十四
一四〇 文化十二年十一月
一本座能役者共、藝ニ付所々え罷越候節、御制度外之衣服 肥後の能楽 肥後金春流・中村 勝 氏
着用願難叶、麻横上下之儀は御家中獨禮以下着用不苦旨、 麻横→横麻か?
年行司幷大夫え及達候事
一四一 文政二年八月
一格別御儉約今年より猶五ヶ年之間年延被仰付候付ては、
先達て各え御書付拝見被仰付候通ニ付、町中一統彌以是
迄之心得方相ゆるみ不申様、屋作・衣服・飲食其外共、己
/\か分限を考、少も奢ヶ間敷費なる儀無之様相心得可
申候
一呉服物・諸道具・書物類は不及申、諸商賣物菓子類ニて
も新規ニたくみ出候事御停止之旨、前々御觸有之候通ニ
付、衣服諸道具等彌以新規之物數奇仕間敷候、間ニは絹
木綿類も珍敷染方いたし、御制度之品ニもまがひ候衣類
等着いたし候ものも有之、且近年菓子類種々上品を拵出
し心得違之儀ニ候、其外男女身之廻り之用具、或は女子
之髪飾類無益之費も有之様子ニ相聞候間、彌以右躰之儀
無之様相示可申候、其外平日共飲食之費無之様ニ分て示
方可有之候
一町家御法度筋等之儀、前々追々被仰付置候趣有之候間、
町役人より示方は不及申、年若者共えは親兄より連々懇
ニ申教、銘々家業精を出し正直ニ商賣いたし、惣て高利
を貪さる様ニ相心得可申儀勿論ニ候處、間ニは同シ品物
之直段、品ニより各別之高下も有之様子ニ候、是等は品
柄之善悪、元仕込等之違目にて少々之高下は有内之儀ニ
も可有之候得共、同シ品物之價ニ格別之違有之候は、何
レニ不正之利を貪候故之儀と相聞候條、彌以向後正直之
利潤を以商賣可仕候
一町家之者共御侍中其外御家人中え對、無禮無作法之躰無
之様との儀は、追々被及相達置候通彌以相心得、於途中
御侍見受候ハヽ、不敬ニ無之様かたより候て罷通、たと
ひ大勢混雑之場所たり共、成たけよけ候て無禮ニ無之様
屹ㇳ相心得可申候、惣て刀差以上は勿論其外之人ニ對候
ても無禮成儀等堅無之様、精々相示可申候
右之通相心得可申候、若違犯之輩有之候ハヽ、屹ㇳ可被
仰付旨、惣月行司え及達、四ヶ所町えも寫差廻候事
右書付ニ相添及達候
一御儉約付て武器類之質物、御年限中は容易ニ流シ不申様、
若流シ候ハヽ一應置主え答候上流價申旨、質屋/\え申
達候處、五ヶ年之間流シ不申程ニ相心得可申段申出置
候、御時節柄を考質屋中申談之趣、尤之儀ニ相聞候、今
度御儉約年延被仰付候付ては、右御年限中之儀は是迄之
通相心得申ニて可有之、此段質屋/\え致通達候様及達
候事
一四二 文政四年六月
一質素節儉之儀付ては追々御達之趣ニ付、町中心得方之儀
も其節々被及御達置、屋作・衣服・飲食其外共ニ、己
/\か分限を考へ、少も奢ヶ間敷費ナル儀無之様被示直
候處、間ニは心得違之族有之、近年別て初雛・初甲其外
之祝事も増長いたし、大勢打寄、數日酒宴を催、内證物
入多末々及難澁候者も有之様子相聞、右之通有之候ては
打寄候者共も徒ラ二飲食ニ隙を費シ、家業をも怠、不埒
之事候、依之左之通
一上ニ掛り候祝事之節、當日吸物外ニ取肴共三種限、飯を
出候ハヽ、一汁二菜ニ不可通、内祝之節は親類縁者迄、
他家之人たり共祝事之事柄ニ携、難去族或は隣家之交は
別段、惣て酒長し不申様相心得、當日まてにて、餘日ニ
祝酒出候儀堅可為無用旨、去々年十二月御家中一統被及
御達、其段は町中えも知せ置候通候、町家之儀勝手宜面
々たり共、御家中之見合より分過之有之候ては難相濟、
末々ニ至候ては猶更之儀ニ候條、其旨堅相守、御家中之
通、上ニ掛り候祝事幷内祝之節たり共、當日限親類縁
者・向三軒両隣・五人組幷祝事之事柄ニ携候者計打寄、
酒長シ不申様相心得、當日之外餘日祝酒取はやし候儀、
堅停止被仰付候、音信・贈答・餞別・土産等も御家中ニ
准、親類縁者忌懸り、又は忌は懸り不申共忌懸動揺之間
柄、輕微之品を以志を表候儀、且親キ輩手製之輕キ品等
取遣は勝手次第、御役方え贈物等堅仕申間敷候、尤師
家・醫師え之謝禮ハ別段ニ候
一旅行之節、追酒もりと申、大勢酒肴等携見送り、歸着之
上、右之者共為祝呼候儀停止之旨、前々及達置候、彌以
右躰之儀堅仕間敷候
一家移・借家移等之節、為祝大勢打寄候儀停止之旨、前々
達之通相心得可申候、尤為見知呼候ハヽ、向三軒両隣・
五人組ニ限、勿論一日限ニて酒長シ不申様相心得可申候
一葬式之節、大勢帳場ニ罷出、酒なと取はやし候儀有之由、
不都合之事候、加勢之人數繁多ニ不及様申談、帳場ニて
酒一切可為停止候
一若者組と唱、組合を立候儀停止被仰付、町並ニ係候儀は、
家主/\取計、吉凶又は非常之患難等有之節も、親類・五
人組限申談、右之者共届兼候儀は、丁頭・組頭等筋々え
可申達、惣て子弟之輩は都て父兄又は年長之者差圖ニ任
せ可申宜ニ付、諸事父兄・丁役人等を差置取計候儀、堅
仕間敷段、文化十年十二月一統及達置候處、今以若者組
不相止處も有之、祝事之節も若者共主ニ成、間ニは向方
迷惑ニ成候事を企、平日も頻々酒宴を催、果は口論ヶ間
敷儀も有之由不届之儀ニ候、向後若者組を止不申、不宜
事を企、酒食を貪、渡世を怠候もの於有之は、其分ニて
は被差通間敷候條、彌以右躰之儀無之様、屹ㇳ相心得、
銘々産業ニ力を入、父兄之心をも安し候様相心得可申候、
右之通屹ㇳ相守可申候、町役勤之面々、自己之謹慎は勿
論、平日支配内之宜深ク心を付、不心得之者えは懇ニ教
諭を加、別て生立候もの風儀宜、専生産ニ心懸候様ニ相
倡價申候、自然町役之教示をも不相用ものは不閣相達候
ハヽ、屹ㇳ被仰付筋可有之候、町方御横目又は廻役も、
晝夜市中打廻候事ニ付、若御達ニ違、客來等幾日もいた
し候もの有之歟、其餘不都合之儀有之候ヘハ、早速相達
申筈候條、右之筋より立ニ成候て、町役之吟味等不相届
ニおゐてハ、町役人迄も越度之可被及御沙汰候條、平日
無油断心懸、丁頭・組頭えも精々心を用候様、町中一統
相達候様、惣月行司え書付相渡、四ヶ所町えも寫差遣候事
一四三 文政五年三月
一雑藝者共見せ物興行之節迄、御制度外之衣服不苦儀ニ付、
角力芝居之部ニ有之候事