コロナ禍、そして福島第一原発処理水の海洋放出問題と多難が続く観光業界だが、観光業が主要産業の一つである北海道として、未来に展望はあるのだろうか?かつて大挙して押し寄せたインバウンドは還ってくるのか?専門家からお話を聴いた。
本日午後、北海道立道民活動センター(かでる2・7)において、道民カレッジが主催する「学びの広場で学ぼう」講座が開講され参加した。
本日の講師&テーマは、北海道新聞社特別編集委員の鈴木徹氏が「北海道観光の可能性」と題して2時間にわたって講義された。
※ 講義をされる鈴木徹氏です。
鈴木氏はまず冒頭に、北海道新聞において2001年の1月から鈴木氏が主執筆者となって「かんこう旅遊革命」という特集記事を連載したそうだが、その中で「今世紀は『大観光時代!』」と謳ったという。そして世界はその予測どおりに推移しているという。世界の観光人口(世界で旅行をする人の総数)は1980年には2億人だったものが、コロナ前の2019年には14億人にまで増えたそうだ。そしてコロナ禍で一時落ち込んだとはいえ2030年には18億人にまで増えると予測されているそうだ。
※ 受講者は15~6名と少し寂しかったですね。
このような背景の中、観光先として日本は海外、特にアジア諸国からはとても人気の高い国としてランクインしているという。日本を訪れる外国人観光客の人気ベスト3は、①東京、②北海道、③関西の順で北海道の人気が高いことをうかがわせている。
ここで鈴木氏は「ちょっと脇にそれるが…」と話して、「観光とカジノ」の関係について触れた。データとして見た時、カジノが存在する国の観光客が増えているという事実はなく、むしろ近年はカジノがない国の方が外国人観光客を呼び込んでいるという調査結果が出たそうだ。カジノを、外国人観光客を呼び込むための主要な柱とするのは愚策ではないか、と鈴木氏は指摘した。
※ 鈴木氏のスライドをお借りしました。日本の観光収入は世界第7位で、前年からの伸び率では3番目ですね。2019年の統計です。
さて、外国人観光客の中でもコロナ前に大挙して日本に押し寄せてきた中国人観光客の帰趨は日本の観光業界にとって大いに気になるところである。その中にあって福島第一原発処理水の海洋放出問題が生起したことにより中国人の反発は凄まじく、現状においては中国人の来日観光客などは望めない状況である。この問題について、鈴木氏は意外にも楽観的に見通しを語った。というのは、2012年に勃発した尖閣列島の国有化宣言をした日本に対する中国の反発は凄まじかったが、2年も経つと反発は収まり来日する中国人観光客が倍増、倍々増したという事実がある。今回の騒動についても日本政府の対応にもよるが早晩収まるのではないか、というのが鈴木氏の見通しだった。
さて、中国人の日本に対する反発が鈴木氏の見通しどおりに収まったとして、北海道は中国人だけではなく、外国人をどう迎えるべきかについて鈴木氏は言及した。鈴木氏は言う。「観光客はただ単に風光明媚な景色や観光資産を見に来ているだけではない」、「そこに住む人たちの生活や雰囲気を感じ取ることにも魅力を感じている」と…。事実、調査結果からは日本のどこが魅力的か?という問いに「日本人のホスピタリティが素晴らしい」という答えが最も多かったという調査結果があるそうだ。
北海道において観光業は今や主要産業に一つになっているとし、来日外国人観光客の応接を業界関係者だけに委ねるのではなく、一般人においても彼らを快く迎える姿勢が大切なのではないか、と鈴木氏は結んだ。何故なら、観光こそが「平和産業」であり、我が国の安全保障にとっても重要なことであるとした。
※ 鈴木氏のまとめのひとつです。
中国人ばかりではない。日本を訪れてくれた外国人が日本の良さを知ってくれ、日本人と触れ合うことでお互いを理解し合い、国同士の争いを避けるための小さな一歩となることを私たちは肝に命じ、彼らと接したいと思わせられた本日の講義だった。