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縄文小説家・森裕行のブログです。身近な縄文を楽しみ生き甲斐としています。「生き甲斐の心理学」の講師もしています!

最新のDNA研究でへんな生育史へのこだわりが解消する (新鮮な生育史 7/10)

2019-07-04 | 第一章「意識と知覚」

 縄文小説を書く上で考古学の知識は大事であるが、それだけでは書けないというのが現実だと思う。そして、この数日、篠田謙一氏の「新版 日本人になった祖先たち」(NHKブックス)、斉藤成也氏の「日本人の源流」(河合書房新社)を熟読していたが、最近の研究成果の凄さに驚き夜も寝られないくらいであった。そして、3500年前くらいの日本列島の状況がよりはっきり見えてきた。

 その原因の一つは、縄文時代の各時代の人口だったが、これは住居数から想定した小山修三氏の推定値があるが、縄文後期になると住居の作り方などが変わるようで、人口が少なめ過ぎるという考古学の専門家からの指摘もあるようだった。それが、遺伝子の研究成果からも少なめすぎるという指摘もあるようだった。

 もう一つは、弥生時代の農耕の本格化と人口の激増の原因に、大陸からの渡来人の影響が指摘されているが、置換説(先住民族と100%入れ替わる)と変形説(100%先住民族が吸収してしまう)という説がかつてあった。ところが、核DNAの研究成果も含め縄文の祖先のDNAも正確に解析できるようになり、10~20%の混血説が有力になったということである。逆に見ると弥生時代の大陸からの渡来人の影響はDNAではっきりしてきたということかもしれない。

 これで、3500年前(弥生時代の前)がより見えてきたように感じている。

 さて、前置きが長くなってしまったが、私も含めて自分の出自や生育史に劣等感を感じたり、嫌気を感じたりする人も多いようだ。あるいは、最近のグローバリゼーションでより身近になった外国人に戸惑ったりする方も多いようだ。そんな時に意外に祖先のDNA研究が福音となるようだ。

 例えば、私は幼児洗礼を受けたカトリック信徒であるが、日本の中ではキリスト教徒はごくマイナーであり、肩身の狭い想いをしたが、日本人のルーツの多様性を考えると何か開放される。

 この二、三十年のDNA研究で、ホモサピエンスの故郷がアフリカであり、6万年前ごろにアフリカから世界に散って行ったということが確実となった。従って、すべての日本人は経路は違ってもアフリカから来ていることになった。そして、例えばミトコンドリアDNAで日本人の中にも一定の存在感を示すAやN7といった北方経由のハプロタイプは中東を経由してる可能性が高いようで、日本には馴染みにくい中東も祖先にとって大切な道だったりしたかもしれない。ミトコンドリアのハブロタイプだけでなくY遺伝子や最近では核DNA関係の解析も進み、DNAに関心を向けると、世界が開けあらたな自分のアイデンティティ作りができるかもしれない。

 自分のルーツを系図(男系など)から追って行く方法が今までは主流だったが、これは江戸時代くらいになると曖昧になったりし、2の階乗で増える(実際は重なる事が多いようだが)祖先の全貌も見にくくなる。それに対して、確かなDNAのハブロタイプ統計により自分のルーツの日本への道筋が分かるようになると、日本史だけでなく世界史や地理などにも関心が膨らむ。

新鮮な生育史 7/10

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自分の生育史を大事にすると、いろいろな歴史が面白くなってくる (新鮮な生育史 6/10)

2019-07-01 | 第二章「五感と体感」

 以前、福祉の仕事を経験したことがあるが、ある知人から「ケアの本質」(ミルトン・メイヤノフ著)を教えていただき読んだ経験がある。なかなかの名著で、障がい者や高齢者を介護する・ケアするとは何かを考えさせられた。物事は狭く見ると何でもそうだが本質をはずすことが多い。ケアに関しても、人間観が非常に大事であり、<自分にして貰いたいように他者にする・・>そんなことが基本なのだが、これを身につけるのは結構大変だ。

 私もそうだが、《自分にして貰いたいことを他者にする》。ということは、よく考えると一つの飛躍がある。自分と他者との対等性ということである。それが了解されて、はじめてこの言葉に意味が出てくるのだと思う。身体は人それぞれであり、生育史もそれぞれである。近い遠いはあるかもしれないが確固たる対等性にはなりにくいものだ。そして、生き甲斐の心理学によく出てくる、比較宗教学、比較文化論の伝統から出てきた考え方。人は身体とこころ(生育史)と、さらに魂からなる。そして魂を例えば次のように定義する。「魂は愛そのもの。死んで身体から離れる知的生命体」。この人間観を信じると、自分と他者の共通点が魂となる。それゆえに<自分にして貰いたいように他者にする・・>が理解できるようになる。そして、他人だけでなく、いろいろなモノとの関係も、こうした魂の世界の中に位置づけると、意外に似た関係が現れてくるものだ。学生時代、友人と親は何故「整理整頓をしろ」など口うるさいのかと嘆きあったことがあるが、年をとってくるとモノを大事にするというのは、効率や効果の問題ではなく、モノと自分の関係性なのだろう。その重要性に若い頃は気づきにかった。

 さて、今日は自分の生育史(生まれてから今まで)をこえる、自分の拡張された生育史について考えている。自分を直接産んだ両親だけでなく、一連の祖父母のルーツの歴史、歴史の世界(日本史、世界史、教科書的なことも古代になればなるほど、自分のルーツに関係する傾向がある)、言語の歴史、遺伝子から分かる人類史、地学での歴史(日本列島の誕生や、火山関係、海洋関係も実に楽しい)、生物の進化史、日本列島の祖先、さらに考古学や神話、民俗学など。一見バラバラの情報や知識なのであるが、これらを勉強していると、自分が今ここに生きているということが、奇跡のように思えてくるのが不思議だ。逆に言うと、こうした勉強は自分の生が根をおろしてくると、楽しくなっていくものかもしれない。

 最近興味があるのは、縄文時代なのであるが、特に3500年前とかの時代になると、気候はどうだったのだろうか、火山や地震の影響はどうだったのだろうか。海外からの難民はどのようだったか。海退や冷涼化は大きな流れだが、そんな中でどう工夫し食料を得たのか。何が変わっていくのだろうか。

 考古学の世界、民俗学や神話の世界、客観的な気候などの情報、いろいろ並べて考えていくと、今の時代と3500年前の時代が不思議に重なってくる。 

新鮮な生育史 6/10

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