水素エンジンの自動車と一口に云うが、実は大きく二つに分かれていることを知った。脱酸素を目ざし水素社会の実現に向けて奮闘するトヨタ自動車の開発責任者のお話に耳を傾けた。
「北海道ビジネスEXPO2021」と併行して開催されたビジネスセミナーの第1弾は基調講演として「脱炭素における水素社会の実現に向けて ~水素社会普及へのトヨタ自動車の取組み」と題してトヨタ自動車(株)FC事業領域統括部長の濱村芳彦氏が講演された。
まずリード文でも触れた水素エンジンのことであるが、興味のある方にとっては常識的なことなのだが、二つの方向性があることを私は初めて知った。
一つは、水素と酸素の化学反応によって発電したものを燃料電池として蓄え、その電気エネルギーを使ってモーターを回して走る自動車のことで、燃料電池車(FCV)とも呼ばれている自動車。
もう一方の水素エンジン車は、文字どおり水素そのものを燃料としてエンジンを駆動させて走る自動車がある。
トヨタ自動車は両者ともに研究開発に取り組んでいるが、完成品が市場に出ているのは燃料電池車(FCV)の方だけで、水素エンジン車の方は今年5月に富士スピードウェイで行われた24時間耐久レースに参戦し、見事完走したことで話題を呼んだが、トヨタとしては今のところ市販の予定はないとしている車である。
したがって講師の濱村氏も燃料電池車(FCV)の開発、市販化に取り組んだ責任者ということだった。濱村氏はトヨタで20数年間エンジン開発に取り組んできた技術者であるが、社命だったとはいえFVCの開発に携われたことに大きな意義とやりがいを感じていると話された。
濱村氏は技術開発の難しい話よりは、一般向けに脱炭素社会を目ざす先兵として水素自動車の優位性を説く講演内容だった。濱村氏によると、現在地球上走っているガソリン車が排出する炭素の量は全体の数パーセント(数字をメモすることができなかった)に過ぎないとした。濱村氏が言いたかったことは、排出量が数パーセントだったとしても、ガソリン車を廃止することのアナウンス効果は大きいということを言いたかったのだろうと解釈した。
だから氏は、世界がカーボンニュートラルの世界に向かっている動きを年代ごとに図示し、その動きが加速していることを示唆した。
トヨタの燃料電池車は第二世代に入り、改良された燃料電池車MIRAIは、水素を満タンにすると航続距離が1,000kmを超える報告が次々と入っているとした。ただし、燃料電池車の普及には解決せねばならない課題も多々あるようだ。現在、水素ステーションは全国で155ヵ所(北海道には2ヵ所)しかないそうだ。また、燃料電池はコストがかかるために価格が600~700万円台と高価なことが普及のための足かせとなっているとのことだった。
現在、脱酸素を目ざす自動車としては電気自動車(EV)が一歩先を行っている感が強い。ホンダ自動車も燃料電池車(FCV)を市場に出しているというが、はたして電気自動車(EV)が世界を席巻するのか?あるいは燃料電池車(FCV)がその座を脅かすのか?はたまた水素エンジン車が市場に登場するのか?向こう10年後には街を走る自動車の姿が一変しているのかもしれない。その図を私は見ることができるのか?
クエッション(?)がたくさん付いた講演会だった…。
※ 会場内は写真撮影はNGだったので、写真は全てウェブ上から拝借した。