8合目までの登りは利尻山登山の序章に過ぎなかった。本当の利尻山登山は8合目から始まったといってよいほど、私には過酷を極めた。しかし、その先に待っていたものは?
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※ 利尻山の山頂と、尾根筋に見える赤い屋根が避難小屋です。
8合目(長官山)に至って、ようやく利尻山の山頂が目の前にあらわれた。その姿は鋭く天を突く、という感じだった。
8合目で少し長めの休みを取った後、天を突く利尻山々頂を目ざしての登行を開始した。初めは長官山を下るかたち進んだが、途中で唯一の雪渓を渡るところがあった。事前情報では雪渓がけっこう残っているとも聞いていて若干心配だったが、結局その一か所だけだった。そこからさらに下り8合目から約15分後、コルの部分に「利尻山避難小屋」があった。この施設はあくまで緊急の避難小屋であって、宿泊はできないそうだ。
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この避難小屋のあるコルのところからは傾斜がぐんと増して、私にはつらい登行となった。はじめはミヤマハンノキが頭上を覆う低木地帯を登っていく。斜度が急なつらい登りだったが、時おり顔を見せる高山植物がいっときの安らぎを与えてくれた。
避難小屋から45分かかり「9合目」に到達した。ここら辺りではすでに森林限界を超えていて風がまともに当たり寒さを感じたために、防風のためにレインウェアを羽織った。山頂は望めるものの、まだまだ遥か遠くに感じる9合目だった。
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※ 高山ゆえ、まだ育ちがおそいエゾエンゴサクです。
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※ 所々で姿を見せてくれたイワベンケイです。
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※ この時期利尻山でとても目立ったエゾノハクサンイチゲです。
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最後の詰めである。この辺りから登山道の様相は一変し、赤茶けた火山礫が目立つ急斜面となった。
また、行く手の右側は山容が大きく崩れ、ぽっかりと谷底が見え、今なお崩壊が進んでいるという。途中には、両側がロープで規制されて人一人通れるだけの細いところもあった。ここのところは緊張するところではあったけれど、聞いていた危険な場所という感じはしなかったというのが私の正直な感想である。
下山途中の人の中で、山頂の風があまりにも強いので、途中の岩陰で昼食を摂っている人がいた。
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疲労しきった体を懸命に高みへ上げる動作を続けていて、ふと顔を上げると、利尻山山頂に見られるローソク岩の細い岩柱が見え、さらには小さく利尻山山頂に建つ祠が目に入った。もう一息である。
とうとう山頂に立つことができる、と思うと現金なものである。急に元気も出て、スタートから5時間45分後、ついに利尻山々頂に立つことができた。
体力の低下著しく、標準時間を大幅に上回る登行時間となったが、よくぞこの私が山頂に立てたもの、と感慨に浸った。
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頂上は強風が吹いていて寒かった。しかもたくさんの人が狭いところに密集していたため、山頂の写真を一枚撮っただけで、私は風の当たらない岩陰に避難した。
眺望はそれほど良いとは言えず、礼文岳のようなパノラマ写真は撮る気がしなかった。
私は風の当たらない岩陰にどっかと腰を下ろし、妻への登頂メール、そしてブログでも山頂から投稿をするなど、ゆっくりと40分間過ごした。
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※ この光景は面白いなぁと思って掲載したものです。沢に残った雪渓が溶け出し、やがては下界の川に流れる様子がよく見て取れる図だと思ったのですが…。
下山、疲労しきった私の脚の筋肉は弾性を失い、恐る恐るの下山となった。印象的には登山時よりも後続に抜かれてしまうことが多かったのでは、と思われる。
私のプライドを保てたのは、例の中高年のグループよりは早く下山できたということだろうか?
