張り出した屋根、その屋根のブルーの色とイエローの壁のコントラストが印象的な建物である。その個性的な建物が藻岩山の濃い緑に映えて、歴史の重ささえ感じさせる「旧小熊邸」であった。
※ 「旧小熊邸」の全体像です。
この「旧小熊邸」から、札幌景観資産巡りのナンバーリングと指定番号に違いが出てきた。というのも、指定第3号の「三谷牧場の牛舎・サイロ」が解体されたために指定解除となり、指定第4号の「旧小熊邸」を訪れたということである。これからの順序も必ずしも指定順にはこだわらず巡り歩こうと思っている。
※ 建物の前には「都市景観重要建築物」と記された標識が立てられていました。
さて、この「旧小熊邸」は北海道帝国大学(現北海道大学)の小熊桿(まもる)教授の自宅として、建築家田上義也の設計で1927(昭和2)年に建築されたそうである。田上はアメリカの著名な建築家のフランク・ロイド・ライトに師事したことから、深く張り出した軒、大きな亀甲窓、外壁の羽目板による水平性を強調したデザインなどライトの影響を強く感じられる建物になっている。平成に入って解体による消失を危惧する市民の存続・復元運動により、市民、行政、企業の連携によって、1998(平成10)年藻岩山の麓に移築されたそうだ。
※ 「旧小熊邸」の前庭です。
※ 二階のカフェスペースのテーブル席です。
※ こちらは一階のテーブル席です。奥にフィッシング用品が陳列されています。
※ 窓の枠にも時代と気品が感じられます。
私は札幌に転居早々の2009年頃に知人を案内して、まだ「ろいず珈琲館」が入店しているときに入ったことがあったが、それ以来10数年ぶりに訪れた。「ろいず珈琲館」はすでに退去していて、代わって「DOLLYVARDEN(ドリーバーデン)」というフィッシング用品の販売とカフェとして開業されていたが、外観は当時と全く印象が変わらず、しっかりとメインテナンスされているようだった。
間もなく築100年を迎えようとしているが、札幌の貴重な建築遺産として永く保存されてほしいものである。
※ 少し角度を変えたところから撮ってみました。
《旧小熊邸 情報》
◇所在地 札幌市中央区伏見5丁目3-1
◇建設年 1927(昭和2)年
◇構 造 木造
◇指定年 2005(平成17)年3月3日
◇その他 現在「ドリバーデン」としてフィッシング用品、カフェとして開業中
開店時間 11:00~20:00 店舗利用者のみ内部見学可 ※木曜日定休日
◇訪問日 2021年10月4日