あの印象的なトランペットのファンファーレが鳴り響くと、疾走感あふれる「ウィリアム・テル序曲」の演奏が始まった。ピッチの速い曲をヴァイオリンの集団が一糸乱れぬ音を紡ぎ出す。さすがにプロフェッショナルの集団である。お馴染みな曲の数々をプロの技で堪能したひと時だった。
昨日(6月2日)午後、札幌コンサートホールKitaraにおいて「Kitaraでクラシック」と題するコンサートが行われ参加した。このコンサートは札幌交響楽団が主催する、いわばクラシックに縁遠い層の方々への普及活動の一環として行われたコンサートだと解した。何せ入場料が1,000円(65歳以上は500円)という格安料金である。”格安” というワードに弱い私はすかさず入場券を入手した。客層を眺めてみると、札響のねらいは間違っていなかったようだ。普段はクラシックにあまり縁のなさそうな人たちの姿が目立ち、大ホールはほぼ満杯の状況だった。
演奏する曲の選定も、初心者用に配慮されたものだった。そのラインナップは…。
◆ロッシーニ/「ウィリアム・テル」序曲より “スイス軍の行進”
◆モーツァルト/「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」より第1楽章
◆チャイコフスキー/「白鳥の湖」より“情景” “チャルダッシュ”
◆スッペ/「美しきガラテア」序曲
◆エルガー「愛の挨拶」
◆ドヴォルザーク/スラヴ舞曲第1集より第8番
◆ヨハン・シュトラウス2世/ワルツ「美しく青きドナウ」
〈アンコール曲〉◆外山雄三/管楽器のためのラプソディ
以上だったが、私にとって2曲ほど聴き慣れない曲だったが、他はお馴染みの曲が並んでいて楽しくリラックスして聴くことができた。
コンサートでは、まるで学校における音楽会のように指揮を担当された中田延亮さんがオーケストラを構成する楽器を一つ一つ丁寧に紹介し、その音色を聞かせてくれるという配慮までされた。
※ 指揮とお話を担当した中田延亮さん
私にとって演奏されたいずれの曲も心から楽しめたが、その中でも印象深い一曲が選曲されていた。それはエルガー作曲の「愛の挨拶」である。この曲は札響のコンサートマスターを長い間務められたヴァイオリニストである大平まゆみさんが個人コンサートやリサイタルにおいて登場するときに必ず演奏した曲である。大平さんは現在ALSという難病に罹り闘病中で、おそらく彼女の演奏を再び聴くことはできないであろう。そうしたこともあり、彼女の名演奏を偲びながら聴いた一曲だった。
※ ヴァイオリンを演奏する大平まゆみさん
私にとって十分に満足するコンサートだったが、時には札響の定期演奏会にも足を運んでみたいと思いつつ、実現できていない。私にはハードルの高い定期演奏会であるが、いつか足を運びたいと思っている。
※ 掲載した写真は全てウェブ上から拝借しました。