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田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

北大スラブ研公開講座№7 北東アジアは危機?それともチャンス?

2017-06-08 18:12:27 | 大学公開講座
 北東アジアを巡っては、中露、日露、日韓、日中、中韓など、さまざまな国同士が隣国ゆえの問題を抱えている。そうした中、北海道は地理的にそれら諸国と近いが故のチャンスはないのか?講座の最終回は二人の研究者の話を聴いた。 

 北大スラブ・ユーラシア研の公開講座の最終講義(第7講)が5月29日(月)夜、開講され、受講した。
 この回のテーマは、「北東アジアにおける北海道:危機と機会」と題して、北海道国際交流・協力総合センター(HIECC)の上席研究員の高田喜博氏と、スラブ・ユーラシア研究センター教授の岩下明裕氏の両氏による対談形式の講義であった。

 講義は最初に高田氏から、北海道から見た北東アジアについてのレクチャーがあった。
 北東アジアの連携が叫ばれ始めた今の時代、北海道側から見てみると、それは危機であるとともにチャンス(機会)でもあるという。

               
               ※ 北海道国際交流・協力総合センター(HIECC)上席研究員の高田喜博氏です。

 高田氏が北海道の危機として取り上げたことは、主として内的要因である。その一つは、人口減の問題である。2010年には551万人いた人口が2040年には419万人まで減少すると推計されている。さらには、道内総生産額の減少で、2005年比で現在2兆円以上の落ち込みであるという。こうしたことによる政治と経済の停滞が顕著であるとした。

 一方、北東アジアが大きな変化を迎える中で、地理的にも近い北海道はそれをチャンス(機会)と捉えて、生き残りを図る必要があるという。
 そのキーワードは、グローバリズムとリージョナリズム、人口爆発と気候変動、北海道独立論、北方圏構想、北極海航路、東アジア共同体構想、気候・食料・エネルギー問題等、等々…。こうした変化の中で北海道はピンチをチャンスととらえて施策を打っていく必要があるとした。

 その中でも、高田氏が岩下氏と連携して試行しているのが「ボーダーツーリズム」である。
 北海道における観光産業GDPは1兆8千億円に上り、今や農業生産額を上回り北海道の基幹産業の一つとなっているという。
 ボーダーツーリズムについては、これまでのレポでも触れてきたので割愛するが、北海道はボーダー(境界)に満ちた地域であり、これまでの観光とは一味違った観光を産み出すことで観光業が一層の発展をみせるのではないか、と高田氏は指摘する。
 今回の講座においても、千歳空港を発着とする「サハリン北緯50度国境紀行とアレキサンドロフスク・サハリンスキー早回り5日間の旅」とか、「中露国境紀行2017」など、実際に催行されているツアーの紹介があった。

                    
                    ※ 今回の公開研の全体もコーディネイトしたスラブ研教授の岩下明裕氏です。

 もちろん高田氏が志向しているのは、単に観光だけではないだろう。ボーダーツーリズムを一つの切り口として、北東アジアにおける北海道の再興を図る取り組みが功を奏することを期待したい。

 ※ 講座は、この後、岩下氏と高田氏の対談に移り、北方領土問題を巡る対ロ交渉についても話が及んだのだが、生々しい話も多かったので、その点についてはレポを割愛したい。