清成八十郎の「聞くまゝ乃記」に「雁木」にかんする記述がある。重賢公の参勤の途中の話として次のようにある
遥か向こうの山にお宮があるのにお気づきになり、「あれはどのような御宮であるか」とお尋ねになったので「あの高い雁木のある御宮でございますか」と申上げたところ、「このように石で付けた段は石段という、木で付けたのを雁木というのだ」と仰せられたという。
本妙寺にある「胸突き(急な)雁木」は石の階段だし、川尻の船着き場に在る石の階段も雁木と言う。
これをお読みになる方も、少々違和感を感じられるであろう。これには「元々は」と言う言葉をつけるべきだと思うが如何だろうか。
重賢公の話は矛盾することになるが、「板雁木」という建築用語が有りどうもこの辺りを指して居られるのだろう。
寝殿造りの「階(きざはし)」と呼ばれるような形式の古いものをいう。
これをさらにさかのぼると高床式の倉庫に丸太の一木を刻んだ原始的な階段を「雁木」(左下図)と呼んでいる。
建築様式に「鴈行(がんこう)型建築」(右下図=二条城)があるが 、これは鴈が飛んでいく形から来ている。
高床式建築の「鴈木」も、この飛行する「鴈」の形から来ていると考えるのが妥当か?
しかし、雪の多い地方に「雪除けの歩道」を「がんぎ」と呼び「雁木」としているようだが、これはまた違う言葉の由来があるのだろう。
日本の言葉はその由来を遡ると誠に含蓄が有り、奥が深い。(参考:建築大辞典)