Shineとは、直訳すれば “光” である。しかし、天才ピアニストと言われた主人公ディヴィットはピアノの修行中に精神を病んでしまい、けっして “光” に満ちた人生とはいえない。しかし、彼にはそこから先の人生があった…。
※ ポスターの上段は父親、中段はディヴィットと妻、下段はディヴィットの青年時代、カラーの部分は精神を病んでしまったディヴィットです。
本作は私にとっては珍しいオーストラリア制作の映画である。というのも題材がオーストラリア生まれで実在のピアニストであるディヴィット・ヘルフゴットの半生を描いた伝記映画だからということだろう。
映画は1996(平成8)年に制作されたもので、私は去る7月13日にBSプレミアムで放送されたものを撮り貯めしておき、先日観賞した。
ディヴィットは父親の英才教育によってピアニストとしての才能に目覚めた。周りは彼の才能を伸ばすために海外留学を勧めるが、父親は頑として自分の傍から離そうとしない。しかし、成長するに従い自立心が芽生えたことで19歳の時に父親の意志に反し、家出する形で英国王立音楽大学に特待生として留学する。
そこで父親からいつか弾きこなすようにと言われていたラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」コンクールの演奏曲に選んだディヴィットは、猛特訓の末に見事に演奏するが、過度のストレスによって精神を病んでしまう。ディヴィットはこのことによって演奏家の道は断たれ、オーストラリアに傷心の帰国となってしまった。
※ 英国王立音楽大学時代の青年時代のディヴィット役のノア・テイラーですが、彼も好演しました。
10数年の闘病生活を送り症状は落ち着いたもののディヴィットが元に戻ることはなかった。しかし彼にある幸運が訪れた。その幸運とは…。
彼は精神は止んでいたが、幼いころから習い覚えたピアノを演奏する技は身体が憶えていた。そのことが幸いし、ステージは違えどもピアノを演奏しながら生活する道に出会うことができた。さらには愛する妻とも出逢えることができたというストーリーである。
映画を観賞後、この映画のテーマは何なんだろうか?と考えてみた。つまるところは、彼の人生は傍(はた)から見たら「かわいそうな人生」と映るかもしれない。しかし、彼自身の中ではちっともそうは思ってはいないのではないか。好きなピアノを弾くことができ、最愛の妻とも幸せに暮らすことができている。彼にとってそうした現在の生活は、悲嘆の縁から救ってくれた、まさに “Shine”(光)だったのではないか。
※ 絶えず煙草を話さなかったディヴィットです。
精神を病んでしまったディヴィット役をオーストラリア人の俳優ジェフリー・ラッシュが好演している。彼はこの演技でアカデミー賞主演男優賞を受賞したという。
さらなるエピソードとしてこの映画で流されるピアノ曲は全てディヴィット・ヘルフゴット自身が演奏しているということだった…。