昨日(11月3日)、ちょっと文化の日らしい過ごし方をしてみた。ビゼーの「アルルの女」、ラヴェルの「ボレロ」、そして懐かしの映画音楽と、私のレベルにちょうど合った選曲の数々で大いに楽しめたコンサートだった。
コンサートの冠に「北海道信用金庫」と付いていたが、立派に有料(2,500円)で私に与えられた席は演奏陣を横から眺める席だったこともあり、それほどの割安感は感じなかった。(しかし、そのことが後から思わぬ幸運を呼んだのだが…)
当日のプログラムをまず紹介すると…、
《パイプオルガン独奏》
◆幻想曲 変ホ長調/サン=サーンス
《札幌交響楽団》
◆オープニング 虹と雪のバラード/村井邦彦(作詞:河邨文一郎)
【第一部】クラシック ~華やかな「アルルの女」と熱狂の「ボレロ」~
◆「アルルの女」より パストラール~メヌエット~ファランドール/ビゼー
◆ボレロ/ラヴェル
【第二部】ポップス ~元気が出る映画音楽~
◆「ロッキー」メロディー/ B.コンティ
◆ ひまわり/H.マンシーニ
◆「ゴジラ」タイトル・テーマ/伊福部昭
◆「ジュラシック・パーク」よりテーマ/J.ウィリアムズ
※ アンコール
◆ラデイッキー行進曲/ヨハンシュトラウスⅠ世
一覧いただくと、割合親しみ深い楽曲が並んでいることに気が付かれると思う。本当のクラシックファン、オーケストラファンの方には物足りないと思われるかもしれないが、私のレベルではちょうど良い選曲だった。
※ コンサートの指揮を務めた現田茂夫氏です。
楽しめたコンサートの中でも私が特に気に入ったのは次の3曲だった。
1曲目はオープニング曲の「虹と雪のバラード」である。繊細なヴァイオリンの主旋律が流れると、1972(昭和47)年の頃の高揚した情景が鮮やかに蘇った。私は大学を卒業して職を得て2年目の冬だった。日本の経済は右肩上がりで、誰もが未来に夢を抱いた時期だった。当時私は札幌市民ではなかったけれど、作詞された河邨文一郎氏が「町ができる 美しい町が」、「生まれかわるサッポロの地」と謳ったあの時代が走馬灯のように私の中を駆け巡ったひと時だった。
2曲目は、「アルルの女」のメヌエットである。あの優しい、そして何度も聴いたメロディがフルートの優しい調べが会場内に流れたひと時はほんとうに心が豊かになった思いだった。
そして3曲目はラヴェルの「ボレロ」である。この演奏が始まる前にパーカッション担当の女性がいつもの場所とは違いステージの中央付近まで出てきたのだ。そこはちょうど私の目の前だった。彼女はスネアドラム(小太鼓)の担当である。演奏が始まると、フルートの静かな調べに乗せて、スネアドラムの音が微かに響いてきた。私の耳に微かに届くような繊細な音で一定のリズムを刻み続けた。微かな響きを一定のリズムで奏でるのはかなり難しい技術が必要されるのではないか。そのリズムは時と共に徐々に、徐々にその音を大きくしていった。同じ一定のリズムを刻みながら…。結局、スネアドラムは「ボレロ」の演奏時間のおよそ15分間、ひと時も休むことなく最後には体いっぱいにステックを叩きつけるような演奏となって終えた。私は間近でプロ奏者の凄さを目撃した思いだった。
もちろんその他の映画音楽も良く耳に馴染んだ曲ばかりで、十分に満足するコンサートだった。
北海道信用金庫では来年も11月3日に同様のコンサートを計画しているという。今回と同じような選曲のコンサートなら次回も足を運んでみようと思わせてくれた札響クラシック & ポップスコンサートだった。