マツダの作る5ドア車は、そこはかとなくスポーティーで、カッコいいクルマが多かった。
あの「ランティス・クーペ」の原型というか、祖先といえるクルマが、’89年に登場したこの「ファミリア・アスティナ」だったであろう。
全長4260mm。全幅1675mm。そして全高は1335mmでランティス・クーペよりもさらに20mmも低い。
まさに「5ドア・クーペ」コンセプトである。
そして、リトラクタブルヘッドライト!スーパーカー世代の私は、この辺の演出にコロッとダマされてしまう。
ウエストラインから連続して、Cピラーを取り囲むようなリアスポイラーのラインが流麗だ。
そしてこのつるんとしたヒップライン。ああ、もうタマらん。
黒基調のインパネはスポーティだが、「ファミリア系列」なだけに、やや凡庸ではある。
そして、今やほとんど見かけなくなったレバー式の空調コントロールパネル。
私が前乗っていたエスクードもこのタイプだったが、実は手探り操作性は、クラシックなこのタイプが一番だ。
3連ダイヤル式がもっとも操作しやすいという説もあるが、運転しながらの操作では、回したりひねったりという動作よりも、単純に横にずらすだけの動作のほうがやりやすいというのが、私の偽らざる感想である。
かつて、「3ドア・4ドア・シャトル」と、まったく異なる3種類のボディを造り分けていた「ワンダー・シビック」も素晴らしかったが、この「新ファミリア系列」の3種類のボディもそれに近いものがある。
当時はバブルの絶頂期だったから、こんなことも出来たのだろう。
コスト重視のこのご時世では、考えられないことだ。
そして「ファミリア」というブランドは、残念ながら数年前消滅してしまった・・・合掌。