翻訳にここ数日従事して見て、辞書の限界というのを感じている。辞書はやはり人間のつくったものである。また、その大きさもその辞書が売れる見込みがどの程度あるかによって決まるであろう。だから大きさにも限界があり、その収録語彙が限られるのも仕方がない。
普通のポケット辞書というかハンディなものに限れば、専門用語を引いても載っていないことが多くなる。特に医学用語だと日常生活で普通に使われる用語もあるが、やはり専門用語も多くあって、載っていない。だが、それを辞書の限界だということもできるが、逆にほとんどの語が出てくる辞書というのはすばらしい。その編者のご努力には感謝にたえない。
私のもっている英和辞書は高校時代に子どもたちが使っていた研究社の学習辞書とか自分で買った小学館の一般向きの辞書である。岩波書店の英和大辞典もこのごろ仕方なくひいては見るが、少し古めかしい。
独和辞典も子どもが大学時代に使ったものを使っている。独和辞典に関していうと、私の世代には木村ー相良の辞書が、またその後一時期シンチンガーさんの辞書がいいといわれた。いまになってくるとこのシンチンガーさんの辞書も古いとか。
R氏に言わせると独和辞典はその時点で一番新しい辞書がそれまでに発行された辞書の成果を取り込んでいるのでいいという。私の知人のF氏の先生のZさんが編纂した辞書などが比較的新しいようである。
このごろは若い人や経済的に恵まれた人は電子辞書を使っている。ちょっと言葉を打ち込めばすぐに意味が得られる。どうも私のように辞書を引くのが遅い者には垂涎の的だが、結構の値段がするのでなかなか買うことができない。ただ、私が年来してきたような赤鉛筆で下線を引くというようなことが電子辞書ではできない。