一昨日エッシャーの展覧会に行った。はじめてエッシャーの版画その他を見たのだが、たくさんの人が子供連れで訪れていた。これもちろん夏休みということもあるのだろうが、それだけではなくエッシャーの絵の不思議さが基本にあるのだろう。
正則分割といわれる技法が特に目についた。また騙し絵というかこれもいくつかあった。しかし、目の錯覚を誘うこの絵よりも正則分割と言われる方法とか変容と言われる手法の方が面白かった。
固体物理学の格子空間では同じ模様とか立体図形で空間や平面を隙間なく埋めて行くということが知られているが、正則分割はそれの応用のようだ。ただ、とかげとか馬とかの図をうまく配置して正則分割しているのには感心した。
ゆっくりと見たかったが、どうも展覧会ではそうもいかないところがある。それに説明がついていてもなかなか理解がすぐにはできない。それで画集を1冊買って帰った。
そういえば、5月のホームステイのときに弁護士のベアーテさんが「エッシャー、バッハ、ゲーデル」というホッフスタッターの大著のことを話題にしていた。私も大学にいたときに公費でその訳本を購入していたが、通読とまでもいかなかった。もっとも読まなくても絵とか写真を見るだけでも面白かったのだろう。
二男のTetsuroによれば、「エッシャー、バッハ、ゲーデル」のモチーフは繰り返しというか反復というかぐるぐる巡り巡ってもとに戻ることだという。そういえば、バッハの音楽は繰り返しが多くてなかなか前に進まないという感じである。だから、バッハは重たくて嫌だというのもある意味ではあたっているのだろう。いやこれはむしろ私の個人的見解だ。
エッシャーの騙し絵もぐるぐる回りだ。ゲーデルにおいては繰り返しとか反復がどういうことだかわからないが、彼は数学の公理がその理論の範囲内では真か偽か証明できないものがあるという定理を数学基礎論の論文で証明したというからやはり一巡りして元に戻ったということであろうか。