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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 №333  小川の辺(ほとり)

2021-12-14 15:38:28 | 映画観賞・感想

 藤沢周平原作の映画化である。藩主の農政に異議を申し立てた義兄弟を討て、という藩命を受けた戌井朔之介は葛藤しながらも藩命に逆らうことのできない下級武士の悲哀を描いた藤沢ワールドの神髄を描く映画である。

        

 私が所属する「めだかの学校」の時代劇映画観賞会「藤沢周平の世界」第3回観賞会が昨日13日(月)午後開催された。今回の上映作品「小川の辺」は藤沢周平短編集「闇の穴」に収録されていた同名の短編小説が原作である。映画は2011(平成23)年、篠原哲雄監督によって映画化されたものだ。

 海坂藩の下級武士である戌井朔之介(東山紀之)はある日藩の家老から呼び出しを受け、朔之介の妹・田鶴(菊池凛子)の夫である佐久間森衛(片岡愛之助)を討てとの命令を受ける。朔之介は一度は断るものの、藩命には逆らえぬとの家老の言葉には逆らえなかった。森衛は藩主の農政を糾すべく直言したことが藩主の逆鱗に触れ、さらに脱藩したことで海坂藩としては生かしてはおけない輩となっていたのだ。義理の弟を討つということに加え、朔之介を悩ませたのは田鶴が剣の名手であり、朔之介が森衛と相討つとなると田鶴が森衛に加勢して兄妹が修羅場を演ずることになりかねないことが朔之介を悩ませていた。

 朔之介は同行を願い出た若党の新蔵(勝地涼)と共に森衛を討つべく江戸方面へと旅立った。実はこの新蔵が意外に重要な役どころとしてこの物語は回っていくのだが、粗筋紹介が本ブログの趣旨ではないので、この後は映画、または原作にあたっていただきたい。

   

※ 田鶴と新蔵は実は幼馴染だった……。

 さて、主演を務めた東山紀之であるが、彼のストイックな生き方、そして憂いをたたえた彼の表情はまさにはまり役と思えた。そして意外だったのは新蔵役を演じた勝地涼である。難しい役柄を演ずるに十分に演技力だったと私は見た。さらに意外だったのは、観賞後の話し合いである参加者が、この映画を海外で公開した際に田鶴役の菊池凛子が絶賛を浴びたという話が出たことだ。勝気な表情の菊池凛子は兄にさえ立ち向かっていくという役柄にぴったりとは思えたが、映画の中でそれほど登場場面も多くはなかったのに、絶賛を浴びたということが私には解せなかった。

 そもそも海外において、藩命に逆らえず義兄弟といえども果し合いをせねばならないというシチュエーションを理解することができたのだろうか、という疑問が私の中にはあったのだが…。案外、外国の社会においてもそうしたことはあり得た話なのかもしれない…。

        

 これで「めだかの学校」では、「武士の一分」(木村拓哉)、「たそがれ清兵衛」(真田正之)、そして今回の「小川の辺」(東山紀之)と三者三様の海坂藩の下級武士を観てきたのだが、それぞれが持ち味を出した下級武士を演じてくれて興味深かった。次回は山田洋次監督の「隠し剣鬼の爪」(永瀬正敏)の鑑賞予定である。山田洋次と永瀬正敏がどんな藤沢ワールドを見せてくれるのか?今から楽しみである。 

※ 今回掲載の写真は全てウェブ上から拝借したものです。