初期型のピラーニャⅠ原型、ストライカー装甲車は改良型LAV-Ⅲが原型、現在の最新型はLAV-Ⅴとなっています。

 新装備の話題、今回の中央観閲式、輸送防護車等新装備の中で微妙に注目度が薄れましたが、新師団通信システム師団等指揮システムの構成車両、初参加の新装備で注目の装備といえるものでした、サーバ計算機室装置と中央処理装置、これで最前線でも戦術インターネットが可能となっています。制式化から三年後に参加という実情に則っていますね。他方訂正、対迫レーダーと思ったもの、よく見たらJTPN-P20着陸誘導装置でした、申し訳ない。

 次回の中央観閲式ですが、登場が期待される装備品の筆頭にAAV-7水陸機動装甲車でしょう。アメリカ海兵隊の車両が富士総合火力演習や前々回の中央観閲式装備品展示に参加していますが、既に佐世保の水陸機動団創設に向け九州では運用試験から部隊編成準備へ移行しています、調達数も52両と数の上で89式装甲戦闘車並の調達数が立てられています。

 三年後の中央観閲式ですが、陸上自衛隊では様々な新装備が完成している事でしょう、新多用途ヘリコプター然り火力戦闘車然りです。しかし最大の変革は、組織改編のほうで、三年後には既に朝霞駐屯地に新編の陸上総隊司令部が置かれ、座間駐屯地の中央即応集団改編や東部方面総監部と全国の方面隊に関する大きな変革が行われていることでしょう。

 三年に一度の中央観閲式、三年後の世界と我が国の情勢が見通す事が出来ないほど、我が国周辺情勢や欧州と中東を挟んだ米ロの対立、厳しいものはありますが、世界の平和、それが不可能ならば我が国だけでも平和である道筋を拓ける国を、現状では勿論一国平和主義と専守防衛は両立が難しいものではあるのですが、官民一致として創り上げたいものですね。

北大路機関:はるな くらま
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護衛艦FRAM近代化改修と艦隊維持【01】艦隊近代化改修Fleet Rehabilitation & Modernization

2016-11-12 22:41:26 | 先端軍事テクノロジー
■新連載:護衛艦FRAMを考える
 護衛艦FRAM近代化改修と艦隊維持、という視点から数回に分け海上防衛力の一視点を考えてみましょう、FRAMとはFleet Rehabilitation & Modernization、つまり大規模な近代化改修です。

 特集「将来艦隊戦闘と巡航ミサイル」に続く新連載です。海上自衛隊の護衛艦延命について、現在海上自衛隊では老朽護衛艦の延命改修を断続的に実施しています。これは年々高まる南西諸島への大陸からの軍事圧力へ対応するべく、護衛艦勢力を維持する必要があるためで、自衛隊任務は国際任務増大と弾道ミサイル防衛という新任務へ対応するため、充分な護衛艦建造予算を確保出来ないという背景があります。

 護衛艦の寿命は24年、と云われてきました。これを長いとみるか短いとみるかは様々な見方がありそうですが太平洋と日本海、世界でも有数の厳しい海象を前に波浪を切って護衛艦を運用する事は様々な部分に老朽化をきたすためで、この為護衛艦の寿命は海上自衛隊草創期から24年程度、とされてきたわけです。24年、と言いますと第二次大戦中の駆逐艦であれば損耗してしまいますが近年はこれを越えるのが普通です。

 24年とされた護衛艦の寿命、その背景には蒸気タービンエンジン部分の寿命がどうしても越えられない一線があった為と云われていまして、耐用年数とは、蒸気タービンエンジンを駆動させる配管部分が高圧蒸気の恒常通気により腐食摩耗劣化する為といい、この配管部分の老朽化を放置すれば、破断点と同時に蒸気爆発事故にも繋がる非常に危険なもの。

 従って、蒸気タービン艦では延命改修を行う事で32年程度まで運用を継続できるものとなっていました、大規模改修を経まして、はるな型ヘリコプター搭載護衛艦、しらね型ヘリコプター搭載護衛艦、などは延命により40年近い長命を果たし、1981年に就役しましたヘリコプター搭載護衛艦くらま、も来年早春まで現役運用され、海上防衛の第一線を担う。

 しかし、護衛艦を水上戦闘艦という武器システムであることをふまえれば、単純な延命改修では必ずしも第一線での哨戒任務や水上戦闘及び対潜戦闘へ対応できるものではありません、護衛艦の寿命は24年とした時代でも24年間を経れば大きな装備体系の世代交代が避けられません、この為、運用期間を延伸する場合には、この近代化もされられません。

 FRAM,艦隊近代改修としまして、護衛艦には基幹部分の刷新はもとより、武器関係の能力向上などを数年間の改修期間、護衛艦を造船所に入渠させ本格的に能力再構築を行う施策が執られ、元々はアメリカ海軍が第二次世界大戦型駆逐艦の延命改修と同時に実施した施策なのですが、スプルーアンス級駆逐艦の垂直発射装置VLS搭載に関する近代化改修などが有名で、海上自衛隊も、はるな型ヘリコプター搭載護衛艦等に実施してきました。

 たかつき型護衛艦のFRAM等は大規模な改修となっていまして、元々は第二次防衛力整備計画において建造された護衛艦、外洋での対潜戦闘に特に重点を置いて設計されました護衛艦です。個人的には二番艦きくづき、が初めて体験航海で福井港から乗艦しました事で思い出深い護衛艦なのですけれども、このFRAMは規模において特筆すべきものでした。

 艦対艦ミサイルハープーン、20mmCIWS、シースパロー短射程艦対空ミサイル、たかつき型護衛艦は、艦尾に向けられた52番砲という1門の5インチ単装砲を撤去し、用途廃止された無人ヘリコプターDASHの搭載区画を転用することで、上記3種類の装備を搭載する事となりました、これにより1990年代へも対応する護衛艦へ生まれ変わっています。ただ、このFRAM改修が広範に行われない背景には相応の理由があったりしまして、次回以降この視点を視てみましょう。

北大路機関:はるな くらま
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