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映画 ウエスト・サイド・ストーリー №299

2021-01-26 16:01:37 | 映画観賞・感想

 レナード・バーンスタインの音楽、キレッキレのダンス、儚い恋、等々…。映画が制作されてから60年も経つというのに、その輝きは少しも失われていないかのようだった。

        

 ニューヨークのマンハッタンの西地区はアッパーウェストと称され、多くの富裕層が住む街として知られている。しかし、その片隅にはアメリカに夢を持って渡ってきたものの虐げられ貧しく暮らす移民の子孫たちがいた。彼らの多くは夢を描くこともできずに享楽に走り、ケンカを繰り返していた。そんな彼らの不良グループ、ポーランド系アメリカ人の「ジェット団」と、プエルトリコ系アメリカ人の「シャーク団」との抗争がストーリー縦糸として描かれるのだが、そこにジェット団の元リーダーのトニー(リチャード・ベイマー)とシャーク団のリーダー・ベルナルド(ジョージ・チャッキリス)の妹のマリア(ナタリー・ウッド)が恋仲となり横糸を紡ぐことになる。

          

 ストーリーを追いかけるのはよそう。この映画の魅力は何といっても音楽の魅力にある。音楽家バーンスタインが作曲した「トゥナイト」、「アメリカ」、「マンボ」、「クール」、「マリア」といった名曲が出演する俳優たちによって次々と歌われる。

 そしてダンスである。不良グループたちが群舞のような形で繰り出すキレッキレのダンスはこの映画の見ものである。映画の前半、シャーク団のリーダー役のジョージ・チャッキリスを中心としたダンスはこの映画のポスターを飾るほど象徴的なダンスである。チャッキリスはこの映画で必ずしも出番が多いとはいえないが、抜群の存在感を示している。主演のリチャード・ベイマーやナタリー・ウッドも好演しているが、この映画の最大の立役者はジョージ・チャッキリスだったのではないか。彼はこの映画でアカデミー賞の助演男優賞を獲得しているが納得である。

    

 映画はベルナルドも、トニーも抗争の中で命を落としてしまうという悲劇で終わるのだが、映画の背景には、アメリカが抱える古くて新しい人種差別という問題が横たわっていた。一方で、映画が制作された1961年というと、昭和36年である。私はまだ15歳の中学生の時だ。日本はまだまだ敗戦からの復興を目指していた時代である。映画の冒頭、ニューヨークの街を俯瞰する映像が映し出されるが、そこには高層ビルが林立し、立体交差する高速道路が縦横に走っているという富める国アメリカが映し出されていた。映画の観客たちは富める国アメリカへの憧れを強く抱いたのではないだろうか?私はマリアが勤める洋裁店の窓にかかるロール式のカーテンを見て、今でもお洒落なロール式のカーテンが60年前にアメリカの下町の小さな店に架かっていたことに小さな驚きをもって観ていた。

 批評家たちによるとミュージカル映画として「ウエスト・サイド・ストーリー」を上回るものは60年を経過した今も現れていないという。それくらい観客を魅了した映画だった。ところが奇しくもというべきか今年(2021年)の12月に、あの名匠ステーヴン・スピルバーグ監督によってリメイク版が公開されるという。公開されたならぜひとも映画館に足を運び観てみたいと思っている。

 ※ なお、本作は昨年12月31日にNHK・BSプレミアムで放送されたのだが、録画しておいて昨夜になって観たものである。



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