赤と緑のコップが子供ころ家にあった。といってもこれは朝鮮に住んでいたころのことである。親戚とか知り合いの人と一緒に父母に連れられて町の近くの山にピクニックにいったときに兄が小川の水を赤いコップですくって飲もうとして流れにそのコップを取られたことがあった。
おじがそのコップを追いかけていき流れの中から拾い戻してくれたので、しばらくはその後もその赤と緑のコップが家にあったが、そのうちに赤いコップの方はなくなってしまい、緑のコップだけがその後も残った。日本に帰ってきてもいつも歯磨きをするときのうがいの水をそれで汲んでいた。
そのうちに緑のコップもどこかへなくなってしまい、ずっと忘れていたがどうしたものかひょっと最近そのことを思い出した。それだけの何てこともない話だ。
幼時に鎮海という小さな町に住んでいた。ここはごく最近では韓国の桜の名所として特に有名で、桜の季節には数十万人の人出があるという。数年前にいとこたちと一緒にほぼ60年ぶりにこの町を訪れた。数時間の滞在ではあったが、とてもなつかしかった。また、この第二のふるさとを訪ねてみたいと思っている。