奈良の旅では、行基のお墓を訪ね竹林寺に行ったことが素晴らしい体験であった。酷暑の中、最寄りの駅の「一分」で駅員の方に行き方を尋ねると、丁寧に教えていただいたが、竹林寺の近くは複雑だそうで、そこでまた人に聞けとの親切なご指示までいただいた。
35度の酷暑で大変であったが、ご指示どおりに行くとひんやりとした前方後円墳が現れ、竹林寺についた。ところが、お寺は無人でどこに行ったらよいか迷ってしまう。指示版に気づき何とか目的の行基さんと忍性さんのお墓を訪れることができ、ゆったりとしたお寺のトイレで一息すると、私と同じくらいの年代の男性に会う。
お寺の庭の手入れをされている近くの方で、竹林寺と唐招提寺との関係や、藪に入るとマムシに出会うから注意することを親切に教えてもらい世間話もする。これも楽しい思い出になった。しかし、行基さんが全国を行脚し自分で選んだ墓所だけあって、竹林寺は何とも言えぬ素晴らしい場所で、来たかいがあった。
夕方が近づき、奈良盆地の西側にあたる、二上山や生駒山の麓のお墓に入る意味をぼんやり考えた。西方浄土とか、それ以前の縄文の入日の思想から考えても、太陽の沈む西にあの世があるという感覚は判る。ただ、大津皇子や長屋王といった生前に謀反で葬られた方の遺体が、例えば鳥谷口古墳のように麓に墓所があるのは何だろうか。同時代だった行基もそのことは知っていたのだろうが、敢えてそこを墓所と決めるのは。すべての人を救済したいという優しい思いがあるのだろうか。
新しい体験は、何となく停滞する人生を活性化するようだ。
さて、もう一つ。話は変わるが、65歳で初めての長編歴史小説を書き、初めて出版した私であるが、そこでの体験も実に豊で新鮮であった。それは今でも続いている。
私は本好きなので随分読書をしてきたが、学者でもないので、本の最後のほうに書いてある参考図書は、ちらっと見ることはあっても殆ど関心はなかった。しかし、出版に際しどこかで感謝の念を示したり、私のような仕事を将来される方のために、参考図書を残したいという気持ちになってくる。そこで、時間をかけてリストを作った。
出版後、知人の図書の専門家や学者の方からアドバイスをいただいた。そんなことで、今新しいバージョンを作成しているが、参考図書も改良しようしている。もう一度本を取り出し、今まで興味を持つことのなかった本の奥付に眼をこらして作業をしている。心理学では図と地という言葉をよく使う。何かの拍子で今まで関心のなかったことに関心を持つようになるということだ。この新しい体験は、この世の中の重層的な構造を垣間見るようで、私にとっては貴重な体験だ。
何か参考図書は生駒山の行基さんに似てません?
新しい体験 1/10
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森 裕行 | |
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