下山時に一つのエピソードがあった。それは5合目だったろうか?後ろから追いついてきた男性が英語で「水を分けてほしい」と私に懇願した。その時点で私の持っていた水は残り少なかった。しかし、彼の懇願に負け、残り少ない水を彼に分け与えた。
ずいぶん図々しい人だなぁ、と思いながらも彼の懇願を受け入れた。ところがそのことが後になって私に幸運をもたらしたのだ。そのことについては、明日からの「利尻回想」編で詳しくレポしたい。
結局、私は下山に4時間10分をかけて、なんとか3合目登山口に帰り着くことができたのだった。私の中で、けっして記憶から消えることのない利尻山登山はようやく完結したのだった。
【利尻山〈鴛泊コース〉 登山データ】
標 高 17218m (標高差 1509m)
駐車場 3合目の北麓野営場の駐車場が利用できる。
行 程 ※ グランドシニアの足とお考えください。
登山口(3合目)→(110分)→第一見晴台(6合目)→(75分)→第二見晴台→(30分)→長官山(8合目)→(120分)→利尻山々頂→(85分)→長官山→(85分)→ 第一見晴台→(80分)→登山口(3合目)
時 間 上り(5時間45分) 下り(4時間10分) ※ 休憩時間含む
天 候 晴れ、山頂部は強風
登山日 ‘17/06/18
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※ 利尻山の山頂と、尾根筋に見える赤い屋根が避難小屋です。
8合目(長官山)に至って、ようやく利尻山の山頂が目の前にあらわれた。その姿は鋭く天を突く、という感じだった。
8合目で少し長めの休みを取った後、天を突く利尻山々頂を目ざしての登行を開始した。初めは長官山を下るかたち進んだが、途中で唯一の雪渓を渡るところがあった。事前情報では雪渓がけっこう残っているとも聞いていて若干心配だったが、結局その一か所だけだった。そこからさらに下り8合目から約15分後、コルの部分に「利尻山避難小屋」があった。この施設はあくまで緊急の避難小屋であって、宿泊はできないそうだ。
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この避難小屋のあるコルのところからは傾斜がぐんと増して、私にはつらい登行となった。はじめはミヤマハンノキが頭上を覆う低木地帯を登っていく。斜度が急なつらい登りだったが、時おり顔を見せる高山植物がいっときの安らぎを与えてくれた。
避難小屋から45分かかり「9合目」に到達した。ここら辺りではすでに森林限界を超えていて風がまともに当たり寒さを感じたために、防風のためにレインウェアを羽織った。山頂は望めるものの、まだまだ遥か遠くに感じる9合目だった。
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※ 高山ゆえ、まだ育ちがおそいエゾエンゴサクです。
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※ 所々で姿を見せてくれたイワベンケイです。
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※ この時期利尻山でとても目立ったエゾノハクサンイチゲです。
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最後の詰めである。この辺りから登山道の様相は一変し、赤茶けた火山礫が目立つ急斜面となった。
また、行く手の右側は山容が大きく崩れ、ぽっかりと谷底が見え、今なお崩壊が進んでいるという。途中には、両側がロープで規制されて人一人通れるだけの細いところもあった。ここのところは緊張するところではあったけれど、聞いていた危険な場所という感じはしなかったというのが私の正直な感想である。
下山途中の人の中で、山頂の風があまりにも強いので、途中の岩陰で昼食を摂っている人がいた。
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疲労しきった体を懸命に高みへ上げる動作を続けていて、ふと顔を上げると、利尻山山頂に見られるローソク岩の細い岩柱が見え、さらには小さく利尻山山頂に建つ祠が目に入った。もう一息である。
とうとう山頂に立つことができる、と思うと現金なものである。急に元気も出て、スタートから5時間45分後、ついに利尻山々頂に立つことができた。
体力の低下著しく、標準時間を大幅に上回る登行時間となったが、よくぞこの私が山頂に立てたもの、と感慨に浸った。
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頂上は強風が吹いていて寒かった。しかもたくさんの人が狭いところに密集していたため、山頂の写真を一枚撮っただけで、私は風の当たらない岩陰に避難した。
眺望はそれほど良いとは言えず、礼文岳のようなパノラマ写真は撮る気がしなかった。
私は風の当たらない岩陰にどっかと腰を下ろし、妻への登頂メール、そしてブログでも山頂から投稿をするなど、ゆっくりと40分間過ごした。
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※ この光景は面白いなぁと思って掲載したものです。沢に残った雪渓が溶け出し、やがては下界の川に流れる様子がよく見て取れる図だと思ったのですが…。
下山、疲労しきった私の脚の筋肉は弾性を失い、恐る恐るの下山となった。印象的には登山時よりも後続に抜かれてしまうことが多かったのでは、と思われる。
私のプライドを保てたのは、例の中高年のグループよりは早く下山できたということだろうか?
下山時に一つのエピソードがあった。それは5合目だったろうか?後ろから追いついてきた男性が英語で「水を分けてほしい」と私に懇願した。その時点で私の持っていた水は残り少なかった。しかし、彼の懇願に負け、残り少ない水を彼に分け与えた。
ずいぶん図々しい人だなぁ、と思いながらも彼の懇願を受け入れた。ところがそのことが後になって私に幸運をもたらしたのだ。そのことについては、明日からの「利尻回想」編で詳しくレポしたい。
結局、私は下山に4時間10分をかけて、なんとか3合目登山口に帰り着くことができたのだった。私の中で、けっして記憶から消えることのない利尻山登山はようやく完結したのだった。
【利尻山〈鴛泊コース〉 登山データ】
標 高 17218m (標高差 1509m)
駐車場 3合目の北麓野営場の駐車場が利用できる。
行 程 ※ グランドシニアの足とお考えください。
登山口(3合目)→(110分)→第一見晴台(6合目)→(75分)→第二見晴台→(30分)→長官山(8合目)→(120分)→利尻山々頂→(85分)→長官山→(85分)→ 第一見晴台→(80分)→登山口(3合目)
時 間 上り(5時間45分) 下り(4時間10分) ※ 休憩時間含む
天 候 晴れ、山頂部は強風
登山日 ‘17/06/18