世の中の定年退職者はどのような暮らしをしているのであろう。これは経済的な意味で言っているのではない。
経済的な意味ではすでに平均的な退職者の生活についての答えが出ている。それは月25万円で生活をしていて、年金はおよそ20万円もらっており、月々5万円の生計の赤字を出すような生活それですらもつつましやかな生活であろう。
私の従弟に毎年どこかへ何回も外国旅行をしているような者もいるにはいるが、それは従兄弟が20人くらい、いる中でも極めて少数である。普通の人は数年に1回でも海外旅行ができるほど金持ちではない。
しかし、話はそういうことではなくて、日々の生活として何をしているのだろうということだ。いや、別に人の話を聞かずとも、自分のことではわかるではないかと言われるかと思うが、私自身はたぶん普通の人とはかなり違った生活をしていると思う。
第一、定年退職後に、外国旅行などしたことはない。そんな経済的な余裕はない。武谷三男の研究をしているので、彼の書いた本などはかなり古本で買い込んだが、それはぜいたくとは違う。最近では先立つものがないので、それもできなくなっている。
退職後、14年であるが、その後の活動は2009年12月から、「数学・物理通信」というメールで無料配布のサーキュラーの編集と発行に努力をしている(注1)。しかし、これはまったくの経済的な収入にはならない。むしろ時間と労力が大きく取られる。もっともそういうことで不満をもつようなら、そんなことをやらなければよい。だから、そのことを不満に思ったことはない。むしろ生き甲斐かもしれない。
どこかのヘルスセンターにでかけて、体のリハビリに励んでいるわけでもない。アルコール類が好きだというわけでもない。
数学書ではないが、数学がかった本を定年後に2冊出版したが、そのうちの1冊は100冊売れたか売れないかという悲惨なものである。それも、この本は以前に1冊出したことのある本の一部を抜粋した本であったのに。
もっともこの本に古本で1万円以上の値段をつけている人もいる。私に連絡してくれたら、定価は1200円だのに。そうやって直接メールで私に連絡をしてくれた奇特な方もおられた(注2)。
ということで私自身には自分が変わっているという意識はないが、変わった生活を送っているかもしれない。退職後は、土曜日も仕事をするようになった。さすがに、日曜日は休むことにしている。
(注1)「数学・物理通信」は通巻で87号をいままでに発行している。インターネットで『数学・物理通信』で検索すれば、名古屋大学の谷村先生のサイトにバックナンバーがすべてそろっている。
(注2) 小著の書名をあげれば、『物理数学散歩』(国土社)である。いまアマゾンの古本で4万円とか5万円をこえる値段がついていた。こんな値段では誰も買えまい。少なくとも私は買わない。どうしてこんな馬鹿げた高価な値段がついたのだろう。不思議でならない。
定価は1200円である。私のところには200冊以上在庫がある。価値があると認めて下さる人がおられるというのは悪い気持がしないけれども。
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