“国宝” と聞くだけで、観る側はもうそれらが光輝いて観えた。それは展覧会に訪れた人たち共通の思いだったようだ。遅々として動かない長蛇の列にはしびれを切らす思いだったが、さんざん待たされた後に目にする “国宝” だけに特別感は倍増した思いだった…。
本日午後から北海道博物館で「『北の縄文世界と国宝』展ができるまで」という講座を受講することになっていたので(講座については明日レポします)、その前に特別展を観ようと午前から北海道博物館に向かった。
※ 北海道博物館のエントランスです。
博物館に行ってみて驚いた。なんとチケット売り場から長蛇の列ができていた。チケットを購入し、常設展の入口でナウマン象の原寸大の骨格レプリカに迎えられる。常設展は何度も観ているのでそこはパスして、真っすぐに特別展会場に向かった。するとそこがまた凄かった。入口から長蛇の列が始まったのだ。その列が遅々として前へ進まないのだ。
※ 常設展入口のナウマン象の骨格レプリカに迎えられて…
後で分かったことだが、特別展は4章から構成されていたのだが、その第1章が国宝が展示されている「縄文―その心と美―」というコーナーだったことが長蛇ができる原因だったようだ。
※ これは国宝ではありませんが、有名な「遮光器土偶」の複製です。
今回の特別展に展示されていた "国宝” は次の9点の土偶や土器と、遠軽町の黒曜石の国宝である。
◇土偶(縄文のビーナス) 長野県茅野市棚畑遺跡
◇土偶(仮面の女神) 長野県茅野市中ッ原遺跡
◇土偶(縄文の女神)山形県舟形町西ノ前遺跡
◇土偶(合掌土偶) 青森県一戸町風張1遺跡 ※複製
◇土偶(中空土偶) 北海道函館市著保内遺跡
◇土偶 青森県六ケ所村大石平遺跡
※ 何故かカメラに記録が残っていませんでした。
◇火焔型土器 新潟県十日町市笹山遺跡
◇火焔型土器 新潟県十日町市笹山遺跡
◇王冠型土器 新潟県十日町市笹山遺跡
※ 王冠型土器は左側の土器です。
この他に、遠軽町白滝遺跡から発掘された21点の黒曜石製の石器が展示されていた。
※ 上の石器は長さが20cm以上もある大物でした。
※ 反対にこんな小さな石器も国宝でした。
ここで私が気付いたことがあった。発掘された遺跡に注目してほしい。なんとこれらの遺跡は今回世界遺産に認定された遺跡が一つも含まれていないのだ。確かにそれらの遺跡は世界遺産に認定された「北海道・北東北の縄文遺跡群」には含まれないが、同じ北海道や北東北地方の遺跡だったり、北東北からそれほど離れていない地域の遺跡で発掘され、縄文時代に製作されたものであることから今回展示されたものと思われる。
これら美術的価値、工芸的価値を有するような土偶や土器を数千年前に製作されていたということに驚きを禁じ得ない思いだ。
※ 札幌市内の遺跡から発掘された土偶です。「イケメン土偶」とも呼ばれている土偶です。
特別展は、第1章「縄文―その心と美―」に続いて、第2章「世界遺産『北海道・北東北の縄文遺跡群』の価値」、第3章「世界遺産とは」、第4章「縄文文化を未来へ」という構成になっていて、主催者としては特に第2章に力点を置いた構成にしていたようだ。その第2章では「北海道・北東北の縄文遺跡群」の17の構成遺跡と2つの関連遺跡に関する展示があり、そこには各遺跡から発掘された相当数の土偶や土器が展示されていた。しかし、“国宝” を観た後とあって私も含めてあまり関心をもって観ている人は少なかったようだ。これは展示構成を構想された側の読み間違いでは?とも思われるのだがどうなのだろう。展覧会名としては「北の縄文世界」が前面には来ているが、多くの人の関心はやはり「国宝」に向いていたのではないだろうか?
それはそれとして、やはり “国宝” という吸引力を改めて感じさせられた「北の縄文世界と国宝」展だった…。