津々堂のたわごと日録

爺様のたわごとは果たして世の中で通用するのか?

■明治天皇御真影

2023-07-22 08:02:34 | 書籍・読書

 現在松本健一著の「明治天皇と言う人」を読んでいるが、明治という時代を理解するのには恰好の著作である。

                  

本の表紙には顎髭が白くなった軍服姿の天皇の横顔の写真が使われているが、私が知る明治天皇のお顔とはいささか違うように思える。ふと他人ではないかとさえ思った。
しかし、別の処で見たことがあるとおもい本棚をきょろきょろしているうちに、森田誠吾氏著「明治人ものがたり」が目についた。
この本は三本建ての内容で、「睦仁天皇の恋」、森銑三を取り上げた「学歴のない学歴」、森鴎外の娘と幸田露伴の娘を取り上げた「マリとあや」である。
それぞれ大変興味深く読んだし、「本の終活」の埒外に在る。
この「睦仁天皇の恋」のなかに、上記写真とよく似た写真が掲載されていた。よく似たと記したのはその写真には「睦仁」と明治天皇のサインが施されている。
上の写真の様に前を見るという感じではなく、ややうつむき加減で猫背状態である。
しかし、同じ時期同じ場所で撮影されたものだという事は間違いない。
森田氏の文章を読むと、「昭和も戦後のことである。美術史家の丹尾安典は、ある日の古書市で、色あせた一枚の肖像写真に目をひかれた。」とある。
台紙には「国民新聞社謹製」とあり、明治天皇崩御の前年の大演習の際のスナップだという。
安尾はいささかお疲れ気味の御真影に「天皇も人間である」ことを強く感じ「お肩でもお揉みしましょうかという気に成った」と紹介している。
最期の記事に出て来る「マリとあや」のマリ(森鴎外娘・茉莉)は祖母に手を引かれてこの観兵式(大演習とはしてない)を見に行き、なるべく近くにと思い歩き回った後に、親切な兵隊さんが一番前列に導いてくれた上「そこに居られるのが陛下です」と教えてくれたそうだが、一間位離れたところに「猫背の軍人がいた。それが明治天皇だった」としている。

神格化された「天皇」もこうした観察をとおしてまさに「人間」であることを知るのだが、これはまさに明治新政権の大きな罪であると思う。
ついでながら、森田誠吾氏のこの著は是非お読みいただきたいと、推薦申上げる。

コメント
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