熱は温度差があれば移動できる。これは誰でも知っている事実だ。だが温度差がないと熱は移動できないのだろうか。
これは物質の体積の変化とか形の変化を許せば原理的にできる。たとえば、気体をシリンダーの中に封入して高温熱源に接触させれば、この気体は熱源から熱をもらって膨張することによってその気体の温度を上げることなく熱源から熱をとることができる。
このことはどの熱学の本にも書いてあるのだろうが、私がこの事実を朝永の「物理学とは何だろうか」上を読んでやっと認識した。
また二つの熱源の間の温度差による熱の非可逆的な移動が起こらないようにするためには断熱膨張と断熱圧縮とを使う。このことを数年前に熱力学の授業の準備のためにこの本で読んだときなんてすばらしいことだと思ったものだ。
Carnotのサイクルの意味がこれらによってはじめてわかった。