「私は根気がない」と昨日書いた。これはまちがいがない。そしてそれは私の欠点の一つである。ではわるい性質ばかりしか私はもっていないか。そういうことはない。
好奇心が強いと思っている。もちろん、ここでいう好奇心は「知的好奇心 ( mental curiosity)」 のつもりである。どこそこのスターやタレントがスキャンダルを引き起こしたというようなことに好奇心が強いという意味ではない。
昔、「自然」という自然科学系の雑誌があったが、その中で物理学者の故朝永振一郎さんがアメリカの大学に留学する学生の推薦状を書くときに、この知的好奇心が強いということが推薦状の項目の一つにあると書かれていた。
およそ半世紀も昔のことで、そのころにはまだ日本では知的好奇心という語もまだあまり使われていなかったと思う。その後、私たちも知的好奇心という語を肯定的な意味で使うようになったと思う。
物わかりが私は悪い(すなわち頭がわるい)ので、自分で納得できるためにはいくつかのちがった方法で理解したいと思うようになった。
その最初の動機は研究において、自分のしている研究がまちがっていないことを確かめるためにできるだけ別のチェックの方法があれば、そのチェックをしておきたい。
そういう風に考えたのが始まりのような気がするが、そのうちにあまり研究などしなくなって、教育上の教材のいろいろの理解の仕方を探したいという風になってきた。ということで現在に及んでいるという次第である。
普通の人なら、三角関数の還元公式についていろいろな導出をあえて考えるなどという人は少ないだろう(注)。
それくらい人は学ぶことに、また、研究に忙しいのである。それがわるいということはない。なぜなら、新しいことを研究する人や思いつく人にはしなくてはいけないことはとても多いからだ。
(注)「三角関数の還元公式」とはひょっとしたらあまりなじみない用語かもしれない。三角関数の余角の公式とか補角の公式とか、または、それに類似の公式のことである。一つ、二つ例を挙げれば
\sin (\pi -\theta)=\sin \theta
\cos (\pi -\theta)=-\cos \theta
の補角の公式とか
\sin (\pi /2 -\theta)=\cos \theta
\cos (\pi /2-\theta)=\sin \theta
の余角の公式とかがある。