今年度「北海道・北東北縄文遺跡群」がユネスコの世界文化遺産に正式登録された。それを機に改めて縄文人の生活を振り返ってみたとき、SDGsの理念を具体化した生活ぶりだったという。どういうことなのか?話を伺った。
※ ポスターは今回のものとはテーマが違う。トヨタソーシャルフェスは全国展開しているようだ。
昨日午後、「TOYOTA SOCIAL FES!2021」というイベントの一環として「北海道クリーンHOKKAIDOプロジェクト」と題するシンポジウムがZoomで配信され、それを受講することができた。
シンポジウムのテーマは「縄文文化継承は究極のSDGs!? ~縄文人に学ぶサスティナブルな暮らし~」というものだった。
シンポジウムに登場したのは次の方々だった。 ※敬称略 ( )内は肩書
◇ 中山 卓也(俳優、世界遺産検定マイスター)
◇ 望月 昭秀(フリーペーパー「縄文ZINE」編集長)
◇ 藤岡みなみ(文筆家、ドキュメンタリー映画プロデューサー)
◇ 福田 裕二(函館市教育委員会学芸員)
◇ 永谷 幸人(伊達市教育委員会学芸員)
以上の登壇者を細田阿也フリーアナが司会を務めて進行された。
席上、函館市教委の福田氏が縄文人の生活が「資源管理による持続可能な社会を実現する」という観点に立つと次のような特徴が見られるとした。〈 〉の数字はSDGsの17のゴールのどれに当たるかを示したものである。
◆ 環境適応と自然との共生 〈13〉
◆ 長期間定住を営んだ大船遺跡 〈11〉
◆ 高い精神性:土偶 ~ 祈りの女神たち 〈3〉
◆ 生命を大切にする心 ~ 人を思いやる気持ち 〈2〉
◆ 縄文人の精神性 〈12〉
◆ 動物儀礼や供養を示すもの 〈12〉
◆「JOMON」は世界に誇る文化 〈10〉
ゴールの指標には多少?な部分もあるが、それは素人の感覚で専門家の間では定着している考え方なのだろう。
続いて伊達市教委の永谷氏が伊達市から発掘された「北黄金貝塚」について紹介された。永谷氏は「北黄金貝塚」は「暮らし」と「心」が分かる貝塚だとし、環境の変化に適応した(上手につきあった)暮らしをしていたことが良く分かる貝塚だと紹介された。そして「北黄金貝塚」から学べるSDGs的価値として〈11〉、〈12〉、〈14〉、〈15〉を挙げた。
※ シンポジウムに登壇した望月氏(左)と中山氏(右)です。
その後、その他のお三方によるプレゼン、そして感想交流へと進んだが、こちらの方々はいずれも縄文文化応援団的な存在の方々で、諸氏の発言から何かを学ぶという視点に立った時、私の聴き方に問題があるせいか印象的な言葉を伺うことができなかった。ただ、藤岡氏が「北黄金貝塚」を訪れた経験があって、その際の印象として「愛されている貝塚」と表現されたことが印象的だった。実際に写真などを見た時に「これは一度行ってみたい貝塚だ!」と思わせてくれた。来年の道内旅行の候補として「北海道の縄文遺跡巡り」というのを考えてみたいと思った。
※ 藤岡氏が「北黄金貝塚」を訪れた時に写真が提示されました。
“SDGs”、あるいは “サスティナブル” は今や時代のキーワードである。何もなかった縄文時代は人々が生き延びるために自然を上手く利用することが必須のことだったろう。時代は巡り、人間は自然から多くのものを収奪し、活用することによって便利で快適な生活を実現してきた。その結果として自然は今あらゆるものが枯渇寸前の状態になっているという。そして今、“SDGs”が、あるいは “サスティナブル” が叫ばれている。「北海道・北東北縄文遺跡群」が世界遺産に登録されたのは必然のことだったのだろう…。